明帝9  墓勢占い    

明帝めいていさま、墓勢占いが得意である。


なのでこの方面の達人である郭璞かくはくが、

人さまの葬式をプロデュースしたと聞き、

お忍びで見に行った。


すると、墓が

龍角りょうかくと呼ばれる方面に建てられていた。

明帝さま、びっくりする。

この方角に墓を建てることは、

一旦の財貨には恵まれるものの、

後に一族皆殺しの目に遭うことを指す。

ずいぶん物騒な占いですナ……。


なので、家の主人に聞いた。


「こ、この墓勢、危なくないですか?」


すると主人、こう答えた。


「郭璞さまが仰ったのです。

 この位置の墓は、龍耳りょうじと言う。

 ここに墓を建てれば、三年以内に

 天子を招くことになるだろう、と」


更にびっくりする明帝さま。

自分の墓勢占いが云々とかも吹っ飛ぶ。


「!? て、天子がこの家から

 出るという事ですか!?」


いやいや、まさかまさか。

主人は更に答えた。


「こうすれば、天子様に

 お越しいただけるだろう、と

 仰ったのですよ」




晉明帝解占塚宅。聞郭璞為人葬。帝微服往看、因問主人:「何以葬龍角? 此法當滅族。」主人曰:「郭云:『此葬龍耳。不出三年當致天子。』」帝問:「為是出天子邪?」答曰:「非出天子、能致天子問耳。」


晉の明帝は塚宅を占うを解す。郭璞の人が為に葬せるを聞く。帝は微服にて往き看て、因りて主人に問うらく「何ぞを以て龍角に葬れるか? 此の法は滅族に當る」と。主人は曰く「郭は云えらく『此れ龍耳に葬る。三年と出でずして天子を致すに當る』と」と。帝は問うらく「是れに天子の出でると為さるるや?」と。答えて曰く「天子の出でるに非ずんば、能く天子の問うを致すのみ」と。


(術解6)




郭璞

本文のとおり、著名な占い師。八王の乱が起こった段階で永嘉えいかの乱を予測し、江南に逃れた。東晋が立ってからも皇帝お抱え占い師クラスの待遇を受ける。第二次王敦おうとんの乱に先立って結果を占い、「この乱は成功しない」と、よりにもよって王敦に示したため怒りを買い、処刑された。


こうして読むと占い師と言うよりは、時流を良く見極められている人、と言う印象にもなりますわね。お抱えレベルなら明帝とも面識あったろうから、明帝が墓勢占いに自信があったのも知ってたろうしね。

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