張華4  無作法な歓迎  

陸機りくき陸雲りくうん兄弟が

洛陽に初めて来たときのこと。

二人は張華ちょうかに質問した。


「どなたのところへ

 挨拶回りするのが良いでしょうか」


「そうだね、まずは劉宝りゅうほうかな」


なるほど、では行こう。


そして向かうと、

劉宝は喪に服している最中。


さてそんな劉宝、酒好きで有名である。

この時も、挨拶が一通り済むと、

いきなり不躾に聞いてきた。


「呉の人か。あちらには

 細長い瓢箪があるそうだな。

 そんな瓢箪、どう考えても

 酒を入れておくのに便利この上ないよな。

 なぁなぁ、もちろん

 その種は持って来たんだよな?」


は? 何だこいつ。


いきなりこっちのこと把握しとけ、

しかもその上でこっちの意に沿う

手土産持って来い、それが礼儀だろ、

とでも言いたいのか。


しかもお前喪中だろ。

なんで酒のことばっかなんだよアホか。


ツッコミどころが多すぎる。

陸機と陸雲、共にげんなりし、

こんなんだったら、こいつんとこに

来るんじゃなかった、と後悔した。




陸士衡初入洛,咨張公所宜詣;劉道真是其一。陸既往,劉尚在哀制中。性嗜酒,禮畢,初無他言,唯問:「東吳有長柄壺盧,卿得種來不?」陸兄弟殊失望,乃悔往。


陸士衡の初に洛に入るに、張公に宜しく詣でるべき所を咨る。劉道真を是の其の一とさる。陸は既にして往かば、劉は尚お哀制の中に在り。性にて酒を嗜まば、禮の畢わるに、初にも他言無く、唯だ問うらく:「東吳に長柄の壺盧の有れるに、卿は種を得て來たらんや不や?」と。陸兄弟は殊に失望し、乃ち往かるを悔う。


(簡傲5)




劉宝

なんだこれ、と思って別のエピソード探しましたよ。それが次のエピソードです。何となく納得。まーへんてこな才人という枠ですね。そりゃ陸機陸雲とはウマ合わなさそうだし、つーかそしたら張華さんなんでこんなの最初に紹介したんですか。張華さんなりのお茶目なのかしらね。

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