張華3  呉の二龍と鳳凰 

張華ちょうかさん、呉から来た人物、

褚陶ちょとうを見てびっくりした。

思わず陸機りくきに話しかける。


「長江から君、君の弟御という、

 二体の龍が現れたのを見て驚いたのに、

 今度は鳳凰が朝日に向かい鳴いていた。

 東南の宝は既に

 掘り起こされたと思っていたが、

 なお褚どののような方がおるとは!」


すこり、と陸機が微笑む。


「鳴かず、躍り出ねば、

 いかに張華様であっても、

 長江の向こうの宝は見えますまい」




張華見褚陶,語陸平原曰:「君兄弟龍躍雲津,顧彥先鳳鳴朝陽。謂東南之寶已盡,不意復見褚生。」陸曰:「公未覩不鳴不躍者耳!」


張華は褚陶に見ゆるに、陸平原に語りて曰く:「君が兄弟の龍の雲津より躍せるあるに、顧らば彥先の鳳の朝陽に鳴けるあり。東南の寶の已に盡けるを謂えど、復た褚生を見るとは意わざりき」と。陸は曰く:「公は未だ鳴かず躍らぬ者を覩ぬのみ!」と。


(賞譽19)




褚陶

呉の高名な文学者。この後彼の一族が東晋で顕族として栄え……って言おうと思ったら、栄えたのは彼の属する呉郡系じゃなくて河南郡系だった。うぬぬ。しかしこの陸機の呉人としての矜持の示し方は良いですな。


そういやこの陸機の発言、微妙に「有鳥在於阜,三年不蜚不鳴,是何鳥也?」、楚荘王の鳴かず飛ばずの故事も意識されてますわね。

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