張華2  とても つらい1

文学者の左思さしが『三都賦さんとふ』を書いた。


だが誰に見せても不評。

左思、がっくりとくる。


そこに現れるは埋もれた才能発見マン、

我らが張華ちょうかさん。

三都賦を読んで、言う。


「この作品は、

 班固はんこ両都賦りょうとふ張衡ちょうこう両京賦りょうきょうふにも

 十分匹敵するよ。

 だが悲しいかな、きみの名声は

 未だ世に重んぜられていない。

 高名な人間の紹介を受けるとよい」


えっ張華さんやってあげてくださいよ。


ともあれ左思、文人としての名声高い

皇甫謐こうほいつにこのことを相談する。

三都賦を読んだ皇甫謐、読んでビビる。

すぐに筆を執り、


「三都賦すげえぞ!」


そう、宣伝した。


すると

以前三都賦をバカにしていた者たちは、

全員すぐさま襟を正し、絶賛し始めた。




左太沖作三都賦初成,時人互譏訾,思意不愜。後示張公。張曰:「此二京可三,然君文未重於世,宜以經高名之士。」思乃詢求於皇甫謐。謐見之嗟嘆,遂為作敘。於是先相非貳者,莫不斂袵讚述焉。


左太沖の作せる三都賦の初めて成るに、時の人は互いに譏訾せる有りて、思が意は愜せず。後に張公に示す。張は曰く:「此れ二京を三とすべし、然し君が文は未だ世に重んぜられず、宜しく以て高名の士を經るべし」と。思は乃ち皇甫謐に詢求す。謐は之を見て嗟嘆し、遂には敘を作せるを為す。是に於いて先に相い貳せざる者に、斂袵して讚述せざる莫し。


(文學68)




左思

高名な文人。なのだが、この認められ方はまんま現代でも見受けられててつらいですね。まぁ人間なんてそんなもんだってのはわかってますが。いいだけじゃダメ、時宜に乗らないと。そしてこの当時、時宜とは人の形をしていた。


班固・張衡

どっちも漢代のバケモノ学者にして文学者である。班固は漢書の編纂者だし、張衡は天文や暦に関して莫大な功績を残している。そう言う「埒外の奴ら」に比されるというのは、並大抵のことではない。


皇甫謐

世説新語の注者、劉孝標りゅうこうひょうとおなじ「書淫」のあだ名貰ってて笑う。いまとなっては左思の方が知名度上なんですよねー。ちかたないね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る