羊祜4  羊祜のオッカケ 

羊祜ようこが北東方面の赴任地から、

洛陽らくように向けて帰還する時の話である。


帰還ルートの途上にある地、

野王やおうの長官だった郭奕かくえき

羊祜が野王の地に到着したと聞くと、

早速人を遣って迎えさせるわ、

むしろ自ら出向くわ。


で、ひとたび羊祜を見ると、

「おぉ、この儂ほどではないにせよ、

 なかなかやりよる者のようだな!」

と感心した。


それから度々羊祜の元に出向く。

すると今度はこう言った。

「いやいや、これはしたり!

 あの者、儂よりも

 はるかに優れておるわ!」


そして羊祜が野王を抜ける。

けれども郭奕、そこから数日一緒にいた。

道程にして数百里。そんな有様なので、

まぁ政府としては公務放棄として

免職させざるを得ない。


それでもなお、郭奕は言うのだ。

「いやはや、あれに優れるのは

 顔回がんかいくらいしかおるまいて!」




羊公還洛,郭奕為野王令。羊至界,遣人要之。郭便自往。既見,嘆曰:「羊叔子何必減郭太業!」復往羊許,小悉還,又嘆曰:「羊叔子去人遠矣!」羊既去,郭送之彌日,一舉數百里,遂以出境免官。復嘆曰:「羊叔子何必減顏子!」


羊公の洛に還ぜるに,郭奕は野王の令たり。羊の界に至るに、人を遣わせ之を要えしむ。郭は便ち自ら往く。既に見ゆれば、嘆じて曰く:「羊叔子は何ぞ必ずや郭太業に減ぜん!」と。復た羊が許に往き、小悉にして還り、又た嘆じて曰く:「羊叔子は人より去ること遠からん!」と。羊の既に去らば、郭の之を送るに日を彌り、一に數百里を舉し、遂には境を出るを以て官を免ざる。復た嘆じて曰く:「羊叔子は何ぞ必ずや顏子に減ぜん!」と。


(賞譽9)




郭奕

魏の名将、郭淮かくわいの甥。ちなみに同姓同名が魏末晋初の辺りにもいて面倒くさい。まぁそれぐらいしか事跡はないが、それを補ってなお有り余るこの羊祜ラヴっぷりと来たら。羊祜もさぞ鬱陶しかったろうなぁ。


顔回

孔子こうしの高弟。夭折したため、その喪失を孔子が激烈に嘆いたというエピソードがある。ところで全然関係ないんですけど、小学生時代に孔子の伝記漫画読んだ時、このひとと孔子の関係、幼心に「アッーか? アッーなのか?」って疑問に思ったりもしましたよね。まぁ本当にどうでもいいんですけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る