羊祜3  西晋のオチ担当 

王衍おうえんの父は、名を王乂おうがいと言う。

平北将軍へいほくしょうぐんと言う役職に就いていたが、

失策があり、免職させられかけていた。


この点についての釈明を行おうとしたが、

赴任先から使者を遣わせても、

うまく話が進展しない。


この辺りの事情を知る王衍が、

ちょうど都に出ていた。

そこで王乂、王衍に依頼する。

この件に関する任免権を持っていた

羊祜ようこ山濤さんとうに、使者の代わりに

事情を説明してきてほしい、と。


車に乗り、王衍、二人の元に出向く。

この時王衍はまだ成人前であったが、

その麗しい見目にふさわしい

溌剌とした物言い、筋道だった論旨で、

山濤を大いに驚かせるのだった。


釈明の為の接見が終わり、

王衍が二人の前を去る。

この時山濤は、

ずっとその後姿を見守っていた。

そして、ため息をつく。


「生まれてくる子が、

 あんなだったらなぁ」


すると、羊祜が言う。


「どうだろうな。あの手の子は、

 間違いなく天下を乱すぞ」




王夷甫父乂為平北將軍,有公事,使行人論不得。時夷甫在京師,命駕見僕射羊祜、尚書山濤。夷甫時總角,姿才秀異,敘致既快,事加有理,濤甚奇之。既退,看之不輟,乃嘆曰:「生兒不當如王夷甫邪?」羊祜曰:「亂天下者,必此子也!」


王夷甫が父の乂の平北將軍為るに、公事有らば、行きて人に論ぜしむるも得ざる。時に夷甫は京師に在り、駕にて僕射の羊祜と、尚書の山濤に見ゆるを命ぜらる。夷甫は時に總角にして、姿才は秀異、敘致は既にして快、事を加うるに理有り、濤は甚だ之を奇とす。既にして退れど、之を看るを輟めず、乃ち嘆じて曰く:「生兒は當に王夷甫が如きならんか?」と。羊祜は曰く:「天下を亂す者,必ずや此の子なり!」と。


(識鑒5)




王乂

どんな失政があったか、とかに詳細はない。ただ、このひとが平北将軍であった270年ごろには禿髪樹機能とくはつじゅきのうの乱が勃発している。この辺の絡みだろうか。


それにしても王衍と言えば司馬越しばえつと一緒にしんから逃げようとして石勒せきろくに殺された人ですよ。この世説新語でも、桓温さまに「こいつのせいで中原はクソどもの手に落ちた」とか言われてたし、更に今回の羊祜さんとか、本当に文武両道の人から徹底的に腐される役回りなんだなー。ごめん正直面白いわ。

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