武帝21 夫婦仲仲介人  

の皇族、孫秀そんしゅうしんに投降してきた。

武帝ぶていさま、孫秀をものっそく厚遇する。


どのくらいって?

ご自身の妻、かい氏の妹を

孫秀に娶らせるくらい。

そんなん、家門が繁栄するに決まってる。


が、あるとき蒯氏妹が妾を妬んだ。

そこで口論になった際、うっかり

むじなの子が!」とか罵る。


ちなみに狢、都の人々が

旧呉の人間を見下すときに使う蔑称だ。

なので孫秀、大激怒。

以降蒯氏妹に近寄ろうともしない。


蒯氏妹、やっちまったと大後悔。

どうにかとりなして下さいませんか、

そう、武帝さまに頼み込む。


さて、この頃大赦が下された。

晋の天下統一を祝賀してのものだ。

洛陽らくようの祝賀パーティーには、

多くの臣下が集まる。

もちろん、そこには孫秀もいた。


そこで武帝さま、孫秀だけを引き留める。


そして、こそっと言うのだ。


「なぁ孫秀、天下が治まり、

 多くの罪人たちも許されたのだ。

 ならば、きみの妻の罪もまた、

 許されても良いのではないだろうか?」


元々、孫秀自身も蒯氏妹のことが

大好きでしょうがなかったんですよね。

けど、矛の収めどころがなかった。


それを、武帝さまに確保していただけた。


なので孫秀、帽子を脱ぎ、蒯氏妹に謝る。

こうして夫婦仲は元に戻るのだった。




孫秀降晉、晉武帝厚存寵之、妻以姨妹蒯氏、室家甚篤。妻嘗妒、乃罵秀為「貉子」。秀大不平、遂不復入。蒯氏大自悔責、請救於帝。時大赦、群臣咸見。既出、帝獨留秀、從容謂曰:「天下曠蕩、蒯夫人可得從其例不?」秀免冠而謝、遂為夫婦如初。


孫秀の晉に降ぜるに、晉の武帝は厚く之を存寵し、姨妹の蒯氏を以て妻せば、室家甚だ篤し。妻は嘗て妒み、乃ち秀を罵るに「貉子」と為す。秀は大いに平らかならず、遂には復た入らず。蒯氏は大いに自ら悔いて責め、帝に救うるを請う。時に大赦あり、群臣に咸な見ゆ。既にして出らば、帝は獨り秀を留め、從容と謂いて曰く:「天下は曠く蕩ぜたり、蒯夫人を其の例に從わさしめ得るべきや不や?」と。秀は冠を免じて謝し、遂には夫婦は初の如くと為る。


(惑溺4)




孫秀

武帝と懇ろになった割に全然事跡が残ってない。まぁしょうがない、近い時期に八王の乱で司馬倫しばりんの配下としてブイブイ言わせまくった孫秀がいたもんだから、どうしてもそっちが悪目立ちしちゃうんだよな。つーかこれ、武帝さまがわざわざ夫婦ゲンカに口ツッコむことを誹ってる感じかねえ。「蒯氏に惑溺しとるから、そんな詰まらん介入して憚らんのだ」的な。

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