司馬昭7 王の清涼剤   

司馬昭しばしょうさまの魏国内での権勢、

どんどんでかくなる。


宴席とかでも皆して敬う。

それこそこの席に皇帝がおわしますぞ、

くらいの勢いだ。


ただ阮籍げんせきだけは、そんな席の中

足を投げ出して座るわ、

歌なんか歌うわ、

ガンガン酒は飲みまくるわ。


ひとり、フリーダムを謳歌してた。



けど司馬昭、

そんな阮籍が大のお気に入り。

こんなコメントを残してる。


「阮籍のあの慎まやかなことと来たら!

 発する言葉は全て奥深く、

 それでいて、いまだかつて、かれが

 あらゆる人物、物事に対する評価を

 下したのを聞いたことがない」




晉文王功德盛大、坐席嚴敬、擬於王者。唯阮籍在坐、箕踞嘯歌、酣放自若。

晉の文王は功德盛大、坐が席にては嚴しく敬され、王者に擬さる。唯だ阮籍のみは坐に在りて、箕踞して歌を嘯き、酣放して自若たり。

(簡傲1)


晉文王稱阮嗣宗至慎、每與之言、言皆玄遠、未嘗臧否人物。

晉の文王は稱うるらく「阮嗣宗の慎しまやかの至れること、之と言せる每、言は皆な玄遠にして、未だ嘗て人物を臧否せず」と。

(德行15)




阮籍

魏晋交代期に現れた変態集団、竹林七賢のトップネーム。この通りガンガン大きくなっていく司馬昭の権勢なんざものともせず自由に振る舞っているのだが、その内心では「おまえなんぞに従いたくない」という反骨の心があった。とは言えこうした振る舞いが、司馬昭にとっての一種の清涼剤に働いたんじゃないかしら、とも思えてならない。権勢がデカくなるってことは、儀礼的締め付けもきつくなるだろうし。

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