鍾会2  四本論     

鍾会しょうかいくん、四本論しほんろんを論じた。


これは才能と性格との相関性を語るものだ。


 才能と性格は相関するのか?

 あるいは、まるで相関性がないのか?


 才能と性格は併せて評価されるべきか?

 あるいは、完全に切り分けるべきか?


ちなみに鍾会くんの持論は

「併せて評価する」派だった。


さて、一通り書き終えたので、

これはもう時代の大家、竹林七賢ちくりんしちけん

嵆康けいこう様に見て頂くしかない!

と張り切り、論を懐に収め、会見に臨む。


けど、嵆康のところまで来たはいいが、

途端に酷評が怖くなった。

結局嵆康に四本論は提出できず、退席。


外に出ると、嵆康の家の中に

四本論を投げ込む!


そして、ダッシュで逃げた。

もうものすごい勢いで逃げた。

怖くて後ろは振り向けなかった。




鍾會撰四本論始畢,甚欲使嵇公一見。置懷中,既定,畏其難,懷不敢出,於戶外遙擲,便回急走。


鍾會の四本論を撰じ、始めて畢るに、嵇公をして一に見せしめんと甚だ欲す。懷中に置き、既に定むも、其の難ぜらるを畏れ、懷より敢えて出さず、戶外より遙かに擲げ、便ち回りて急ぎ走る。


(文學5)




嵆康

竹林七賢の中でもリーダー格。まぁリーダーなんて別にいない集団ですが。そもそもこの集団であったことも怪しいですし。最終的には鍾会の絡んだ裁判によって処刑されている。その結末を知っていると、このエピソードには「その後嵆康は突然投げ込まれたこの論を(誰の手によるものか気付いておきながら、敢えて知らないふりをして)ズタボロに貶しました」ってエピローグを付けたくなってきます。鍾会さんのこの、才を恃みつつ、自分よりも才の高い人間に対しては怯えるふるまい。うーん、笑えない。

ちなみに鍾会と嵆康のエピソードはこの後にもう一つ来ますが、何と言うか、これとは真逆です。どっちを信じたもんかねぇ。どっちも信じる必要ないんだけどさ。

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