第53話 青空の下で甘納豆を噛みしめる女。

「ちびまる子ちゃん」初期の傑作に、まる子が遠足ではなく遠足の準備を楽しんでる回があります。

 今でも時々見かける(数年前にアニメの「妖怪ウォッチ」でもやってるの見たな)、バランスよくバリエーション豊かなおやつを予算内でどうやりくりして買うかを真剣に考えるネタの元祖はまる子じゃないかと思うのですがいかがなものでしょう?


 まる子の配分では、予算二百円のうち、百円はみんなと交換できる好感度の高い大袋のお菓子、五十円で誰がなんといっても自分が大好きなお菓子、残りの五十円でアメやラムネ、ガムなんかのバラ菓子を買うというものでした。


 突出しすぎることを好まず、輪を大事にし協調性を第一に考えるといえば聞こえはいいけど悪い意味で個性が強くキャラの立ったやつにはなりたくない、そっち側には行きたくはないとその点に腐心する子供であるまる子というキャラクターを端的に表しているようなラインナップと申しましょう(なんだか皮肉めいたものを言いましたが、「まる子」の面白さはこういう子供ながらに抱えている人間心理のゲスい部分を絶妙なバランスで取り上げて自分のこととして笑う所であり、故にぐうたらでバカなことをやるけど根は優しくて無邪気というキャラ付けでやられる最近のアニメのまる子は違和感しかないということを再三再四主張したいという初期〜中期のまる子原理主義派でありますよ、私は)。


 この回で、悪い例として取り上げられるのが「好物だからという理由のみで予算の二百円できっちり甘納豆を買ってしまう女の子」です。

「こういう奴は、青空の下一日中甘納豆ばかり噛みしめることになる」とナレーションで解説されます。



 昔はこの回を漫画で読むたび、「こういうことをやっていては損をするんだな。こんな子にならないように気をつけなくっちゃ」と自分に言い聞かせておりましたが、大人になればなるほど「どうやら自分は残念ながら青空の下で甘納豆ばかり一日中噛みしめる側の女だった……」と痛感させられる場面が増えてゆくのでした。


 人に対して何も遠慮しなくていい趣味方面では特にそうですね。

 まる子なら予算二百円のうち五十円分だけ出す我というものを、二百円分出さなきゃ気が済まない。なんでそこで遠慮して無難な袋菓子買わないといけないのかが分からない。

 つうか別にいいじゃないか、青空の下で甘納豆ばっか食ってても。誰に迷惑かけるでなし本人が満足してるならそれで……。まあ変人扱いされるのは仕方ないけども。そこは甘受しないといけないけども。



 そんなことを思い出していたのは、連載作の続きをどうにもこうにも自分の書きたいことを書きたいようにやっていたら、1話につき二万字未満という完全にどうかしてる文字数に膨れ上がってしまった為でした。

 ──流石に、いくらなんでもちょっとバカなんじゃないかと思う──


 そんな更新分がこちら。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885611315/episodes/1177354054886976880


 言い訳いたしますと、どうにもこうにも「もう知らん! 私は私の書きたいことを書きたいようにやる!」という姿勢で書かねばやってられない精神状態だったためです。つまり自分のメンタル保護最優先で創作しました。正に青空の下で甘納豆ばっか食うような行為です。

 これでは読まれなくても当たり前ですね。仕方ねえや。


 ただまあやはり、自分のやりたいことが遠慮なくやり遂げられたような時の全力でバットを振ったような快感は得がたいものです。

 きっとプロの人から見たらフォームはガタガタで、ああしたらいいのにこうしたらもっと飛距離伸びるのに……と見苦しい所だらけの汚いフォームであっても、やはり自分のガタガタのフォームで振りたいという時がどうしてもあるのですよ……。そんな振り方じゃあボールに当たらないし当たってもフライで一発アウトだと分かっていても。


 こういう「自分がいかに気持ちいいか」を最優先する姿勢は「他人のアドバイスを素直に聞けない」ということの裏返しでもありますので、書き手としてではなく人としての伸び代のなさを自ら証明しているようでもあり悲しくならないでもないのですが。



 ともあれ流石に一話二万字はバカじゃないかと自分でも思いますし(言い訳しますと、本作特殊な構成でやってますので数話に分割するということが難しいのですよ)、そもそも我が全開の小説しか書いてないんだから今後はもう少し読んでくださることのことを真摯に考えようと思いました。




 ……それにしても国民的ヒット作を生み出した漫画家は、我を出す部分を全体の四分の一にとどめていたというのは何かしら示唆に富んでいるようにも思えますね……。


 2018年9月22日


追記:

 前回のノートで披露しておりましたグズグズなメンタルの回復行動中に書いたものですね。批判されて悲しかった、というようなことが素直に言えない。だから口数が多い。弱い犬がよく吠えるのと同じ理屈です。


 基本的に私の書くものが饒舌なのは、批判や傷つけられるのを過剰に恐れるおあまりに防御壁を築こうとする性格上のクセがあるんじゃないかと冷静になればこそそう考えられる余地もでてくるわけですが。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る