第7話 3ページ目

「通報、しないの?」

僕が恐る恐る貴志を見ると、

「捕まりたくないから、黙ってるんでしょ?

じゃなきゃ、とっくに自首してるよね」


僕は静かに頷いた。


「ちなみに多重人格って、

基本的に幼少期につらい出来事があった人がなるって言うけど、うちは平凡だと思うけどな」

貴志は天井を見上げた。


「そうだね」

僕はその独り言のような言葉に返事をしながら、床を見下ろした。


僕は小さい頃からずっと、

貴志にコンプレックスを感じて生きてきたことを思い出していた。

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