異世界丸ごとクラス転移(チート付き)で魔王討伐なんて楽勝・・・・・・だと思ったか?

MrR

楽勝だと思った? 難易度インフェルノでした!(泣)

 夕陽高校一年B組は異世界ファレンシアにある王国セントグロリアにクラス丸ごと転移した。


 僕、日高 瞬もその一人だ。


 理由は魔王討伐。


 王女様曰く「こんな大人数が召喚されるのは想定外」だとか。


 理由は魔王を討伐するためだとか。


 まあ、嘘か本当かはどうか分からないけど、小説サイトだと大体仲間割れが起きたりして魔王討伐どころじゃなくなるんだよね。


 だけどこの手の物語の魔王はいわゆるテンプレ魔王――登場場面も一切無く倒される場合が殆どだったりするからね。


 それに自分達かなりチートスキル持ちらしいから、上手く仲を取り持って一緒に戦えば楽勝なんじゃないかな?



 ・・・・・・などと思ってました。



 ・・・・・・すんません、今とても修羅場です。



 ・・・・・・詳細省きますが全員覚醒の儀を終えて、自分含めてクラスメイトと教職員全員が能力に目覚めました。


 中にはチート能力を自慢げに披露する人もいました。


 自分も「勝ったなこれは」と思いました。



 そして敵が襲来。



 地獄が始まりました。



 RPGで言うなら後半に出て来そうな鎧着た赤肌の角生やした上級悪魔「レッダー」と青い一本角「ブルート」のガタイが大きい上級悪魔二人組が翼を羽ばたかせて空中から襲来。


 更に戦闘員感覚で如何にも強そうな『ハイナイト』と呼ばれるゴツイ鎧の上級兵士型モンスターをぶつけるだけでなく、巨大怪獣――たぶんドラゴンらしき生命体を数頭を解き放っている。 


 ちなみに騎士団長のガモフさんは敵の赤い上級悪魔さん「レッダー」さんに殺されました。

 白銀の鎧を身に纏い、赤いマントを羽織った、ゲームで言うならパラディン(聖騎士)の職業についていそうな見た目ライオンぽい野性味と渋み、僅かな期間でしたが心遣いが出来るナイスガイです。


 とても頼りになる人なんだろうなと思ったら殺されました。


 瞬殺です。


 最後の断末魔は「異世界の勇者達よ!! 逃げてくれえええええええええええええええ!!」


 でした。


 どんな殺され方かと言うと、両者の距離が離れていたにも関わらず一瞬のウチにガモフの眼前に現れて剣を持った右腕を拳で吹き飛ばし、左腕の手刀で腹部を貫かれました。そして断末魔を挙げた後、レッダーは「それが貴様の遺言かな?」と言って腹部から腕を引き抜き、空中に放り投げて光弾を放ちガモフさんだったパーツがパラパラと空中から堕ちてきました。


 鎧や剣、マントの切れ端。

 腕、足、臓物、骨、半分焼け焦げた頭とか。


 クラスの反応は様々です。

 白目向いたり、絶句したり、気絶したり、嘔吐したり、悲鳴を挙げたりです。


 でもこれすら、ほんの地獄の始まりに過ぎませんでした。


 次々とその場に居合わせた兵士達も虐殺されていきます。

 と言うかあまりにも戦闘力に差がありすぎて一秒経つ毎に数人以上殺されています。


「おやハイナイトの中にどうしてジェネラルナイトが混じってるんだ?」


「運がいいな。そいつはハイナイトを更に上回る戦闘力を持っているぞ」


 二人の悪魔が笑いながらそう教えてくれました。


 うん♪


 難易度が ぶ っ 壊 れ て や が る!! 


 なにその●イバイマンの中にテ●ネンマンとかジンコ●マンとかヤバイ上級種が混じってましたみたいな口調は!?


 生徒達は自分含めてただ王女様の指示に従い、一目散に王城に避難します。

 後ろから悲鳴が聞こえますが今は自分の身の安全とチート能力の確認です。


(ヤバイヤバイ!! マジでヤバイ!! 自分の能力は――)


 それは聖剣と聖剣の加護。


 全ての能力値強化。

 それには魔法に対する抵抗力も含まれている。

 また自動で回復するスキルだそうだ。


 凄い定番のチートだね。


 だが今はとても有り難いスキルだ。


「姫様!! 城内に敵が侵入、持ち堪えそうにありません!!」


 メイドのその一言で城内に避難したクラスメイトは皆一様に驚愕した。


(もうどうにでもなりやがれ!!)


 とにかく戦うしかない。

 戦わなければ生き残れない。

 戦わないと言う事は死ぬと言う事だ。

 それを自分自身に言い聞かせる。


 扉ではなく、壁をぶち壊してハイナイトが雪崩れ込んでくる。

 ハイナイトよりも豪華な装飾が施された奴がジェネラルナイトだろう。


「ホーリーレイン!!」


 クラスメイトの誰かが魔法を唱えた。

 もうこの際誰だっていい。

 ハイナイト達が突如として頭上から降り注いだ光の閃光に飲み込まれる。


 誰もが「やったか!?」


 そう思ったが――


「嘘・・・・・・まだ生きてるの!?」


 まだハイナイトは動く。

 だが動きは目に見えて鈍くなっている。

 手短な一体に対して、やけくそ気味に剣を振るった。


 袈裟に。


 胴体に一閃。


 堅そうに鎧を切り裂けた。


 ダメージは通った。


 奥に何か不思議な――紫色の玉が見えた。


「それがハイナイト達の核です!! それを破壊すれば動きは止まります!!」


「ありがとう王女様!!」


 やけくそ気味に俺はもう一回剣を横凪に振るった。

 これで一体。

 ガシャンと崩れ落ちた。

 だが敵はまだまだいる。 


「うおおおおおおおおおおおおおお!!」


 もうこうなったらやれるだけやるしかないと思った。


「いでよ召喚獣!! サラマンダー!!」


「もう悩んでなんてられない! うおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 自分に続くように皆やけくそ気味にチートスキルを披露していく。

 ハイナイトは徐々にだが数は減らしていく。

 だがジェネラルナイトは強い上に堅い。

 更にドラゴンまで突っ込んできて城内は乱戦の様な様相を呈していた。


「姫様早く!!」


「なりません!! 異世界の人々が戦ているのに逃げ出すなど!! 大体この状況で何処に逃げろと言うのですか!? もう我々には後が無いんですよ!?」


「そ、それは――」


「王族の義務を、命を賭してでも彼達の戦いを見届ける。それが私に与えられた最後の義務です!」


 そして王女様も命を賭けて戦う決意表明を露わにして戦いに加わる。

 回復魔法や攻撃魔法を掛けて回った。


「出し惜しみするな!! 出し惜しみしたら死ぬぞ!!」


「クソッタレええええええええええええええええ!! 訳の分からないままこんな所で死んでたまるかぁああああああああああああ!!」


 皆、腹を括ってまた一人、また一人戦い始めている。

 一人スーパーサイ●人になっているが今はとてもありがたい。

 僕もジェネラルナイトと戦う。


(まだボスもドラゴンもいるのに!! こいつはただの上級戦闘員でしか無いんだぞ!? この後戦えるのか!?)


 などと考え事をしていると体を一閃された。

 血飛沫と共に倒れ込み、容赦無く腹部に突き刺されようとした所で誰かの攻撃魔法がジェネラルナイトに直撃する。


「ダメだ!! 普通の魔法じゃビクともしない!!」


「下がれ日高!! 誰か回復魔法を!!」


 あれよあれよと言う間に後方へと運び込まれる。

 そして余り会話した事も無い女子のクラスメイトから治癒魔法を掛けて貰う。

 痛みが一瞬のウチに引いていく。

 それどころか疲れまでも。

 これが回復魔法か? と思った。


「ただのケツの青いヒヨッコだと思ったら、ハイナイトやジェネラルナイトとここまで戦えるとはな!」


「ここから先は俺達も戦いに加わってやろう!」


 ガモフさんを惨殺したレッダーや青い一本角のブルートまで戦いに加わって来た。

 まだ雑兵扱いの騎士モンスターもドラゴンも残っている。

 最悪の状況だ。



 そこから戦いは一進一退を極めた。

 此方もチート交じりのスキルを後先考えずにぶっ放しているにもかかわらず、自分も限界の力を出しているにも関わらず、相手はまだ余裕で、ブルートが「腕が痺れたじゃねえか!!」とか言って笑みを浮かべ、レッダーは「はははは、久し振りに楽しい時間になったな!!」と高笑いしていた。

 幸いにも戦いの巻き添えでハイナイトやドラゴンはくたばってくれたのは嬉しい誤算だった。


「クソ・・・・・・強すぎる!!」


「歯が立たない!!」


 クラスメイト達は皆、死屍累々になりかけながらも立ち向かう姿勢を見せる。

 僕も同じだ。

 仮に逃げたところでガモフさんの様になるのは目に見えている。


「参考までに良い事を教えてやろう! 俺達はまだパワーアップが出来る! それを今から見せてやろう!!」


 皆がその言葉に絶望した。


 俺も言葉が出なかった。


 あまりの恐怖で何も考えられない。


「トドメをさせえええええええええええええええええええええ!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 クラスメイトは全力を出す前に、トドメを刺す作戦に出た。

 光の閃光。

 火の玉。

 雷撃。

 他にも幾つもの攻撃が放たれる。


「もう遅い!!」


 目映い閃光。

 同時にクラスメイト達の全力全開の総攻撃が降り注ぐ。


 そして――


『待たせたな――レッダーとブルートが一つになったこの姿――レッダートと言ったところか・・・・・・』


 無傷だった。

 それどころかレッダーとブルートが一つになる。

 右半身が赤、左半身が青。

 角は三つ、翼は二対になっていた。


『この形態になった俺達は十倍のパワーを誇る。気を抜いたら死ぬ事になるぞ?』


「なっ――」


 もう言葉が出ない。

 十倍のパワー?

 パワーインフレがおかしい、バトル漫画の世界だ。


『はああああああああああああああああああ!!』


 そして禍々しい紫色のオーラーを放出し始める。

 同時に地震が起きた。

 体を奴の圧倒的なプレッシャーの様な物が貫いてくる。

 クラスメイト達も、王女様も皆同じ感覚に陥っているのだろう。


「そっちが十倍ならこっちは二十倍だ!! 覚悟しやがれ!!」


 そう言って男子生徒が赤いオーラを身に纏い、合体した二人組に殴り掛かった。

 殴り掛かった瞬間のスピードが見えなかった。

 空高く吹き飛び、その後を追う。クラスメイトも何人か後に追った。

 バトル漫画でしか見られないような、互いの姿が見えない、衝撃波同士のぶつかり合いしか見えない空中での戦いが始まった。


 その隙に王女様が皆に呼びかけた。


「最終手段を使います――皆、私に魔力を捧げてください!!」


 そう王女は言った。


☆ 



『まさかここまで手こずるとはな・・・・・・よくここまで頑張ったと褒めてやろう』


 クラスメイト達は皆城下町に倒れ伏していた。

 正直死んでいないのが奇跡なぐらいだ。


『貴様達を野放しにすれば脅威になる。ここでトドメを刺して――』


 ふと城から強大な魔力の増大を感じ取った。


『何だこの魔力の増大は!? 人間がこれ程までの魔力を――ありえん!?』


 合体戦士、レッダートは驚愕し、急いで王城に戻る。

 激戦の果てに荒れ果てた城の奥では王女が異世界から呼び出されたクラスメート達に体を支えられながらも強大な魔力を高め続けていた。


『止めろ!? この城どころか城下町もろとも吹き飛ばす気か!?』


「どうせ私達が倒れればそうするクセに、偉そうな口を!!」


 王女はそう啖呵を切って魔力を解き放った。



 王女の放った、城に避難した非戦闘員やクラスメイト、そして自信の全ての魔力を込めた一撃は合体した二人を跡形もなく葬り去った。


 やった。


 これで全てが終わった――ワケではないがともかく敵は倒せた。


 皆、一息ついて床に倒れ込んだ。


 すっかり日も落ち、辺りを見渡す。


 クラスメイトも城も何もかもボロボロだった。


 王女も綺麗な衣装も髪の毛も荒れていたがそれでも美しく感じていた。


 翌日、全てのクラスメイト達の生存が確認。


 大勢の犠牲者は出たがクラスメイト達は担任含めて皆生きている。


 あの激戦を考えれば奇跡だと言って良い。


 だがこれからどうするかを考えた時にまた騒ぎになりそうだが、とにかく生き延びた事を喜ぼうと思う。 





 僕はパタンと本を閉じた。


 緑豊かな木々の下、切り株を椅子変わりにして僕は様々な種族の子供達に物語を読み聞かせていた。


「これが長い長い旅路の始まりの物語。この後も強大な力を持っているにも関わらず、悪戦苦闘の戦いは続きました。何度も挫けそうになりました。みっともなく泣きました――」


 本には「異界の勇者達~始まりの章~」と銘打たれていた。

 実話を元にしたお話だ。

 余計な脚色は一切していない。

 それが不要な程に僕達の戦いは誰にも誇れる素晴らしい思い出だった。


 皆、担任含めて何だかんだでこの世界で生きている。


 地球に帰ろうとはしたが、それが出来るようになるまで時間も経ち過ぎていたし何より強くなりすぎていたのもあった。何より大切な物が出来てしまったからだ。


 だから皆この世界に残ってしまったのだ。


 今皆何をしているのだろうかと思ったがきっと皆元気に過ごしているだろうと思い青空を見上げた。


 END

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