第25話 煮るなり焼くなり。

「わ、分かりました、お任せします、煮るなり焼くなりきれいさっぱりお任せします」(なんかやけっぱち)


「じゃあここに座って」

 美容室(行った事はないけど)の様な席をすすめられる。

「美容室ってこんな感じなの」

「まあそうじゃない、行った事は無いけど」

「私も無いから、あの、髪も切るの?」

「そうだね、煮ても焼いても良いって言ってくれたから、丸坊主にしちゃうかな」

「わっ、そ、それは、、、」

「冗談、ショートカットにしてみない、きっと似合うよ」


 長い髪を後ろで束ねられて鏡で見ると短く見える。


「こんな感じかな」

「お任せします、覚悟決めました」

「じゃあ頂きまーす」

「えっ?」

「好きにさせてもらうよ、終わるまで目を瞑っていて」

 と言ってビニールのシートを掛けられる。

(怖いんですけど)



 前髪の右側をバッサリ切り落とされた。

(まさかイガグリ頭にされたりしないよね)


 そして横、後ろ、一回ごとに数秒の微妙な間隔が空くのは長さを確かめているんだろうか。


 そして一回り、頭にヘリウムガスの風船を付けた様な感じで頭がとっても軽くなった。


「ちょっと見てもいい?」

「だーめまだこれからなんだから」


 なんだかおもちゃを独占した小さな子供の様な言い方。


「私って顔デカいでしょショートにしたら余計目立ちそうだけど」

「顔が目立つのは良い事だよ、あごの骨格なんてその辺のモデルより立派だね」

「えー立派って顎張すぎ、エラになってる」

「顔が大きいのも顎が張っているのも美人の条件、目が大きいのもいいね、モデルやってみない」


(うわっ来た、マジヤバくない、写真撮るってだんだんエッチな恰好させられるとか、そういえばスタジオが何とかって言ってたし)


「だ、だめです化け物か珍獣扱いされてしまいます」

「確かに赤い目だったり牙のような犬歯だけど野生動物的な美しさが有る、これ大事、個性がないモデルさんは大物になれないんだビッグモデルと呼ばれている人たちは個性的な人たちばかりだよ」

「えっ牙って見ちゃったんですか?」

「初めに怒られたときしっかり生えてたよ」

「あーたまにやっちゃうの、頭に来ると額に青筋立って鬼に見えるの、良く鬼とか女閻魔とか言われてた」


 青鬼さんは暫く黙ってから、

「それは名誉な事じゃない、青鬼赤鬼にとって」

「今ならそう思えない事もないけど小さいときは嫌だった、鬼って言われたら見境なくなって鬼の様に暴れたの、幼稚園の時半数以上の子を投げ飛ばして行けなくなったか行かなくなった、女ジャイアンだった」


 なぜか青鬼さんクスクス笑ってる。

「だから危険人物なんです、今だって立派な男性の一人二人軽く投げ飛ばします武道の経験がない人なら10人くらい何てことないです」

「いや笑ってごめん、僕も姉にずいぶん迷惑掛けちゃった、気が付いたら5人とか10人ひとが倒れていて自分もぼろぼろになっていてどう見ても自分がやってしまったって感じ、その時の記憶が全くないんだ、何人かに囲まれた時までは覚えているけど」

「そうなんだよね、喧嘩してる時って覚えてないね、いつの間にか修羅場に自分だけが立ってた、それでもやったーって拳突上げてた」

「やっぱり僕たち鬼だね」


 そんな事を話てたらヤバイって事忘れてた。


「まだだよ、ちょっと変わってもらうけどまだ目は開けないで」

「分かりましたどうぞお好きなように」


(あれ何言ってるの私、まあ何とかなるでしょ)


 私の顔の上にタオルを乗せて離れて行く。

東雲しののめさん、お願いします」

 何処かへ電話したようだ。


「さあどうやって頂こうかな」

「そ、そうだね、煮ても焼いても不味いから、食べない方がいいかも」

「そう、それじゃあ生のままで頂こうかな」

(ま、マジやばいかも)


 すると、

「おまたせー、鋼君の秘蔵っ子だってーどれどれー」

 なんだかとてもケバイ女性が入ってきた、いや女性じゃないかも。。。






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赤鬼娘 一葉(いちよう) @Ichi-you

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