第9話団長の答え

翌朝、団長は朝も早くから、トランペットを手に、大臣の執務室を訪れていました。

「このトランペットはお返しします。やっぱり私たちには必要ありませんので。」

団長はたった一言だけそう述べましたが、大臣は何も言わず、軽く笑みを返しただけでした。

そんなこんなで例年より色々な事があったコンクールは、今年もやはり観客たちに笑われたのでした。あの年老いたラッパ吹きは、本番も盛大に音を外していきました。国民の怒りと失望はいつもの様に団長に向かいます。それでも団長は頑張った団員たちを心からの笑顔で迎えいれ、誇らしく思えたのでした。

そんな様子を王様と大臣と例の楽器のコレクターは、特等席ではない会場の隅っこで多くの観客たちに紛れながら眺めていたのです。笑いものになっている楽団員たちを見る三人の視線は、慈愛に満ちたものに見えたのでした。

コンクールが終わったその夜、誰もが寝静まった真夜中に、城の謁見の間に王様と大臣と例のコレクター、あの年老いたラッパ吹きがいました。とても小さなケースに入ったそれぞれの楽器が置かれています。何も言わず、ただお互いの目を見つめあった四人は人知れず、小さな真夜中の演奏会を始めました。

その姿はあの白銀の鳥と、薄い緑色の鳥、コバルトブルーの鳥、そして白いくちばしで少し大きな真っ黒の鳥でした。さも楽しげな、そのつたない演奏は目に見えぬたくさんのものを乗せて、どこまでも響き渡って行くのでした。




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年老いたラッパ吹き @lionwlofman

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