第5話 N級ガチャの魔物達が村を襲う。その1

 実家の食堂に老人を案内を終えたクラウスは窓の外を見上げると無数の何かがこの村に向かって飛んでくるのが見えた。


「どうしたんだ。クラウスよ」


「いえ、外をみたら何かがこちらに向かってきてるので何だろうと思いまして」


 その言葉に老人は慌てて空を見上げ血相を欠いた。


「もう来よったか。うかうかしておれん。済まんな少年。奴らの狙いは儂じゃ。ここを急いで離れる。なるべく儂のほうに誘導する。だからこの家で身を潜めておるのじゃよ」


「あれは何なのですか」


「今は答えられん。知ったらお主も巻き込まれるかもしれん。だから決して儂に付いてくるのではないぞ」


 そう老人が言うとクラウスの父親であるファスタに裏口を聞いて慌てて外に飛び出していった。


「ねえ、面白そうじゃない?」


 ジェシカは突然、クラウスにポツリとつぶやいた。


「跡を追いたいのかい」


「いやさ、だってなんか秘密にしてることって妙に気になるじゃない。こっそりついて行って聞いちゃっても罰は当たらないでしょ」


 ジェシカは興味津々な表情を浮かべながらクラウスに詰め寄る。

 その姿にクラウスは呆れて言葉を返す。


「いや、やめておこうよ。ここで待機しておいた方がきっと安全だよ。僕らが行ってもし万が一のことがあったら君の両親に顔向けできないし」


「ちぇ、つまんないの」


 ジェシカは頬を膨らませて詰まらなそうな声を上げる。


「それにあのおじいさん。君だって不審者だの。言ってただろ。ついて行ってもろくな事はないよ」


「むむむ……。分かったわよ。もう」


 ジェシカは家の棚からトランプを取り出すとクラウスの前に差し出した。


「どうせ外で遊ぶのも反対なんでしょ。それならこれで遊びましょうよ」


「うん。いいよ」


 ジェシカとクラウスは窓際の席に向かい合うように座るとばば抜きで遊ぶことになった。

 しばらくトランプで遊んでいると外が段々騒がしくなっていき突然、悲鳴と共になにか爆音が鳴り響いた。

 それに思わず驚いたクラウス達は思わず外を見た。

 黒煙が上がりなにか大勢の人が一目散に逃げていくのが見えた。

 徒ならぬ光景に思わず面食らったクラウス達は思わず外に飛び出した。


「おじさん。どうしたんですか」


 クラウスは逃げ出していた中年ぐらいの男性に声をかけるとその男はクラウスに向かって叫んだ。


「馬鹿。魔物達が村を襲ってるんだよ。逃げなきゃ殺されるぞ」


「なんだって」


 クラウスは驚きを隠せなかった。

 さっきの老人は自ら囮になると言ってたのにこれはどういうことなのか、まるで検討付かなかったからだ。

 クラウスは思わず老人が裏口から出た先をみる。

 するとなにか山の方から光がこちらの方を照らしていた。

 それを見てクラウスはある予測をした。

 そこにジェシカがクラウスに言葉を投げかける。


「クラウス、どうしたのよ」


「きっと、おじいさんの誘導が失敗したんだ。狙いはおじいさんじゃない。この村だ」


「そういうことか。それなら我々も逃げよう。クラウス、ジェシカ。私の手をちゃんと握っておくのだぞ」


 ファスタは両手を差し出すと右手にジェスカ、左手にクラウスがしっかりと手を結び一気に駆けだした。


「父さん、店の鍵はちゃんと閉めたの?」


「安心しろ。ちゃんと閉めた。火の元もしっかり消しておいたし問題ないだろ」


「お母さんは今どこにいるの?」


「婦人会があると言って出て行ったからな。今頃婦人会の連中と一緒に逃げてるんじゃないか」


 その会話の直後、何か後ろでとてつもなく大きな音と共に地響きが鳴り響いた。

 思わずクラウスがそちらをみると建物が倒壊して巨大な翼を持ったトカゲのような姿をした魔物がこちらをみていた。


「いかん。完全にこっちを視界に捕らえている。大通りを真っ直ぐ走ればあいつの餌食になる。クラウス。細い路地の方にいくぞ」


「はい、父さん」


 ファスタは一気に足を止めると右側の細道に足を向けた。

 後ろの方で悲鳴と共に魔物が逃げ遅れた人間を大口を開けて食らっているのが見えた。

 クラウスは思わすファスタの手を強く握った。それに気づいたファスタもより強く握り返してくれた。


「おじさん、痛い……」


「おお、すまなかったな」


 ジェスカはぽつりと言葉を漏らすとファスタはジェスカを持ち上げて背中に担いだ。


「お父さん、僕も」


「おまえは走れ」


 当然の返答にクラウスはしぶしぶ了承した。


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ガチャ魔王をぶっ飛ばせ! 大王さん @daiousan

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