魔王城七度目の攻略戦で5番目の十二魔神将を倒した中年勇者は、疲れた体を引きずって薄暗いアパートの一室に帰ってきた。それはもう、残業に疲れ切った社畜のように哀れな姿で。
どうやらこの勇者は思いもよらぬ理由から信頼を寄せ合ったパーティーを解散することとなり、それ以来10年の歳月をかけてソロで魔王城を攻略しているらしい。
事の経緯は勇者の自虐的独白の中で次第に語られていくが、そこで明かされるのは人が大人になっていく段階で誰しもが通らなければならない出来事であった。
コメディを思わせる冒頭回から読み進めるにつれ、読者はきっと勇者の独白に自分を重ねてしまうはず。あのとき想いを処理できていなかったら自分もこんな風になっていたかもしれないと。
受け入れがたい現実から逃げるように魔王城攻略を続ける勇者に救いの日が訪れるのかは、最後まで読んでのお楽しみです。
ちょっと笑えてちょっと重くて、そしてときに涙をさそうこの物語を一人でも多くの方に読んでいただけますように。