複合編

「進学だから、大丈夫よね?」

 大学4年のとき、毎年大学で受けている健康診断の結果を発行してもらうべく、保健センターに行った。他大学の修士課程を外部受験するため、診断書を出願先に提出しなければならないのだ。

 保健センターの人が、視力検査と聴力検査の欄が「所見あり」になっている私の診断書を見て、言った。


「進学だから、大丈夫よね?」


 保健センターに来る多くは、就職活動のために診断書を必要とする学生。

 ……もしや私、就職希望だったら、何か不利なんだろうか。


   ◇


 大学院に進学し、修士2年での健康診断。

 ちなみに、修士1年のときに「不整脈(心室性しんしつせい期外収縮きがいしゅうしゅく)」が見つかったため、視力と聴力の「所見あり」に加えて、心臓も「経過観察中(治療の必要なし)」。

 保健センターの人が、言った。


「進学だから、大丈夫よね?」


 そりゃまぁ、内部進学する予定だけど。

 元の大学とは飛行機の距離の別地方なのに、全く同じ台詞を聞くとは思わなかったなぁ……そんなに全国的に、私は就職には不利なんだろうか。


   ◇


 博士課程修了後は1~3年任期の職を渡り歩いているが、現在まで、健康状態がネックになったことはない。そもそも、健康診断書を求められない。

 一度だけ、採用内定から勤務開始までの間に健康診断書の提出が必要だったので、近所のクリニックにて健康診断を受けた。

 聴力検査。


 U字型の「音叉おんさ」を鳴らして、「はい聞こえますねー」で終わった。


 音叉なんて、中学か高校の理科の授業以来、初めて見たよ……。

 じゃなくて私、片耳難聴だから! その検査方法じゃ判別できないから!

 両耳とも「所見なし」の診断書になってしまったが、それでも採用先が受け取ってくれたので、日常会話が普通にできれば問題ないのかもしれない。


 一応、これから自費で健康診断を受ける方は、採用先及び医療機関に検査内容を確認することをお勧めする。音叉が出てくるところは、あまりないと思う。

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