2D編

赤青メガネって何するの

 『小学○年生』的な雑誌の付録が、「とびだすメガネ」でした。

 右目のところに青、左目に赤のフィルムが貼られたメガネです。

 誌面には、赤と青の線で少しずらして描かれたイラスト。

 メガネをかけて、このイラストを見ると、


 ……ただの、赤い線なんだけど。これ、どうやって遊ぶんだろう?


   ◇


 顔の前に、指を1本立てる。

 左目を閉じて、右目だけで指を見る。

 次に右目を閉じて、左目だけで見ると、背景に対して指が移動して見える。

 では、両目で見るとどうなるか?


 私の場合、「右目だけで見た場合の見え方」にほぼ等しい。

 つまり、左目は単体では見えるのに、日常的には全く働いていない。

(正常な目ならば、右で見た場合と左で見た場合の真ん中に指が来るんじゃないかと推測しているが、どうだろう?)


 人間の両目は水平方向に5~7 cmほど離れているため、立てた指を右目から見る角度と、左目から見る角度は微妙に違う。したがって、それぞれの網膜もうまくに写る像も、微妙に違う。

 異なる二つの像を、人間は脳内で上手に合成し、一つの像としてとらえている。


 赤青メガネの本来の遊び方では、

・右目は、フィルムを通して見るので、青い線が消えてだけが残る。

・左目は、フィルムを通して見るので、赤い線が消えてだけが残る。

・少しずれて描かれた赤と青の線が、脳内で合成されることで、イラストが飛び出すように見える。

 ……らしい。

 だが、私の左目は働く気がないため、右で見た赤い線だけが残ったわけだ。


 という目の持ち主なので、2枚並んだ微妙に異なる写真を「平行法」または「交差法」で見る立体視は、一度も立体に見えたことがない。

 以前、家電量販店の店頭に置いてある3Dテレビを試しに見てみたが、何が立体なのかわからなかった。

 どこかの博物館のエジプト展だかマヤ展だかで、『立体映像』と銘打たれた展示を見た際も、何が立体なのか(後略)。

 知人が持っていたNintendo 3DSも、何が(後略)。

 どうせダメだろうと思っているので、映画館の3D上映には入ったこともない。



 しかし。

 こんな私でも、唯一、本当にスクリーンから飛び出して見えた立体映像がある。


   ◇


 国立天文台の「4次元デジタル宇宙(4-Dimensional Digital Universe)プロジェクト」、略して「4D2Uフォーディーツーユー」では、空間3次元+時間1次元の4次元を、デジタルデータを使ったコンピュータグラフィックスで表現する。

 天文学者が観測した結果やスーパーコンピュータで計算した結果をもとに、科学的に正しい映像で、地球と月が形成される様子や、渦巻銀河が形成される様子などを見せてくれる。

 観客は、東京都三鷹みたか市の天文台敷地内にある「4D2Uドームシアター」で、専用メガネをかけて立体映像を鑑賞する。


 正直、私は「立体」であることには全く期待せず、宇宙に対する関心で見た。

 しかぁし!

 宇宙空間で、円盤状にグルグル回転して銀河になっていく星が、ちゃんとスクリーンより手前に見えるんだよ! 手でさわれそうなくらい近くに! 人生初3D!(超興奮)


 他の立体映像ではことごとく撃沈したのに、なぜ「4D2U」だけは立体に見えるのか、私自身、不思議で不思議で仕方がないのだが。

 これを書くにあたり、Wikipediaで「3次元ディスプレイ」の記事を読んで、一口に『立体映像』と言っても、方式はいろいろあることに気がついた。

 もしや方式によって、私にとって見える/見えないの差があるのではなかろうか。


 方式は大きく分けて、裸眼らがんで見るものと、対応した眼鏡が必要なものの2種類。

 Nintendo 3DSは、「パララックス(視差しさ)バリア方式」の裸眼立体ディスプレイだそうだ。また、3次元ディスプレイとは関係ないけれど、並んだ2枚の写真を「平行法」や「交差法」を使って立体視する「ステレオグラム」も裸眼だ。どちらも私にはアウトだが。


 眼鏡式の中にも、「アナグリフ」「偏光めがね」「液晶シャッターめがね」などの種類がある。アナグリフというのは、要するに赤青メガネ。これも私にはアウトだが。


 三鷹の「4D2Uドームシアター」では、現在は「アクティブ・シャッタ方式」で投影しているとのこと。これは「液晶シャッターめがね」に相当する。

 しかし、2015年のリニューアル前は「分光立体方式」だったそうで、時期的に私が見たのはこちらのはずだ。分光立体方式については、下記プレスリリース内で説明されており、専用メガネの写真も載っている。


参考サイト: 国立天文台 4次元デジタル宇宙プロジェクト

「4次元デジタル宇宙(4D2U)立体ドームシアターの完成 2007年3月20日 プレスリリース」

http://4d2u.nao.ac.jp/dome/


 また、「4D2U」のコンテンツは三鷹のシアター以外でも、全国各地の科学館などで上映されている。某所で去年も見たが、そこでは分光立体方式の専用メガネとは違う、黒いサングラスみたいなメガネ(プラスチックの安そうなやつ)だった。あれ、偏光メガネだと思うんだけどな……?

(なお、偏光メガネにも直線偏光・円偏光の種類がある模様)


 視差バリア、ステレオグラムと赤青メガネはアウト。分光立体方式はセーフとして。

 昔見た3Dテレビや博物館の立体映像は、メガネをかけたかどうかすら覚えていないし、今となっては方式の確認もできないが。

 某科学館、サイトでは「4D2U」投映方式がわからないけれど、また行く機会があったら訊いてみよう。

 あとは、どこかの家電量販店に、偏光メガネと液晶シャッターメガネ、両タイプの3Dテレビ置いてないかなぁ? どの方式なら立体に見えてどの方式がダメか、実験してみたい。わくわく。



 余談。三鷹以外で「4D2U」を鑑賞できる場所のリストが下記ページにあるので、お住まいに近いところでぜひご覧あれ。

https://prc.nao.ac.jp/4d2u/

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