2 少女の力
「あっ…!レイメリオ様っ!!」
「おい!これはどういう状況だ!?」
屋敷の目の前まで来ると、窓ガラスは割れ入り口のドアが崩れていたりと荒れ放題だった。
「と、突然男が入り込んで来て…!それで…いろんな部屋を荒らしながらレイメリオ様を……殺すと!」
「俺を殺すだと!?本当の殺し屋がやってきたのか…!おい!お前の仲間じゃないだろうな…?」
「ち、違います…!」
「おや…?この方はどちら様で?」
「あぁ…。こいつは──」
「そこに居やがったか、このガキめ!!」
「た……助け…て……」
入り口の前に立つ大柄な男。右手には大きな斤のような武器、左手には先程ベテランメイドさんと話していたメイドさんが涙目になりながら助けを求めていた。
「ジニー…!!ジニーを離しなさい!」
「はっ…!コイツは人質として捕らえられていただけだ。そこにいる小僧のな!!」
大柄の男は彼を指差した。私の腕を掴んでた手を離し、一歩前に出た。
「は…おじけずに前に出た勇気だけは認めてやる!」
ジニーというメイドさんを離すと彼女は震えながら隣にいるメイドさんの所に走って飛び込んだ。
「ううっ……。ルエットさん…」
「もう大丈夫よ…。」
「で…俺を殺しに来たとは…面白いじゃないか。相手になってやるよ──
こいつがな。」
「えっ…!?」
わ…私が…なんでこんな人と戦わなきゃいけないの!?
「レイメリオ様っ!一体どなたかは知りませんがそれはあんまりじゃないですか!」
ベテランメイドさん!そうですよね…!
私はウンウンと、二回頷いた。
「確かにルエットの言いたい事は分かるが…コイツは俺が見つけた不届き者だ。だから…チャンスをやろうって言う訳だよ。」
彼は私に近づき、近くによってきたので咄嗟に顔をフードで隠した。
そして彼は、私にしか聞こえない声でこう言った。
「お前があの殺し屋を追い払ったら、お前を見逃してやる。もちろん素手で戦おうと言ってる訳ではないぜ。どうだ?やるか?」
差し出されたのはさっき私に向けられていた銃だった。これで戦えと言ってるのだろう。
もちろん、断ったって彼らには一切面識はないからこの先どうなろうがいいだろうけど…
もしこの国で一生牢獄生活になったら…?太陽の逸材も見つからず、パパに会えなくなったら…?
それを考えると、答えは一つだった。
「…やります。」
私は、銃を受け取る。
「ほ~。なかなか面白いことになってきたなぁ…おいそこの殺し屋!ここにいる奴を殺したら俺を殺してやってもいいぜ?」
「なっ…!?レイメリオ様っ!何をいってらっしゃるのですか…!」
「はっ…!面白い!よく分からねぇがこんな小さな奴なんか…このオレが負けるわけねぇからな!!」
一気にその場は静寂となった。
私がこの大柄の男に勝てる手段はこの銃のみ。しかも銃すら使ったこともないので当たるかどうかも分からない。
当たったとしても…殺さずに男を倒す方法はありそうだがそれには能力を使う必要がある。
能力は使えるがここで使ってしまったらそれこそ怪しまれる。右手にある銃。その一本と自分の体で戦うしかないのだ…
まっすぐ、男の方に目を向けて数秒後…男は斧をぶん回しながらこちらに向かってくる──!!
振り上げた斧が地面にいる私に向かって振り下ろされるその瞬間に私は横にサッと逃げた。
地面に刺さった斧がまた、こちらに向かってくるとまた横にサッと逃げた。
「動きの素早い奴め…!しかし…!これならどうだ!!」
今度は、横から攻撃を仕掛けてきた…!
来るその直前に右足を一歩出しながらそこに力をためると、一気に上へ飛び上がる…!
大柄の男の頭より数メートル高いところまで来ると、銃を大柄の男に向けて発射した…!しかし、男の肩辺りに当たるはずだった玉はそこをすり抜けて地面に向かっていった!
もう一発…!もう一発…!と、3連続で撃ったが全く当たらなかった。
「ハハハ!!動きはすばしっこいが武器が使えないとは!!それじゃ…オレは倒せないな!」
空中にいる私に向かって斧は振り下ろされる…!私は間一髪避けた…
「はっ!オレの武器は斧だけじゃない事にまだ気づいてないようだな!」
「えっ────ガぁっ…グゥっ!」
斧に気を取られている隙に、武器を持ってない右手で捕まえられてしまった…!
「あぁぁぁあっっ……!!グッっ…、ゴホ…!はなっっ…!!し…て……」
「ハハハハハ…!武器さえ使えればオレを倒せたかもしれないが、使えないならただのネズミでしかないわい!この斧で…お前の首をちょん切ってやる!」
「ウソ……!わ…わたくしのせいで…!!あの方が本当に……!!」
「泣かないでジニー…このような事になったのは、レイメ…」
「おいルエット…。今なんて言おうとした?」
「……!い、いえ…何も……」
「そうか。ならいいが…。やはり、アイツはただの旅人か。このまま殺されても面白いが…明らかに普通のやつじゃ無いと思ったんだが…」
「さぁ…最後の遺言として少し時間をやったがもうこれでおしまいだ--」
どうする…!?手はあまり動かせないが男の手の中でなら一発撃てそうだが…その後の倒し方は能力を使うしか……!
でも…今ここで使えば何人かに見られてしまう…!それだけは阻止したいがそれを優先してしまったら私の命はここで尽きてしまう…!ここまで頑張ってフェンガリに戻るために頑張ってきたかいが無くなってしまう…!だったら…!!
「死ねぇぇぇぇ!!!」
斧は私にめがけてやってくる…!
それと同時に、手の中にある銃を男の手の中で発砲させた!
「イデエッ!!」
男が振り下ろす斧の動き、そして私を締めてた手の力が一瞬無くなったのを見計らうと、スルッと手の中から抜け出し、地面に着地した。
「コイツ…!!本気で死にたいようだな!」
地面に降りてからも、男の攻撃は続く。
振り下ろされる斧をかわしながらも日の当たる部分に確実にいるように避けた。そして避けながらも地面に向かって手をかざし、少しずつだが太陽の光の力を利用して光エネルギーが形として徐々に現れていく。
「ハハハハハ…!ついに追いつめたぞ!これで本当の終わりだな─────!」
「…それはどうでしょうか。」
「何っ────」
「
手を地面ではなく今度は男の方に向け、溜めていた光エネルギーを一気に発射させる…!!!
その光は自らも目が眩みそうな位の強い光で周りにいた人達は一斉に目を手で覆い被せた。
「ぐっ…!!眩しすぎて何も見えねぇ!!」
男が目を眩ましてる隙に、近づいて男の足元の地面に銃弾を何発か打った。
「ひぃぃぃぃ!!やってらんねぇ!戦いは終いだぁぁぁ!!!」
怖気づいたのか男は建物や木にぶつかりながらも走ってこの場を去っていった。
────やっと戦いは終わった。
私は事の発端であるレイメリオという男の前に行き話しかけた。
「…これで倒しました。約束はしっかりと守ってください。」
「あ…あぁ……分かった…約束は…守ってや……うぅ……」
どうやらまだ目が眩んでるようだ。二人のメイドさんも地面に倒れてたり頭の横を抑えてたりしている。
もう、ここには用事はない。このまま去ればバレずに次の町へ行けるかもしれない。
私は一応会釈するとその場を立ち去ろうとしていた。
「おい…待て…!!」
「………。」
「さっきの光は何なんだ…!一体どこで習ったんだ…!その能力は!そして…お前の名は何なんだ…!」
「……貴方に名乗る名ではありません…では。」
「おい…!待てっていってるだろ!!おい!!!」
彼の言葉を無視してその場を急いで歩いた。
───この能力は…太陽の光無くして使えない特別な能力──#月__モーント__#なのだから。
他国の人間には能力を見られてしまったが彼みたいに興味を持たれて───人殺しに使われてしまうかもしれないから。
だからこそ、この国の人間には極力関わらないようにしている。
少しでも遠くへ離れておこう……
そう思い、屋敷からどんどん遠ざかるように歩いていった──
Shine-シャイン- アネモス @anemos1107
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