第一章

1 太陽の黒点

あの日、パパと離れてから数年たった--


確か、ヘリドラに来てから7年ほど誕生日を迎えた気がする。と言っても、誕生日を祝ってもらったのはヘリドラでは一度もない。というのも、私は人と必要最低限関わらないようにしている。

それには、いくつか理由はある。


1つ目は、パパにこの姿を見られてはいけないから。

パパによると、私の腰まで伸びた瑠璃色の髪、サファイアのような目はヘリドラではとても珍しいらしい。だから探すときは目立たずに探せ。そう言われたのだ。

なので、服装は目立たないように白と緑の地味な色合いのワンピースにパパから貰ったフードが大きめのマントを着ている。


2つ目は、私の能力を発動させないため。

これもパパから貰った髪を結ぶ白いリボンはを封印するものであり、は今でも使える。確かには封印したからを使っても問題はないが--

万が一、ヘリドラで封印されてない能力が暴走してしまって…フェンガリで起こったみたいになってしまわない様に、人を避けている。


そんな人を避ける生活をしていたら、こんなに時間がたってしまい、更には太陽の逸材も見つからないままなのだ。

それもそのはず、太陽の逸材というのは男なのか女なのか、私より年下、年上、同い年なのか、そもそも人間なのか人間じゃないのか。なんの特徴も分からない状態で探してるのでこんなに見つからない。


だから、名前に『太陽』に関する言葉が入ってたり、〇〇の逸材など、少しでも関連しそうな事があったらその人の近くまで行き、気づかれないところで観察をしたりした。

だが太陽と関連する名前だけで実は飼っている犬の名前だったり、〇〇の逸材と言ってももう亡くなっていたりとどれも違かった。

正直、パパにもう少し太陽の逸材について聞けばよかったと後悔してるがあの時は先の事を考える余裕もなかったから仕方ないかもしれない。


さて--

今私は、とある港町に来ていた。港町なので人がたくさん集まる市場や漁師と今日の仕事を終えた舟達がたくさん並ぶ場所になぜ来てるのかというと…ここに『太陽の家族』という人達がこの町に帰国してきたという情報が入ったからだ。

幸い、その人達が住んでると思われる屋敷はすぐ見つけられたので気づかれないように隣にある小さな森の高い木の上で偵察をしていた。


茶色い壁にそれより濃い茶色の屋根の屋敷には、小さな庭園には整備された芝生に鉢に入った植物が置いてあり、庭師が水をあげたり、窓からはメイドさん達がどこかへ向かおうといそいそと歩いているのが見えた。

しかし--見えるのは使用人達だけでこの家の主らしき人は全く見えなかった。

もしかしたら、今は誰もいないのか…。そう思い、別の場所に移ろうとした時だった。


「はぁ…またレイメリオ様はどこかへ行ってるの?」


小さな庭で愚痴をこぼしているのはベテランメイドさんとまだ若いメイドさん2人だった。


「はい…。朝食をご自分の部屋で済ましたあと、いつの間にか逃げられてしまって--」

「全く…あの方はいつもいつも遊び呆けて私達の苦労が何もわかっていらっしゃらない…」

「そうですね…。異国での長い旅から最近帰っていらっしゃったのに、レイメリオ様の姉や兄は働きに…仕事はないといえ、遊び呆けるのはこの家のものとしてどうかと最近思うようになってきました…」

「そんな事、私は何年も前から思ってたわ!レイメリオ様のお姉様とお兄様のように慕われる人になってくれればいいのにね…だから周りからは『太陽の黒点』と言われてしまうのよ!」


愚痴が続いてるが、またしてもいい情報を聞けた。

どうやら今ここには、レイメリオという人しかいないらしい。遊びに行ってると言う事はこの辺にまだいるかもしれない…!


とりあえず、木から降りてその人を探しに--


「おい、そこでさっきから何を見ているんだ。」


後ろから低い声が聞こえ、体がビクリとした。

後ろにいるのが気づかなかったということは私を殺しに来たのか…はたまた同じようにこの家を偵察しに来た人か…。何にせよ只者ではない事は分かった。

私は、深くフードを被り木から飛び降りると自分の顔が見られないように相手を見た。


赤茶色の髪に真っ赤に輝く瞳、黒と白で統一された服装に帽子を被っている私と同じくらいの年齢の男…。そしてその男の手には銃があり銃口がこちらを向いている。


「何の用だ。こそこそと俺の住む家を覗き見る不届き者め。」


俺の住む家…!と言う事は、この男がさっき行っていたレイメリオという人なのか。私は恐る恐る彼にあのことを聞いてみた。


「私は…太陽の逸材というものを探しに…異国からやって来ました…。この町に太陽の家族がいると聞きここへいただけです…」

「太陽の逸材だと?確かにフィクスター家は太陽の家族とか言われてるらしいが太陽の逸材なんぞ聞いたことはないな。せめて逸材と言えるのは姉さんや兄さんの方だが残念ながら俺は逸材と言われる筋合いはない。だから他の所を探しに行きな…と言いたい所だが--」


彼は、一歩ずつゆっくりとこちらに歩いてきた。私も少しでも彼と距離を置くために後ろに下がりたかったが後ろに下がれば数メートル落ちてしまう。落ちてもこの位ならば着地はできるが銃で撃たれるかもしれない…


「勝手に人の家をジロジロと見てるのは明らかにおかしい…。本当に殺しじゃないか確かめないと解放する事はできないな。早速俺の家に………!?」


突然話が終わると共に、彼の顔が青ざめていた。

何事かと思い、彼の目線の先を見ると……


屋敷がところどころ荒らされ、女の人の叫び声が聞こえたりしていた。


「まさか…!?俺を殺しに来た奴らか!?おい!!お前の仲間か!」

「ち…違います!だから私は--」

「どちらにしろ今は一大事だ!お前も来い!」


そう言うと、彼は私の腕を掴み屋敷の方へと走った。


「ち…ちょっと!!離して…ください!」


何回か振りほどこうとしたが、力が強くて振りほどけない。


「振りほどいて逃げてもお前を捕まえるようにする事はいくらでもできるからな。捕まって一生牢獄行きになりたくなかったらおとなしくついて来い。」

「…分かりました。その代わり、急いで走ってください…あなたの元で働いてる方が一人でも傷つかない為にも。」

「犯罪者が人の心配をするとは…笑わせやがる。よし、走るぞ!」

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