Shine-シャイン-
アネモス
序章
0 幸せになるために
「ついに…!!ついに見つけたぞっ!!」
人が自ら入っていかない森の中。
月も出ていない真っ暗闇の中、遠くから喜びの声をあげるのは、私のパパだった。
その声を聞いた私は、すぐさまパパのいるところへ向かった。
「見てくれ!」
父が指を差したのは幅1m程の虹色の輝きを放った、空間にある
「ずっとこれを探していた…!ワタシとお前が『あの国』から追放されてからずっとこの穴を探していたが、ついに見つかった!」
「じゃあ……!これで私達は…!」
「あぁ…!これで帰れる!
私は、嬉しさに満ちていた。
パパのこんな嬉しそうな顔を見るのは久しぶりでもあり、
「パパ!早く…戻りたいよ…」
「あぁ…そうだな……」
嬉しさから一変、上がった眉を下げ口角も下がったパパの顔はそう答え、私は心配になった。
「どうしたのパパ…?」
「あぁ……本当に辛いことなのだが……お前にはここに残って欲しいんだ…。」
「え……。」
ボソリと、私は自然に言葉が出てしまった。
私は少し戸惑いながら、パパに聞いた。
「どういう…ことなの?え、私達…フェンガリへ帰るために一緒に探してきたんだよ!なのに…私だけ……なんで……?」
自然と目が潤んできた私に、パパは私の目線に合わせるように腰を低くしてから涙を手で拭ったあと、その姿勢のまま手だけを私の肩に置いた。
「ワタシだって…お前と一緒に帰りたいさ…、だかな…お前は、フェンガリでは……『殺人鬼』と呼ばれているから…。だからこそ…だからこそだ…!お前にはここに残って欲しいんだ…」
「確かに、私はそう呼ばれてる…けれど、それでもパパと離れるなんてっ…!」
「それにだ…お前の『能力』を無くせるかもしれないんだ。」
「能力を…?」
私には、生まれつきある能力が備わっていた。
フェンガリ王国の人間は全員能力を持っている。もちろんパパだって持っている。
だけど…その能力のせいで、私は殺人鬼と呼ばれフェンガリを、私の犯した罪に関わったと思われた父と共にフェンガリをこの穴から今いる国へ追放されたのだ。
例え、誰もが能力を持っていたとしても私の犯した罪は…重い。あの日起きたことは全て…私のせいだから。だからこそ、この能力を無くせるかもしれないと聞いた時、沈んだ心は一気に能力を消せる方法を早く知りたいという好奇心に変わった。
「あぁ。ワタシがフェンガリへ戻ろうと思ったのも、お前の能力を無くすためでもあったんだ。先に能力を消す方法が見つかってしまったがおまえには黙ってて済まなかった。」
「そうだったんだ…。で…パパ、無くす方法って?」
「それには…これが必要なんだ。」
そう言うと、パパはさっきまで置いていた手を私の肩から離してボロボロのズボンのポケットから一枚の茶色い紙切れを取り出した。
その紙切れを受け取り紙を広げると文字がびっしりと書かれていた。一番上には少し大きめな字で、能力を無くす方法と書かれていた。ここに書かれている言葉は材料のようだ。
「ここに書かれている材料を集めればお前の能力を消せるんだ。ほとんどがフェンガリにある材料だった。だがな、一個だけこの国にあるかもしれない材料があるんだ。それをお前に持ってきてほしいんだ。えっと…これだな。」
パパは紙切れの一番最後の、下に波線を書いて強調している部分を指差した。
そこには、太陽の逸材と書かれていた。
「タイヨウノイツザイ……?逸材って事は、人間って事?」
「ああそうだ。フェンガリではその太陽の逸材と思われるものはいても本物ではなかった。となると、この国にいる可能性が高いんだ。これは一種の懸けだ。いるかもしれないし、いないかもしれない。だか、これはお前のためだ。やってくれるか?」
私は正直、迷っていた。この何も知らない世界にたった一人、更には誰だかも分からない太陽の逸材を探さなければ行けないのだから。
だけど--もし見つかればまた平穏な日々が戻ってくる。あの幸せな日々がまた戻ってくることを考えると、答えは一つしかなかった。
「…うん。やるよ。見つける。太陽の逸材を。」
♢♢♢
そして私達は、森の中にある小さなボロ小屋で最後の夜を過ごした。
パパから、一人で生きていけるように最低限の食べ物、この国で使えるお金、バッグ、パパが羽織っていた大きめの草色をしたフード付きマントを私の枕元においた。
「それと…万が一あの能力を使わないようにこれを身につけると良い。」
そう言うと、パパは私に白いリボンを手渡した。
「リボン…?」
「あぁ、このリボンはワタシの能力で作ったリボンだ。一部の能力だけを封印することができる特殊なリボンで、つけるだけで能力を封印することができる。」
それを聞いた私は、肩より少し伸びた髪を貰ったリボンで高めに結ぼうとしたがうまく結べず、パパに変わりに結んでもらった。
その後、床に2人で寝転び薄くて汚れた一枚の布を2人で半分こしてお互いに向き合うように寝た。
「明日、お前が起きた頃にはワタシはいないだろうな…。だから、しばらくの別れになるだろう。」
「うん…。」
やはり、自分の為とはいえずっとそばにいたパパと離れてしまうのは悲しかった。涙が出そうだったが最後だから…涙を頑張ってこらえながらこう言った。
「ぜっ…たいにっ……しあわ…しにっ…なろう…ね……パパっ!」
「もちろんだ。幸せになろうな。愛してる…我が娘よ。」
「うんっ…わたしも…愛してる…パパ……」
パパは私の額にキスを落とした。
そして私はパパに寄り添うようにすやすやと眠ってしまった。
そして目が覚めると、パパはいなくなっていた。
そして私は、10歳という幼いときにこの
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