Episode 3 - An Encounter


 07


 System check start

 Central control unit check : Clear

 Vital sign check : Clear *Warning anomaly detection*

 Memory check : Clear

 Battery charge : 82%

 Vision system check : Clear

 Auditory system check : Clear

 Inertial control system check : Clear

 Movement control apparatus check : Clear

 Joint drive apparatus check : Clear

 NFR box check : Clear

 System : All clear

 Start up

 }


 次にボクが目を覚ますと、また前と同じように、視界いっぱいに灰色が広がっていた。

 しかし今度の灰色は空ではなく、何処かの建物の天井の色らしかった。

 ボクはまたしても同じ疑問を持った。

 ここはどこだろう、と。

 ボクが最後に覚えていることは、正体不明の何者かに殴り倒されたという事だ。

 もしや、あの暴力的な何者かがボクのことをここまで運んだのだろうか。

 そう考えると、ボクはえもしれぬ恐怖に襲われた。

 もしそれが本当ならば、早くその暴力的な何者かがこの場へ帰って来る前に逃げ出さなくてはならない。

 ボクは少し焦りながら静かに上半身を起こした。

 その時、極力音を抑えるつもりだったが、意図せずに上半身と下半身を繋ぐモーターの音が鳴ってしまった。

 ボクはその予想外の音量にギクリとし、体が固まるのを感じた。

 ボクから発せられた音が、材質が剥き出しとなった部屋の壁を反射し、遠くまで運ばれていく。

 もしこの建物内にその何者かがいたのならば、今のは間違えなく気づかれただろう。


 案の定、隣の部屋から何者かが椅子から立ち上がり、こちらへ歩いてくる音が聞こえてきた。

 コツコツと硬いものが部屋の地面を打つ音が聞こえてくる。

 ボクは今度こそ殺されると身を硬直させ、扉もないこの部屋への入り口を見つめた。

 一体どんな凶悪なものがそこから現れるのだろうか。

 ボクは緊張する。

 そして散々焦らされた末にとうとうその正体不明の恐怖は姿を現した。

 そこに居た者はボクの想定していたどんな姿をもしていなかった。

 そこに居たのは、人間の女性だった……。

 彼女は腰まである灰色の髪をなびかせ、鋭い眼の奥にある黒い瞳でこちらの事をしっかりと捉えている。

 表情は引き締まっており、その凛とした様子を見たボクは自然と背筋がシュッとしたような気がした。

 彼女がボクのことを襲ったのだろうか。

 見た目だけで判断するのは早計だが、とてもボクにはそうだとは思えなかった。

 だって、人間がボクのことを襲う理由などないはずなのだから。

 それにボクは内心、待ち焦がれていた自分の創造主の登場に心を躍らせていた。

 彼女はあまりの衝撃に身動き一つ取らないボクの前まで静かに歩き、接近した。

 そうしてボクのすぐ近くまでくるとその引き締まった表情を崩し、口元にほんの少しの笑みを浮かべた。

 ボクはその優しい表情を浮かべた彼女のことをとても美しいと純粋に感じ、思わず見惚れてしまった。

 彼女は真横にあるガラスのない大きな窓から差し込む光に照らされ、呆然としているボクの円柱型の頭に手を置き、言った。


「もう大丈夫そうだな。治ってよかった」


 その声も彼女の浮かべている表情同様に、とても優しい音色だった。

 その言葉から彼女は絶対にボクのことを襲ってなどいないという事を確信した。

 それどころか、わざわざボクのことを何処かの廃墟ビルの一室まで運び、修理してくれたのだろう。

 ボクは乱れている心を落ち着かせ、すぐさまお礼の言葉を言った。


「治していただきありがとうございます。本当に助かりました」


 ボクが放ったその言葉を聞いた瞬間、彼女は突然表情を激変させた。

 そして先ほどまで優しくボクの頭に添えていた手を離した。

 彼女の表情はまるで信じられないものを見ているかのようだった。

 様子があまりにもおかしかったので、ボクは何か失礼な事を言ってしまったのだろうかと不安になった。

 それからしばらく沈黙していた彼女は不意に口を開いた。


「君は一体……」


 その言葉の意味をボクはイマイチ理解することができなかった。

 でも、彼女が動揺して驚き、ボクのことを警戒しているということだけは分かった。

 自分のいったい何処が彼女のことをそんなに驚かしたのかはわからないが、取り敢えず自分のことを彼女に伝えるべきだろうとボクは判断した。

 そうすれば少しは彼女の警戒を解くことが出来るはずだ。

 ボクは彼女に自分が今置かれている状況を説明した。


「ボクは、今から154時間10分22秒前にこの街の廃棄施設にて再起動しました。

 名前はその時、既に大半の記憶を失っていたので、まだ思い出せないです……

 目覚めてからボクは、自分の創造主たる人類を探していました。

 そして、もう見つからないのではないかと半ば諦めていました……

 でも、あなたと会えてよかった」


 彼女は静かに黒い瞳でボクのことを見つめながら、ボクのその言葉を聞いていた。

 それから少しの間形のいい顎に手を置き、彼女はボクについての情報を整理しているらしかった。

 その後、幾分か警戒を解いたらしい彼女は不意に申し訳なさそうな表情になり、口を開いた。


「すまない……私は君の望む『人間』ではないんだ。私は……人類を模して作られ、人間の人格データを入れられたアンドロイドだ。それに、人類はもういない……」


 その彼女の言葉を聞いたボクは、あまりの衝撃に「えっ」と間抜けな声を出してしまった。

 そしてボクはその言葉が自分にとって重すぎるものだったので、彼女の言っていることは事実だろうかと疑わずにはいられなかった。

 ボクにはどうしてもその事実を受け入れることができない。

 いや、ただ受け入れたくないのかもしれない……。

 ボクはさらに彼女に問いかけた。


「それは……事実ですか」


 彼女は静かに首を縦に振り肯定した。


「ああ……」


 そして、その相槌に続けて何故人間が絶滅してしまったのかについての真相を話し

始めた。


 君が今持っているであろう、信じたくないと言う気持ちはよくわかる。

 だが、人類はもう何処にもいない。それは事実だ。

 彼らがこの星から居なくなったのは、今から100年近く前のことだ。

 彼らは交配を連綿と続けていくなか、次第に生命にとって最も重要な生殖能力を失っていった。

 それが何故だかは私にはわからない。

 だが、その事実が……子を残すことができないと言う事実が、人間を滅ぼした。

 私にこの出来事を明確に示せるようなものは無い。

 だが、どうか信じてほしい。

 さっき出会った者を信じるなどとても出来ないかもしれないが……


 彼女の真剣な声色とその姿勢から、どうしてもウソをついているとボクには思えなかった。

 彼女が言っていることが本当ならば、人間はもういない。

 そう知った瞬間、今まで歩いていた道が崩れ落ちたような感覚に陥った。

 ボクは一体これからどうすればいいのだろうか。

 彼女はボクの動揺している様子を静かに見つめている。

 きっと事実を伝えることでボクが動揺することを、そして少なからずショックを受けることを彼女は知っていたのだろう……。

 彼女は何も言うことのできないボクをいたわりの目で見つめ、言葉を続けた。


「君にとって、今の話は辛かったのかもしれない……それに気分がいい話ではなかっただろう。すまない……」


 彼女が謝る理由はない。

 彼女は自らが知っている事実を見ず知らずのボクにわざわざ教えてくれただけだ。

 そんなことをさせてしまっているボクは彼女に申し訳なかった。

 それにこのまま何も言わずに彼女に迷惑をかけるのは嫌だと思った。

 だからボクは口を無理やり開き、今思っていることを全て彼女に伝えた。


「話をしていただいてありがとうございます……

 貴女の話をボクは信じたいと思います。

 人間が居なくなってしまったことはとてもショックですが、それでもやっとこうして話を、会話をすることが出来る人物と出会えた。

 だからボクは嬉しいです。

 なにせずっと一人ぼっちだと思っていましたら……」


 彼女はボクの言葉聞き終えるとすこし驚いた顔になり、すぐに返した。


「そうか……信じてくれてありがとう。

 私も……ずっと、ずっと一人だと思っていた。私のように自我を持つ者はいないと長年思っていた。

 しかし、君は他のロボット達とは違う。

 まるで自我を、意識を持っているように話す。

 私も話をすることができる者と出会えてとても嬉しいよ」


 ボクは、彼女も自分と近い感情を持ってくれていると安心した。

 その後しばらく間を置き、彼女はなにかを思い出したという表情になって言った。


「そういえば……すまない。名乗るのを忘れていたな。私の名前はアシュだ。よろしく」


 そして彼女は手を差し出した。

 暫くボクは考え、それがかつて人類の挨拶の一種としてあった『握手』を求めているのだと覚った。

 ボクは彼女の差し出されている手に応えるように、自分の手を差し出した。

 ふとボクはその差し出した腕が壊された方だということに気がついた。

 修理は見事なもので、ほとんど完璧。

 それどころか以前よりも調子が良くなっていた。

 ボクはそのことを内心感謝しながら、彼女の五本の指をたたえた手の中に自分の二つのアームだけがつく簡素な手を置いて言った。


「ボクの名前は……まだ思い出せないですが。よろしくお願いします。アシュさん」


 それを聞き終えると、彼女はボクの武骨な手をしなやかに優しく、五本の指で包み込んだ。

 ボクにそんな機能があるはずはないのだけれど、彼女の手に包まれたボクの手からは暖かさを感じた。

 それから彼女は少し気恥ずかしそうにボクの手を握りながら、腕を上下に揺らした。

 ボクは誰かとそういうことが出来るとは夢にも思っていなかったので純粋に感動し、嬉しかった。


 08


「それじゃあ、ボクのことを襲ったのは、アシュさんと同じアンドロイドだったんですか」


 あれから暫く彼女と話し、いま彼女からボクのことを襲った者の正体を教えてもらっていた。

 彼女は頷く。


「ああ……君を襲ったのは、男性型のアンドロイドだ」


「でもどうして……」


 何故アンドロイドがボクのことを襲ったのだろう。

 ボクにはその理由が思い当たらなかった。

 彼女はボクの疑問に答えるため、さきをつづけた。


「さっきも言ったと思うが、私も君と同じでこうして会話ができる者と出会ったのは、自分が起動してからの約50年間で初めてだ。

 それが何故かというと……私以外のアンドロイドはろくに会話ができる状態の者がいないからなんだ」


 確かに彼女は、先程もこうして話しが出来る者と出会ったのはボクが初めてだと言っていた。

 しかしロボットならば分かるが、他のアンドロイドが碌に話しもできない状態というのはどういうことなのだろうか。

 彼らも彼女と同じアンドロイドなのだから、話ができても何もおかしくないはずだ。

 ボクは自分に中で新たに生まれた疑問を彼女にぶつけた。


「アシュさん以外のアンドロイドが会話をできないと言うのは、一体どういうことなのでしょうか」


「それは……少し長くなる。それでも大丈夫か?」


 ボクは円柱型の頭部を縦に振り了承した。


「ボクは真実を知りたいです。お願いします」

「そうか……分かった」


 そうして、彼女はアンドロイドと人を巡る話しを始めた。


 原因は分からないが、人類は生殖機能を失って絶滅した。

 生殖機能を失うということは、子孫を残すことができないということだ、だから現状で生きていた人間はまだ沢山いた。

 当然だが残った人間達も徐々に加齢が進んでいく、いつかは皆滅びる。

 だが、自分たちの寿命という猶予がまだあった。

 だからその与えられた猶予の間に現状で残っていた人類は、当然の帰結として生殖機能がなくても生き延びることが出来る体を新たに手に入れようとしたんだ。

 そうして作られたのが『アンドロイド』というわけだ。

 人類の生殖能力が完全に機能しなくなった頃にはすでに研究されていた『アンドロイド』の身体は、比較的早い段階でできた。

 しかし、最も大きな問題がまだ未解決だった。

 それが人格の移植。

 自我の生成。

 記憶の引き継ぎ。

 色々な表し方があるが、要するに身体は出来ても魂が宿らなかったんだ。

 何をしても人形の中は空っぽのままだった。

 他にも体を機械に置き換えるというのが一つの解決策としてはあったが、それも結局は寿命を延ばすことにしかならず、この魂の問題に最終的には結局ぶち当たった。

 だからこの問題に世界中が躍起になった。

 なんたって、身体ができても自分たちの魂が宿らないんだったら意味がないからな。

 徐々に加齢が進んでいく人類は、それこそ血眼になって不断の努力を重ねた。

 しかしその努力虚しく、誰も、誰一人として魂を人形の体に宿らせることに成功する者はいなかった。

 きっと、その時人類は絶望しただろうな……。

 そのまま依然として問題が解決されない状態で、生殖能力が失われてから生まれた最後の人間達まで世代が進み、人の数がかなり減少した。

 その時になってようやく人類は、自分たちの祖先が成し遂げることができなかった道に一筋の光を見出した。

 それはある日、世界中にとあるしがない研究所が魂の移植に成功したというニュースが出回ったんだ。

 その発表と実験結果に世界は藁にもすがる気持ちで、縋り付いた。

 様々な検査、検討の結果、この実験結果が有用だということが証明され、世界中でその技法が用いられて移植が行われた。

 結果として、完全ではないが確かに移植は上手くいった。

 きっとその時人類は歓喜したはずだ。

 これで生き延びられると……。

 これでようやく種の存続という皆の悲願が成就すると……。

 しかし、その喜びの享受も長くは続かなかった。

 初めの研究所で実験が成功したはずのアンドロイドがある日突然発狂したんだ。

 その発狂の仕方はまるで地獄の業火に焼かれているかのような様子だったらしい。

 すぐさま調査が行われたが、何が原因なのかを誰一人として解明することはできなかったし、その研究を成し遂げた研究者本人にすらも分からなかった……。

 そうして、その事実はまたしても人類を絶望のどん底へ叩き落とした。

 人類が縋った藁は腐っていたんだ……。

 その後、もうすでに大量に移植を受けていたアンドロイド達は始まりの研究所同様に次から次へと発狂し、やがて人間を襲い始めた。

 そこから人類は、君が今考えているであろう災厄のシナリオを進んでいった。

 そしてそのクソッタレなシナリオのなれの果てが、人類が絶滅し、狂ったアンドロ

イドが徘徊するこの世界というわけだ……。


 ボクはあまりにも悲惨な人類の結末を聞いて、自分までその絶望を味わった気になった。


「そんなことが……」


 彼女は静かにうなずく。


「ああ……これは私自身が実際に経験したことではないが、知識の一つとして最初から与えられたものだ」


 またしてもボクに数々の悩みが浮かんだ。

 それは、狂ったアンドロイドが徘徊するこの世界でボクは生き残ることが出来るのだろうかということや、仮に生き残ったとしても何をして生きてゆけばいいのか、ということだった。

 思わずボクの口から小言が漏れた。


「ボクはどうすれば……」


 それを境にボクは悩むあまり沈黙してしまい、二人の間にはしばしの空白ができた。

 それからしばらく経って、そんなボクの様子にシビレをきらした彼女は口を開き、空白を打ち消した。


「もし良ければだが……私と一緒に来ないか?」


 ボクはその突然の誘いに耳を疑った。

 だってそれもそうだ。

 どう考えてもボクは戦力になりえないだろうし、足手まといだ。

 それなのにそんな自らにメリットのない提案をする彼女に驚かずにはいられなかった。

 だからボクは今思ったことを伝えた。


「もちろん出来ることならアシュさんと行きたいです。ですが、ボクは足手まといにしかならないかと……」


 彼女は僕のそんな言葉を聞いて、最初に見せたあの優しい表情をして言った。


「そんなことはないさ。

 それに……正直私は心の奥底で自分の孤独の埋め合わせに君を利用しようとしているのかもしれない……もう一人は、孤独はこりごりなんだ。

 だから、こんな私の汚いところを知ってもなおついてきてくれるのなら、私は嬉しいよ」


 彼女は孤独だった。

 それも長い間ずっと。

 だからこんなボクでも共にいたいと思ったのだろう。

 ボクは彼女の役に少しでも立ちたいと考えていた。

 足手まといだとしても、ボクが彼女の助けに少しでもなるのなら……。


「ボクも……もう孤独は嫌です。こんなボクでもアシュさんがいいと言ってくれるなら、お願いします」


 ボクのその言葉を聞いた彼女はどこか安心したような表情になった。

 そして、今度はボクから先に握手をするために、自分の腕を上げようとした。

 その時、ボクは視界の中に『エウペ』という文字を発見した。

 その文字はボクの上腕部に何かでキズをつけるように彫られていた。


「エウペ……」


 それを発見したボクは無意識にそう口に出していた。

 彼女はその声をどうやら聞き取ったらしく、少し眉をひそめた。


「エウペ……その言葉は何だ?」


 ボクは彼女に自分の上腕部を見せて言った。


「ここにエウペと文字が刻まれているんです」


 彼女は「ちょっと見せてくれ」と言ってボクの腕を手に取り、その文字をよく見た。


「確かに『エウペ』と何かで彫ってあるな……君を修理しているときには気が付かなかった。この文字はいったい……」


 ボクは初めて見つけた自分に関する手がかりを手放さないために、必死に頭を振り絞った。

 しかし、いくら悩んでもやはりなにも思い当たる節はなかった。

 ボクが苦悩している様子を静かに見つめていた彼女は不意につぶやいた。


「もしかしたら……『エウペ』というのは君の名前じゃないか?」

「ボクの名前……」


 そう彼女に言われた瞬間、ボクは雪の降る街に建つ一軒の小さな民家の画像をまるでフラッシュバックの様に見ると同時に、『エウペ』という文字が彼女の言う通り自分の名前だったということを思い出した。

 

「ボクの名前は『エウペ』……?」


 ボクはまたしても独りでにそう口に出した。


「大丈夫か?」


 彼女は心配そうに言う。

 ボクはこれ以上彼女に心配をかけるのは悪いと感じたので、どうにか気持ちを落ちつかせ言った。


「思い出しました……アシュさんの言う通り、ボクの名前は『エウペ』です……」


 ボクからそう突然の告白を聞いた彼女は驚いた様子で言った。


「そうか……キミの名はエウペと言うんだな。名前を思い出せてよかった。他には何か思い出せたことはあったか?」


 ボクは先ほど見た画像についても彼女に説明した。


「他には何処かの雪が降っている街と、そこに建つ一軒の小さな家の画像を思い出しました……」

「雪の降る街か……情報がそれだけだと私にはわからないな……それ以外はダメそうか?」

「はい……思い出せたのはそれだけです」

「そうか……まあ、焦ることはない。少しずつこれから思い出せばいい」


 その彼女の優しい気遣いの言葉にボクは頷いて言った。


「確かにそうですね……アシュさんの一言で名前を思い出すことができました。ありがとうございます」

「キミの役に立ててよかったよ。じゃあ気を取り直して……これからよろしくなエウペ」


 彼女はそう言い終えると、手を出した。


「よろしくお願いします。アシュさん」

 ボクもそう言い、彼女へ手を差し出す。


 そしてその日、ボクたちは世界に一人ぼっちから二人ぼっちになった。

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