詳しい事は明らかにされないが、それは時に作品にとって良い効果をもたらす。寓話というのが括弧付きの「例え話」なら、この作品は恐らくその類かと思う。
少年は本当に悪魔だったんだろうか。町の人たちの心配をよそにひとり「危険」だとされている魔女の元へ向かうのは、確かに人の心が感じ取れない存在なのかもしれない。
対して魔女はあらぬ疑いと妄想だけが人々の間で一人歩きして、町の人との一切の交流が鎖されている。恐怖という名を借りた孤独を強いられ、ただひとり、寂しい森で生きている。
少年は、そんな魔女の負の名声が欲しいと願う。欲しいと願ったものは与えられず、それを願わない者に振り分けられた小さな世界。出会わなければ決して交換できなかったもの。
ただ、魔女はその孤独を、彼女の目にはただの少年としか思えなかった存在に、本当に分け与えるべきだったのだろうか。
「世界で一番冷酷」とは、ただの少年に孤独を与えてしまった彼女の、思いとは裏腹の矛盾した事実そのものの事かもしれない。