Ⅵ
「おい!森から誰か出てきたぞ!」
「あいつか!」
「無事だったのか?」
森の外の村の者たちは森に消えた少年のことを心配していたようです。
「いくらあいつが冷淡な孤児だからといって森に消えたら心配だ。」
「おい!大丈夫か?」
ふらふらと歩く少年に大人たちが集まり彼を保護しました。
「…心配をかけてしまいすみません。怪我もしてないし、大丈夫です。」
少年は申し訳無さそうに周囲の大人に謝りました。
「?そうか、それならよかった。ところで森で何を見た?まさか魔女に会ったのか?」
「…はい。彼女は、やはり、とても冷酷で、命からがら逃げてきました。自分が死にそうになって、はじめて怖いという感情がわかりました。」
少年はどこか寂しそうにうつむきながらぽつぽつと森であったことを話します。
村の者たちは少年に心が生まれたことを喜びましたが、魔女の事に関しては以前よりも酷く罵り、子供たちにはもっと厳しく魔女の怖さを教え、ついには森に柵をしてしまったのです。
その話は隣の村、さらに隣の村にまでも広がりました。子供たちはその話を聞くだけで震え上がり泣きだす者もいました。
しかし唯一魔女を見た少年はその話を聞く度にどこか悲しそうな痛がるような顔をするのです。
「あなたの願いは叶いましたか?」
誰にも聞こえないぐらいの小さな声で誰よりも遠くにいる少年に訪ねるのです。
村の隣にある森には決して近づいてはならない。
なぜならその森には世界で一番冷酷な魔女が住んでいるから。
おわり
世界で一番冷酷な魔女 夜水 凪(なぎさ) @nagisappu
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