V
「…あなたが何を求めているのかはわかりました。しかし、あなたは魔女というものを間違って認識しています。」
少年の話を聞いた女性は少し怒っているように、それでいて同情するように少年に語ります。
「魔女というのは本来人間と何ら変わらない存在なのです。カエルのスープも飲まない、ネズミを捕まえて食べたりしない。まして人の子どもを捕らえたりなど決してしない存在です。それが魔女狩りをキッカケに噂が広まり、誤った認識がされてしまったのです。」
部屋には女性の悲しそうな声が響きます。
「…なのであなたがもし魔女になったとしても、それはあなたの願いが叶ったことにはならないでしょう。」
外では風が強く吹き付け、家がガタガタと震えています。
「…いえ、願いは叶いますよ。」
「私の話を聞いていましたか?」
「はい。その上での回答です。あなたの話によると魔女は一般的には僕が思っていたように酷い存在とされている。
これに変わりはない。僕はその酷い存在に、僕からなるのではなく、周りからその与えられた名前を留めるのに相応しい器が欲しいのです。だからこそ魔女がいい。」
少年は微笑みながら女性に近づいていきます。
「先程の話からしてやはりあなたは魔女だ。そしてあなたは誰からも迫害されたくないらしい。両者の利害は一致しているではありませんか。」
魔女の瞳は少年を捕らえ、その姿は、
ゆらゆらと揺れています。
また一歩。少年が近づいていきます。
「さぁ、契約をしましょう。」
そっと伸びてきたのは悪魔の手。
この手を取れば…
そっと目を閉じた魔女の目の前にいるのはただの少年だった。
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