ふたりきりでたわむれる娘のすがたは無形の幸福に満ちていて、だからなのか、読み進めるごとに脆さが浮き彫りになっていきます。ふたりの幸福はいつも曖昧にぼやけています。それは曇った鏡に映した残像のように。美にはかぎりがあって、終わらない幸福もない。美と頽廃と楽園と喪失と。小物のひとつひとつまで美しく、その美しさがどんどん不穏になっていく様子に話を読み進める手がとまらなくなるような短編でございました。