第9話 預言者 2.
俺は窓の方を盗み見た。男は壁にもたれたまま眠っているようだ。俺は物音を立てないよう、男が運んできたソリのところまで移動する。
また、目の奥でオレンジの光が広がる。マグマはどんどん力を増しているらしい。光が薄くなるのを待ってから、俺はソリの上の麻袋の紐を一気に解いた。現れたのは、拍子抜けするほど地味な色をした筒のようなものが乱雑に積まれてる光景だった。
「火薬だ」
後ろから声がして、俺は飛びのいた。いつの間にか目を覚ましていた男が、薄く笑みを浮かべていた。
「こんなものどうする気だよ」
「昔、これを使って教皇を殺す計画があった」
「それ、成功したの?」
男は黙りこくってしまう。
「教皇を殺すより早く、執行部隊が追ってきて俺たちが殺される」
「君は、死ぬのが怖くないのか」
そう尋ねられて、今まで考えてもみなかったことに気づいた。物心がつく前から、自分は神のもとへ帰るのだと教えられた。それに火口に投げ込まれるのは怖いというより、いつも見る暖かい光に包まれるような気がして、どこか懐かしく感じもしたが、素直にそう言うのは癪だった。
「それより腕はいいのかよ」
男は大丈夫だと答えて、自分の右腕を軽く抑えた。半分雪に埋もれた窓から見える空は、目の奥のオレンジ色と正反対の鮮やかな青だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます