第4話 仮面の男
夕方に高円寺のアパートを出た。酒は飲まない予定なのでバイクで行こうかとも思ったが、雨が降っていたので電車で移動することにした。
六本木なんて騒々しくて洒落た街には行きたくなかったが、美雪が前から行きたがっていた店があったので、そこに行くことにした。強硬に反対する程の拒否感はなかった。
総武線で代々木まで行って、大江戸線に乗り換えた。
地下深くのホームに降りて、狭い車両に乗り込む。走る電車の窓から、何も見えない暗闇を眺めていると、誰かが移動してきて、僕の横に立った。
視線をその人の方に移すと、白い仮面を被った男が立っていた。
「為すべきことを思い出したか?」
仮面の男が話しかけてきた。
おかしい人間なのだろうか。仮面を被っているだけでも十分おかしいが、手には長い円筒状のケースを持っていた。中には凶器でも入っているのか。僕は襲撃に備え、膝に余裕を持たせた。
「俺は仲間だ」
そう言うと、仮面の男は背を向けて車両の中を歩き始めた。僕が後姿を見つめる中、通路を歩き、車両間のドアを開け、別の車両へと移って行った。別の車両でも歩き続け、また別の車両へと移って行った。他の乗客は見て見ぬ振りをしているのか、何の反応もしなかった。電車は六本木へ到着した。
ホームに降りたが、仮面の男の姿はなかった。
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