選抜
「そうは言っても全員で行くわけにもいかないんだよな」
俺はそう呟いた。人が多い方が何かと助かる場面が多いのは確かなのだが、娘たちやリディにはそろそろ魔力の問題がある。
一旦、家に帰してやりたいところだ。
皆を見回すと、頷いてくれたので、意図は理解してくれたらしい。
「そんなわけで、選抜して向かうことにしよう。なに、うちで強いのが2,3人いればなんとかなるはずだし、それでなんとかならなかったら、本格的に兵を入れるべきだ」
「……そうだな」
カミロも頷いた。俺の言い分に納得してくれたようだ。
「よし、それじゃあ誰が行くかだが、ヘレンと俺は確定として」
ヘレンはこの地域最強の傭兵。俺はエイゾウ一家の代表として、後は戦力としても向かわない選択肢がない。
「あと1人、誰が向かうかだな。俺とヘレンだけ、という選択もあるが」
都でのことを考えれば適任はディアナだろう。エイムール家の令嬢である彼女は、半分当事者のようなものでもあるし。
ただ、「後から追いかける」場合、その時にディアナがいてくれた方が何かと助かるのが事実である。
戦力、という面で考えればサーミャだろうな。だが、彼女は〝黒の森〟のエキスパートだ。何かあった場合に森を行くなら、彼女が必要になる。
同じく戦力ならアンネも外すわけにはいかないのだが、何せ帝国皇女である。今更という気はするが、本来であれば都にホイホイ入っていい身分ではないし、未知の領域に踏み込んで万が一があると、非常に困ったことになる。
リディは魔力の都合でダメだし、リケは戦力的には外さざるを得ない。武器の補修は俺が出来てしまうしな……。
うん、と俺は頷いた。
「ひとまず俺とヘレンだけで行こう。他の皆は家で待機していてくれ。何かあったらアラシたちに頑張って貰うよ」
カミロの店に常駐している伝書竜の名前を出すと、俺たちの傍らにいたハヤテが小首を傾げ、リディに頭を撫でられていた。
そして、頷く家族の皆。特に異論はないようだ。まぁ、積極的に冒険に行くぞー! って感じの皆ではないからな。
いざ行くとなればワクワクはするのだが。
「ということでいいか?」
「俺に文句はないよ。いきなり大規模な探索はしないだろうし」
カミロは顎をさすりながら言った。
遺跡にはまず先遣隊を送り、そこに王族が加わることで王家の権利を主張するわけだな。
「よし、それじゃ早速行くか」
俺たちの準備は整っている。カミロの側も今話している間に準備が終わったようだ。
「おう」
カミロはそう言って自分の馬車に乗り込んだ。
今回御者はカミロ自身がするらしい。カミロが御者をするのを見るは、かなり前に都に行ったとき以来な気がするな。
俺とヘレンは森の入り口までは自分たちの竜車乗ることにして、いつも帰るときのように乗り込んだ。
そしてすぐに、馬車と竜車は連れだって、カミロの店を後にした。
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