もう一つ新しい武器

 俺は一旦サーミャを引き剥がして、ディアナとリディにも試し打ちをしてもらう。

 ディアナが矢を番え、弓を引き絞る。こちらの一般的な女性がどれくらいの膂力があるのかは知らないがヘレンほどじゃないにせよ中々に強いので、それに合わせた強さにしている。

 ディアナが矢を放つと、サーミャのときより若干速さはないが十分な速度で的に到達して突き刺さる。

「どうだ?」

「ちょうどいいわね。軽過ぎることも、重すぎることもないわ。」

「そうか、よかった。」

 ディアナのも特に調整は必要ではなさそうだ。

 最後にリディが同じように弓を構えた。彼女のが1番少ない力で引くことができる。

 矢を放つと、ディアなのよりもさらに遅いが、狙ったであろうところに突き刺さる。

「私のもちょうどいいですね。」

「ふむ。」

 結局の所、特に不具合は出なかったようである。彼女たち3人は準備を整えて、クルルを連れて狩りに出ていった。


 残った俺とリケは今日は好きなものを作る日になった。

「街への往復でも弓は使えるし、長距離を攻撃できる武器はもう少し増やしたほうがいいかもなぁ。」

「それはそうですね。」

 ニルダのときも相手がどういうやつか分かっているから良かったが、そうでなければなるべく遠距離から攻撃して打ち倒すなり、攻撃にひるんでいる間に逃げるなりするのが当たり前だし、そう言うときに使える武器を備えておくのは悪いことではない。


 そんなわけで、俺は新しく2つの道具を作ることにした。1つは投槍器、もう1つはそれで投げる投げ槍である。普通はどちらも木で作るが、チートとして有効なのは鍛冶屋の方なので、どちらも鋼で作ることにする。

 弓を作ったので、それでどれくらいチートが向上しているか確認する意味もある。


 いつもどおり火床で板金を熱して形を作っていく。先端が鉤型でその反対側は緩やかにカーブを描いた持ち手だ。鍛冶屋のチートを活かして作るが、多少効率が上がっているような気がする。

 やはり新しいものを作るほどにチートのレベルのようなものが上がるのだろうか。であれば、今日新しく作ることで明日の効率がまた上がるはずだ。もしそうなったなら、次からは売れる売れない、必要不要によらず新しいものを作ることも考えても良いかも知れない。


 投槍器はあまり長く太く作ると重くなりすぎるので、程々に留めておく。こいつを使うのはうちの人間だけだろうから、耐久性なんかは魔力を籠めて代用することにした。

 次は投げ槍本体だ。こっちは多少重くてもそれ自体が威力などに繋がるので、気にしないことにする。板金を細く薄く伸ばしてから丸め、余り厚みのない1mほどの細い鋼の筒を作る。

 その先に別の板金を熱して穂先を作って接続する。投げ槍なので刃はつけず、突き刺さるように四角錐の形に作った。投げ槍は硬さがいるので魔力を籠めるのはもちろん、焼入れと焼戻しもしておく。

 見た目には細い鉄パイプに槍の穂先がくっついているだけ、みたいな感じである。


 いずれの作業も本職である鍛冶屋のチートが有効であることもあるし、今回は簡単な作りのものなので、サーミャ達が狩りから戻ってくるより早くに完成してしまう。

「早速試すか……。」

 俺は魔力を籠める練習をしているリケを作業場に残して、試し打ち(試し投げ?)をするために、投槍器と投げ槍を持って外に出た。

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