第12集 エライ

「エライ」  




よいしょ、って座ったソファが思ってたよりも深くて天をあおいだ


眼球のない目でこっちをにらんでるマネキンのコートもう秋だねえ


何時間寝たか計算しているがよくわからない二時間がある


玉ねぎが十キロ入っている箱を持ち上げるときこころはひとつ


悪臭はするけど誰がすかしたかわからぬ電車の客、客!客。客?


コインだと思えばあまり痛くないすごく激しい雨のつぶつぶ


クイズ出しブーとかピンポン言っている中学生の男の背中


オレなんて寝っころがっていたいのにキャッチボールをしていてエライ


看護師のピンクの肩を見てすぎて午後の散歩の六割おわり


さびれてはいるけれど森襖店の中の親父の黒ぶちメガネ


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ちょっと短歌読んでいきませんか 工藤吉生(くどうよしお) @mk7911

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