恍惚の人

壊れていくものは美しい

形を遺さずに逝けるものは

刹那に切り取られるからこその

美しさを輝かせ


崩れていく記憶は尚更に

戻れない悔恨を滲ませて揺れ

手招きをする数多の波頭に似て

魂ごと罪を拐うのだ


ああ、なんと美しいのだろう


日々、私の中から消えていく

繋がれたはずのシナプスの回路

瞬くのを止めていく電気信号が

心すら食んでいく様は


幸福感に酔い痴れる

ようやく向かえる終末世界に

闇に呑まれ往く脳画像の先

膨張する宇宙カオスの彼方へ


私という、概念を脱ぎ捨て


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