episode ::標継ぎ
「奏多ーー!!お魚焼けたよ!」
「ありがとう、こっちも炊けたからご飯にしようか。」
朝、と言っても昼に近い時間。
のんびりと起きてきた僕達は継ぎ料理の最後の仕上げをして、テーブルへと並べていった。
「「いただきます」」
炭火で焼いた鯛を釜で炊いた米に混ぜた、鯛めし
野菜、根菜を沢山いれた汁物、
蒸したお肉や切り飾った野菜など沢山の料理を並べて、二人でつつく。
残った分は2,3日かけて食べきる予定だ。
「これ、片付け終わったら標継ぎしようよ!」
お腹もふくれはじめたころ、ハルが''ごちそうさまでした''と手を合わせてそう言った。
''そうだね''と返して僕も手を合わせた。
余った食材は冷蔵庫に詰め込む。
ハルがテーブルを拭いてくれるので、その間に洗い物を片付けた。
棚の上から鍵のついた箱をおろし、テーブルへと置く。
鍵を部屋から取ってきて箱を開けるとハルが楽しそうに箱のなかを覗きこむ。
中には2つの封筒
片方にはハルの、もう片方には僕の名前が
書いてある。
去年の送りの標だ。
ハルの名前の書いてある封筒をハルに渡し、僕のは僕の前に出す。
代わりに僕は別の封筒を一ついれ、再び箱を閉じた。
「奏多!奏多のは何て書いたの!!」
「見ていいよ。」
封筒を開けて、出した紙をハルに渡してあげる。
送りの標は年送りの間に来年の自分の目標と願い事をそれぞれ書く。
なので、今開けているのは一昨年の僕が去年の僕に当てた目標と願い事だ。
標継ぎは年の始めに去年の送りの標と今年の送りの標を取り替えてしまい、去年の送りの標を開いて去年の振り返りをし、今年の送りの標に対する今年の在り方を考えるための期間である。
開いた送りの標は7月まで保管をし、天へと還すのが習わしだ。
送りの標は書いてから1年は開くことも人に話すこともしない。
年の始めに封筒を開いて初めて、人に話してもよくなるのだ。
「奏多去年は送りの標達成できた?」
「うーん、半々かな。」
僕は去年の送りの標を眺め、1年を振り替える。
分野知識を増やすために色々と頑張っていたが、まだ半分ってところだ。
「ハルは?達成できた?」
「私は達成したよ!!美術分野の基礎履修値あがったもん!」
嬉しそうに送りの標を見せてくるハルに拍手を送り、願い事の部分に書いてある文字を見て思わず笑ってしまった。
「願い事、一緒だね。」
'本当だ!'と嬉しそうに笑うハルから封筒を2つとも預かる。これはこのまま無くさないように半年間保管しなくてはいけない。
去年の反省や今年の在り方に関しては急いで決めなくてはいけないわけでもないから、お互いあと9日のうちにやるだろう。
'さて、そろそろ出掛けようか'と促す。
この後は皆と合流して出掛ける約束をしている。
上着取ってくる!とハルが部屋へ戻っていく。
鍵をかけた箱を再び棚に戻し、その上に先程開けた2つの封筒を置く。
上着を羽織り、戻ってきたハルと家を出た。
神様に挨拶をして、皆でご飯を食べる予定だ。
家を出て二人で合流場所へと向かう。
''二人とも元気で過ごせますように''
去年の二人の願いは無事叶ったから、
今年の健康を神様にお願いしに行こう。
今年も皆が元気で過ごせますように。
episode ::標継ぎ
終末世界〜another world 〜 @senya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。終末世界〜another world 〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます