終末世界〜another world 〜

@senya

episode ::年送り







月日が一巡りして、年の終わりと始まりを告げる。




昔から特別な20日間とされたこの時期は大抵の人が家族、親族、友人、恋人と新たな年を迎える。






それは、この家でも例外ではない。







「ハル、送りの標は終わったの?」



年送りの10日間も9日が過ぎた。


手分けして行っていた家中の掃除は7日目には無事終了し、今年も残すところあと少しとなっていた。




年送りの10日と標継ぎ(しるしつぎ)の10日、昔からこの20日間は大切とされ、大抵の仕事は休みとなった。


今でこそロボットが全てを動かしてくれる20日間であるけれど、昔は備蓄とかが大変だったと聞く。



僕の仕事も例外ではなく、今年の終末電車は年送りの2週間前には最後の運行を終わらせた。





「出来てるよ。年休み終わったら学校に持ってく!」



僕も昔は宿題として学校に提出してたな。




昔から、それこそ僕の生まれる何百年も何千年も前からある''送りの標''



この年送りの期間に世界中の人が書いていることだろう。




僕も昨日書き終えたところだ。















「来年はどんな年にするか、楽しみだね。」




「来年も楽しい年がいい!!」







二人でのんびりと炬燵の中でコーヒーを飲みながら、今年あった事の思い出話をしていると、刻々と時間は終わりへと迫っていった。






つけっぱなしのテレビでは年終わりのカウントダウンが始まり、ハルが合わせるように''10,9,8...''とカウントしている。




そして、





「3!2!1!奏多、今年もよろしくお願いします!」





「はい、こちらこそ今年もよろしくお願いします。」







テンションは高いけど、すでに眠そうなハルと挨拶を交わした後、お互い部屋へと引き上げる。




明日の朝は昨日のうちに作った継ぎ料理を二人で食べて、標開きをしよう。






新しい年が、また始まる。







episode ::年送り

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