第三声 『平凡の終幕』

ガタタンゴトトン

ガタタンゴトトン


何時もの電車に揺られて学校に行く。

気の置けない悪友と、いつも通りの日々が過ぎていく──たとえその日常が今日で終わったとしても。











***


「みーぃ、くん! おっはぁ〜!」

「!」

「んん? 何々みーくん、風邪かぜでも引いたの? 何時ものツッコミがな〜いで〜すぞ〜??」


いきなり後ろから飛び付かれて勢いのままに地面にキスする。出来ればご勘弁願いたかった行為だ。災難過ぎる事この上ない。

飛び付いてきたのは悪友の一柱が一人、鏡澤きょうざわ 結稀ゆき

言動から分かる通り、かなりのアホである。此奴コイツ本当に本能で生きてんじゃないのか、と思う事が多々ある。…言わないけども。

俺は朝来る時に買ってきた大量のコピー用紙にペンを走らせる。字が汚いとか言うなよ、読めりゃ良いんだよ読めりゃ!


『何か声出ねぇんだよ、起きてから』

「はぁ? 話せないって事か〜??」

『おう。声出そうにも空気が抜けて音が出ねぇんだよ』

「んー……ストレスで声が出なくなる〜って前に氷刃ひめくんが言ってたね〜? ストレス?」

『んな訳ねぇだろ、即発散してるだろーが』

「あははだよねぇ?」


紙と声で会話しつつ何時もの部屋に行く。何時もの、といってもサークル用に与えられた部屋だけど。

部室には既に先客が居た。暇そうな人間が約二名ほど。


「お〜はよ、二人共〜」

「ん、はよ」

「あぁおはよ。なんだ海理、その野暮ったい紙束とペンは?」


窓際で端的に挨拶を返してきた眼鏡野郎は氷刃炕ひめがわ きら。俺のはオッドアイを隠す為の伊達メガネだが此奴のダークブルーフレームはだ。つまり此奴は本当に眼が悪くて眼鏡を掛けている、と。結稀に要らん知識を与えまくるのも此奴しか居ない。

そしてもう一人。俺の紙とペンにツッコミを入れてきたのはもろ体育会系とまではいかないものの、しっかりと筋肉がついた健康的な体躯をした悪友、小埜木おののぎ 幽真かずまだ。名前に反して存在感があり過ぎる。全くと言って良いほどかすかという感じではない。不思議な事にたまに見失う時もあるのだが。

暉が読んでた本をパタンと閉じて、俺ら二人に珈琲を淹れてくれる。暉の淹れる珈琲は俺を含めほかのどの三人が淹れても暉の出す美味しさには適わない。流石インテリ眼鏡なだけはある。


「それで? 海理は声が今朝から出ない、と」

「起きた時からってよ〜?」

『ストレスって訳じゃねぇと思うんだが…』

「んー……なんでだろうな??」

「…………海理、お前都市伝説知ってるだろう? ここ最近囁かれ出しただ」

「都市伝説???」

「海理が一週間前に持ってきたか」

『あぁ…「異能遣いの集まる異能探偵」の話か?』


『異能遣いの異能探偵』──とある科学者が昔言っていた言葉を体現するような者たちの事を言う。

人には秘された遺伝子がある。それを『Secret Gene』──通称・SGと呼ぶ。そのSGの中に『異能遺伝』と呼ばれるものがあり、『異能遣い』はその遺伝子が何らかの影響で発症した者をいう。

最近になってその遺伝子を発症した者の存在がぽつぽつ確認されだし、都市伝説になっているのだ。

依頼があれば殺人から浮気調査まで、荒事を主に扱う『異能探偵事務所』の事が──…。


『まさか…それ?』

「可能性は無くは無い。というだけだ、深く考えるな。異能遣いにはどうも『言霊遣い』もあるようだし条件に当て嵌る」

『えぇ…?』

「ぇ、何、みーくん異能遣いになるの???」










──・・・俺、『異能遣い』になるの、か?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一抹の残響、今を思ひて時を乞う 壱闇 噤 @Mikuni_Arisuin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ