報告①




翌日 午前 リーナの部屋



朝目覚めたリーナは、早速今日教えるための内容を予習していた。 一通り全てに目を通した後、過去問などと照らし合わせ大切な部分だけを厳選していく。

二時間しか家庭教師をする時間がないというのは結構大変で、教えるペースも計算しないと間に合わなかった。


―――・・・よし、これでいいかな。


今目の前にある作業が一段落すると、一度手を休ませ時刻を確認する。 そこでふと、昨日大和と対面した時のことを思い出した。 


―――・・・大和くん、接しやすかったな。

―――結構やんちゃそうに見えたけど、根は真面目で勉強もちゃんと集中してくれたし。


大和は一度教えたことをすぐに憶えてくれるため、かなり助かっていた。 理解も早く分からないところはその場で聞いてくれるし、スムーズに勉強が進んでいる。

だが部活が遅くまであってやはり疲れているのか、眠気と葛藤しているようにも見えた。


―――大和くん、眠そうだったよね・・・。

―――勉強を始める前に、15分間くらい仮眠の時間を設けようかな。

―――だけどそうすると、全体的にペースを速めていかないと・・・。


そのようなことを考えているうちに、結構時間が経っていることに気付く。 午後になり、新たな教科を憶えようと研究所内にある図書室へ向かった。



そして――――数十分後。 必要な参考書だけを借り、図書室から自分の部屋へ戻っている最中。 

この時に、タイミングがいいのか悪いのか――――ある方と、偶然出会ってしまった。


「・・・あれ、リーナ?」

「ッ・・・」


聞き慣れたその声が耳に届くと、一瞬でリーナの身体には緊張が走る。


―――タクミ、さん・・・。


できれば今、会いたくなかった。 悠のことであんなにもお世話になったというのに、結局いい結果は得られなかったため、対面することが気まずく感じる。

いくらロボットでも、後ろめたい気持ちは少なからず持っていた。


「こんな時間に珍しいね。 図書室行っていたの? 今日は休み?」


突然の鉢合わせに驚き身動きが取れずにいると、タクミの方からリーナのもとへ近付いてくる。 

今更ここから逃げることもできないため、彼の方へ身体の向きを変え違和感のないように答えていった。


「・・・はい、図書室へ行っていました。 タクミさんは、今日お休みなんですか?」

「うん。 久しぶりの休みだよ。 ・・・それで、リーナは? 何かあったの?」


平然を装うようにして対応していたが、どうやらそれは無駄だったようでいとも簡単に違和感を見破られてしまう。 

だからこれ以上隠していても意味がないと思い、ここは正直に結果だけを素直に報告することにした。


「・・・実は、担当が代わりまして」

「え、担当? 悠くんのことだよね?」


その言葉に気まずそうに小さく頷くと、タクミの表情は一瞬にして不安そうなものになる。


「一体どうして。 何かあったの?」

「私が・・・いけないんです。 ハルくんを、悲しませてしまったから・・・」


だがこれ以上先の言葉は言いにくく、次第に俯いていった。 だが彼は何かを悟ってくれたのか、リーナの話している内容を自分ですぐに汲み取り話を繋げてくれる。


「この前言っていた悠くんの、好きな人の話だね? ・・・よかったら、僕に話してくれないかな」


もう全てが終わってしまったため今更話しても何も変わらないのだが『それでもいい』と言ってきたため、場所を変えて事情を全て話すことにした。



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