新生活⑥




病室



その頃悠は、病室で大人しくテレビを見て過ごしていた。 そんな中メグミは一度時計の方へ目を向けると、悠に向かって口を開く。


「そろそろ10時ですね。 もう寝ますか?」

「・・・あぁ、もうこんな時間かぁ。 そうだね、そろそろ寝ようかな」

「分かりました」


そう言うと、メグミはその場に立ち手に持っている資料を片付け始める。 悠もそれにつられ、テレビを消しリモコンを元の場所に戻そうとした。


「そう言えば、今日一日過ごされてどうでしたか?」

「え?」


すると突然、そのようなことを尋ねてきたメグミ。 だが何故そんなことを聞いてきたのか分からず黙り込んでいると、こう付け足してくる。


「悠くんを担当する者が、急に変わったので。 何か不自由に感じたこととか、ありませんでしたか?」


―――あぁ・・・そういう意味か。

―――確かにメグミお姉さんは真面目で真っすぐで、僕のためになることをしてくれている。

―――でも・・・。


「ううん、特には。 過ごしやすかったよ」

「そうですか。 ならよかったです」


ここで一つ、本心でないことを何気なく口にするとベッドに戻った。 メグミもその答えを聞けて安心したのか、少し微笑んで再び近付いてくる。 

そして布団を、悠の肩まで丁寧にかけてくれた。


「では、おやすみなさい」

「うん、おやすみ。 今日一日、お疲れ様」

「・・・ありがとうございます、悠くん」


悠にとっては普段通りの言葉を言ったのだが、メグミはそれを聞いて驚いた表情を見せてきた。 だがすぐ優しい顔に戻り、小さく一礼をして自分のバッグを手に取る。

そしてそのまま、ドアの方へと歩いていった。 だが出る前にもう一つ、彼女がしたことがある。 それは――――病室を出る際、部屋の電気を消してくれたことだった。

この時ふと、今日の出来事で違和感を感じたことを思い出す。


―――・・・そう言えばメグミお姉さん、どうして僕の一日の過ごすスケジュールが分かっていたんだろう?

―――今だって、帰る前に電気を消してくれたし。


薄暗い部屋の中、頭を天井の方へ戻し考えた。 そんな時――――嫌なことが、突如頭を過る。


―――もしかして、監視カメラを設置して僕の生活を見ていたとか!?


そう思い辺りをキョロキョロと見渡すが、カメラのような光っているものは見つからなかったため心を落ち着かせた。


―――まさか、ね。

―――・・・でも、本当にどうしてだろう。

―――僕の生活に、合わせてくれているのは。

―――一体、どうやって知ったのかな・・・。


だが考えているうちに、どんどん意識が遠ざかっていく。


―――・・・まぁ・・・どうでも、いいや・・・。


そしていつの間にか、眠りに落ちていた。



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