相談①
数十分後 研究所
自分の帰るべきであるところまで着き、リーナは入り口の前に立つ。
そして認証して研究所の中へ一歩足を踏み入れると、右手には今外出しているロボットの名が並んだボードが設置してあった。 映し出されているものを、少しの間眺める。
そこに馴染みのあるタクミの名が書いてあると、少し不安そうな表情をした。
タクミがいれば彼に相談してもいいのだが、最近リーナは帰りが早くなかなか互いの時間が合わない。
だからやはり話せる相手は博士しかいないと思い、博士の部屋まで足を進めることにした。
博士の部屋の前
目的である場所まで着くと、扉の前で立ち一度深呼吸をする。 そして今回話す相談内容をいったん頭の中で整理してから、意を決して口を開いた。
「失礼します」
挨拶をすると同時に扉を開き、一歩部屋の中へ足を踏み入れる。 今日も博士は必死に机にしがみ付き、とても忙しそうにしていた。
だが彼が今何をやっているのか、リーナには分からない。 こんな大変な中いきなり割り込んで迷惑だと思いつつも、自分の気持ちを少しでも晴らすため覚悟をして言葉を発する。
「博士。 相談があります」
「・・・リーナか。 何だね」
手を休めずに視線だけをミラーへ向け、扉の前に立っているのはリーナだと把握した博士は作業しながらそう尋ねた。
その問いに対し、リーナは今まで起きた出来事を簡単に説明していく。 まず悠には、今好きな人がいるということ。 だけどその彼女は現在、余命三週間だということ。
そしてこのことは、リーナしか知っておらずまだ悠には伝えていないということ。
「来栖悠。 リーナが今担当している子だったな。 ・・・それで、リーナはどうしたいんだい?」
今もなお忙しそうにしている博士だが、ちゃんと相談内容を聞いていたようで優しくそう問いかけてきた。 その言葉を聞き、リーナは自分の思いをゆっくりと綴っていく。
「私は、ハルくんを悲しませたくありません。 ・・・でも、舞ちゃんのことを今伝えても伝えなくても、最終的にはハルくんを悲しませてしまうことになるんです。
だからせめてその気持ちを少しでも抑えるために、私はこの一週間ハルくんの心から舞ちゃんをちょっとでも離れさせるように、色々と試行錯誤してきました。
だけど・・・全て駄目で。 今でもハルくんは、毎日ずっと舞ちゃんのことを想っています。 このままだといけないもの分かっているし・・・。 もう、私はどうしたら・・・」
「やれやれ。 どうしてリーナには、人間のような複雑な感情が生まれてしまったのかね」
「・・・え?」
突然意味不明な言葉を言う博士に、リーナは顔を上げて彼の後ろ姿を見た。 博士は今作業を中断しており、椅子に深く腰をかけている。
すると彼は、いきなり独り言を言い始めた。 だがそれはリーナにも聞こえるような声の大きさのため、完全な独り言ではないのだろう。
「ロボットには予め、物事を簡単に考えるよう設定したはずなんだけどなぁ。 どこで間違ってしまったのだろうか。
いやでも、この研究所のことだからリーナに欠陥があるわけない。 とすると・・・リーナと悠くんの相性が、単に悪いのか・・・」
「・・・何が言いたいんですか」
あまりにも堂々と言葉を放っていく博士に少し恐怖心を覚えながらも、静かにそう尋ねた。 だけどこの先彼から聞かされる言葉は、予想していた通り――――悪いものだった。
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