なく雀

 お苑と響馬の二人が互いの気持ちを確かめ合っている頃。

 雀と愁太郎も同じ様に雨の下、正座した膝を向け合い、廃屋で互いの思った事を打ち明け合っていた。

 雀は響馬を、愁太郎はお苑を想っている事を、素直に自分の口から打ち明けたのである。二人は互いに心の何処かでやはり、と思っていたが、相手の言葉を聞いて、

『やはり自分達が許婚の仲にされるというのには無理があったのだ』

という諦めと驚きと奇妙なおかしさの入り混じった感情に包まれていた。




 元々両家の親達が突然決めた事であり、今と比較して時代の緊張感から来る精神的な年齢差はあれど

『青年と娘』

と言うにはまだあどけなさ過ぎる二人には、少々重荷過ぎたのかもしれない。


 そして二人はその決定事項に逆らうには、響馬同様、余りにも聞き分けが良過ぎたのである。




「愁太郎殿」

 互いに背中を向け合って体育座りしつつ、雀がおかしそうに愁太郎に囁いた。

「どうした、雀」

「何だか私達……周囲の期待に応えようとして背伸びばかりしていたのかもしれませんね」

 ははは、と愁太郎もおかしそうに笑った。

「であろうなあ。修行修行でまだまだ成長過程の俺達が、許婚だなどと言うのがどうかしていたのだ。

 我ながらままごともいい所だ。なあ、雀……」

 振り返りつつ、愁太郎は、口元を袖で覆い、彼の話を聞いて笑う彼女にそう、優しく囁いた。

……それから沈黙。

 自分の右の肩口にすがり付いて来た雀を、愁太郎は憂いを帯びた表情を浮かべたまま、右腕でそっと抱き寄せた。

……すすり泣く彼女が、桜色の唇を彼の耳元に寄せ、小声で言った。

「普通に話すにはかなり恥ずかしい話を……愁太郎殿にしたいです」

「……ああ、構わぬ」

「あらかじめ言いますけど、私は愁太郎殿の事が大嫌いな訳ではありません。そこをお話しておきたいのです」

「俺だってお前のいい所を沢山見て、だからこそ一緒にいるのだ。何時か言っておきたいと、前々から思っていたぞ?」

「なら……お互いのそこの所も打ち明けっこしましょうか?」

「そうするか。今くらいしか言えぬであろうしなあ」

「今は生きていますが、夜には死んでいてもおかしくありませんものね」

「相手は兄弟子と姉上同然のおなご。まず互いの手の内を知らないとは言え、相討ちが取れればいい方であろうよ」

「生きては……帰れませんね……?」

 視線を落としたまま、愁太郎は彼女を強く抱きしめ、言った。

「……ああ。

 しかし、天涯殿の仕込みのせいか、その先の見えない勝負に身を投じるのが、俺は楽しみでたまらぬ」

 彼の胸に頬を寄せ、気持ちとは裏腹に高鳴る胸の鼓動に、雀は頬を染め、瞳を潤ませつつ、息苦しさを感じながらも温かい気持ちに包まれていた。

「私もわくわくして胸がはち切れんばかりです」

「ははは。

……あーあ、何か催して来た」

「ふふふ、愁太郎殿ったら……」

 彼が自分の事を抱きすくめ、押し付けて来る下腹部に変化を感じた雀は、吹っ切れた表情を浮かべた。

「多分……これが最後です。

 抱いて下さいませ、愁太郎殿」




……熱い口付けを交わす二人。

 互いの舌を絡め合い、吸い、背に、腰に手を這わせる。

 雀の後ろ頭に手を添え、唇を重ねたまま、愁太郎は彼女を押し倒した。少し唇を離すと、名残惜しそうに彼女は軽く眉間にしわを寄せ、

「はあ……」

と、吐息を漏らした。桜色に染まる頬にそっと口付けし、その首筋を、襟をかき分けて吸う。

 雀の両耳を、愁太郎の両手がそっと覆うと、その体温が伝わり、彼女は切なげに身をよじり、うめいた。その雀の股間に己のものを押し当てつつ、愁太郎は左手を彼女の背に滑らせ、尻へと回す。

 修行の成果か、引き締まりつつも弾力を失わないその尻の肉を、彼は揉んだ。

 布越しに彼女の股間へ、リズムを付けながら自分のそれを当てたまま、突き上げ始める。次第に雀は彼の頭をそっと抱きすくめ、彼の腰に自分の両足を巻き付けつつ、息を荒げ始めた。

 顎を彼女の胸に当てない様に注意しつつも、瞳を閉じて喘ぐ雀の香りを愉しみながら、彼はその運動を続けつつ、彼女のおとがいを舐め回し、吸い続けた……。


 愁太郎が雀の忍び装束の前をそっと開くと、薄暗がりにも映える白い肌と、唇と同じ色の乳首が、形の良い乳房の先で可憐に揺れていた。

「……痛くはしないが、激しくするぞ?」

 彼女は頷き、舌先で自分の乳首をもてあそび始める彼を、切なげに見つめたままだ。しばしの間、彼の吐息と、乳首を舐め回す音と、雀の喘ぎが続いていたが、愁太郎が不意に熱烈に彼女の乳首に吸い付いた。

「あ、ああっ!」

 左手は彼女の尻を揉み、右腕は彼女の背に回して着物をどんどんずり下げながら、彼は雀の乳首を舌先でしごきながら、軽く噛み始めた。

「ん……んうっ……あ……」

 依然として布越しのままの股下からの愁太郎による突き上げが、彼女をどんどん昂ぶらせて行き、雀のほっそりとした手が、彼の頬を、耳を、頭を撫で回す。

「雀、軽くでいいから、身をよじって逃れようとしてみよ」

「?」

「一寸したお遊びよ」

「……し、愁太郎殿……」

 薄ぼんやりとした頭で理解した雀は微笑を浮かべた。

「ん、いや……」

 彼女は彼の腕に少し指を食い込ませると、腰に巻いていた足を解き、ブリッジで逃げようとした。愁太郎はあえて自分から足を彼女に絡ませるような事はせず、その反応を愉しんでいる。

 自分より一回り小柄な雀の尻に回した左手を、そのまま彼女の尻肉の下から秘部へと、くすぐる様に指を動かしつつ、移動させる。

「あうっ」

 横倒しになった二人。

 雀は彼の腕から逃れようと、身をよじり続けるが、既に腰までずり下ろされた着物越しに彼が背後から抱きつく形となり、その豊かな黒髪の下で震える両の乳房を右手で覆われ、背筋に唇を這わせ始めた愁太郎の、攻めるルートを変えて忍び寄る左手が彼女の股間へ到達すると、それはするりと膣へと侵入した。

「あふっ……あ、あ、いや……」

 ちゅぷ、くちゃっ、と肉と粘液をかき回す音がする。

「あん……っ! し、愁太郎殿……ひっく……」

 劣情が胸に込み上げて来て、目尻に涙を滲ませた雀の背から、腰へと愁太郎の唇は緩やかにS字の唾液のラインを描きつつ、滑る。尻の辺りまで辿り着くと、彼はそれに頬を当て、温度と弾力を愉しみ始めた。

 彼女の肌と秘部の匂いが鼻腔に漂う。

 手の角度を変えた彼の指の動きは早まり、遅くなりを繰り返しながら、彼女の中で動き続ける。

「はあっ、はあっ、あ、ああっ……」

 黒髪が頬を撫で、冷たい床に乳房を押し当てる形になった彼女は、頭が沸騰しそうなほど、血液循環が良くなって来た模様で、話があったはずだが、それは何処かへ吹き飛んだ様だ。


 右手の指で彼女の太ももの内側から外側へ、外側から内側へ、股下から膝へ、膝から股下へと蠢き、撫でさすり続けながら刺激を加え続けると、下半身への執拗な攻撃を受け続ける雀が許しを乞う様に喘ぎ、うめく。

「し、愁太郎殿……」

「雀……可愛いぞ。ここが俺の指を飲み込んで離さぬわ」

 そう、優しく囁くと、愁太郎は一度、勢い良く、彼女の中から指を蠢かせたまま引き抜いた。

「ああっ!」

……軽く果てたのか、雀は床に頬を当て、脱力した。しかし、そこへ再び愁太郎の指は侵入し、今度は激しく出し入れを繰り返し、動き続ける。

「あっ、あっ、あっあっあっ、し、愁太郎殿、駄目、あっ……駄目ぇ……っ!」

 そこで指を引き抜き、そのまま彼女を再び仰向けになる様に転がし、両足を下から抱きすくめる様に掴まえた彼は、今度は雀の股間に顔を埋め、舌での攻撃を始めた。

「ん……うむ……んんっ……」

「あ、ああ、ああああっ!」

 舌で散々クリトリスをこねくり回されながら、太ももの内側を舐め尽くされながら、彼の両肩に両足を載せる形になった。愁太郎はそのまま膝をついて、体を起こして行く。

「こ、こんなの、恥ずかしいです……っ」

 彼は顔を上げ、雀に微笑んだ。

「可愛い幼馴染がその様な声を上げるのを聞いて、やめる訳に行くものか。大丈夫、ちゃんと念入りに可愛がってあげるから。

 なあ、雀……」

 雀は困惑した表情を浮かべたが、すぐに彼の攻撃により、再び身をよじって声を上げ始めた。


「尻を上げたままでいてくれ、雀」

 後ろから彼女のそこへと侵入した愁太郎は、その感触に慣らす為に動かぬまま、雀にそう告げた。

……でなければ、彼女のそこの感触はあまりにも良過ぎて、すぐに果てそうだったからだ。

 雀自身は気付いていないが、これに耐えうるものはそうはいないのではないか、と、彼女と何度か身体を重ねた愁太郎は、備わったある程度の自信からそう思った。

 向こうの感度も抜群らしい。男だろうと女だろうとお構いなしに、ターゲットをたらし込むには十分な訓練を受けている雀だったが、そういうものがなくても十分に男が身を滅ぼす魅力が彼女には備わっていたのだ。

(生まれ付いての傾城よな)

 そう思いながら、ある意味で覚悟を決めて、彼は動き始めた。

「ん……あっ、あっ、は、あっ、ああっ」

 髪を解き、鍛え上げつつも細い印象を抱かせる白い背中を強張らせ、脱力させ、雀は真っ白な尻を、愁太郎の動きに合わせて振った。

 愁太郎からは角度の問題で見えなかったが、その表情は既に歳相応の可憐さとくノ一の技術としての淫蕩さが入り混じったものになっており、少女に性欲を抱く傾向のあるものならば、誰もが飛び付きそうな魔界の女にも等しい魔力を放っていた。

 そしてその唇からは、無意識でありながらも抱く男の脳髄を包み込み、思考を狂わせ、悶々とさせるに十分な喘ぎ声が、断続的にこぼれている。

 許婚である愁太郎は何度かその快楽を貪っていたが、何故か愛しい気持ちとは別の、醒めた部分は遂に消失するまでには至らなかった。

(それはそれ、お苑殿の魅力……いや、魔力じゃろうて)

 心の奥でそう思い、彼は苦笑した。


 動きを一旦止めた愁太郎は雀の体を支えながら横倒しにして右肩を床につけさせ、再び攻め立て始める。涙を流して女の悦びに打ち震える彼女にのしかかり、その右の乳房を揉みながら、首筋に吸い付く。

 普段はさらっとしていつつも、湿ると餅肌になる彼女の感触を愉しみながら、愁太郎は彼女の打ち明け話が始まるのを、今か今かと待ち構えていた……。

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