第一章 運命 〈第四部〉

放たれた弓矢が、空を裂きながら、敵めがけて飛んでいく。

「ドォーン!」

敵に命中した瞬間、爆発音がとどろく。

それを合図に、由菜、綾沙の両者ともに敵に向かって突っ込んでいく。

いくら高防御でも、さすがに750m先から突然狙われたのでは防げないようだ。


しかし、そう一筋縄ではいかない。


敵もお返しと言わんばかりに、火炎玉を連発し、由菜、綾沙の行く手を阻む。

しかしこれも作戦通り。


「多分ですが、近距離になるとあの火炎玉を撃ってきます。ですので、わざとそれを撃たせましょう。」

「でもどうやって?」

「私がきーさんの後ろについて、来た火炎玉を全部防げばいいんじゃないかなぁ~?」

「あ~確かに。由菜の槍だったら、あれ多分切れるよなぁ~。それに、後ろに花楓もいるし!」

「結構一か八かですね…。まぁーそれ以外作戦もないですもんね。それでやりましょう!」


由菜は飛んできた火炎玉をどんどんぶった切っていく。

「サンキュー由菜。フィニッシュ決めるぞぉー!」


火炎玉の撃ちすぎで、スタンしている敵に、綾沙が突っ込む。


「これでもくらえぇぇ!!」


まるで稲妻のように素早い動きで相手を切り裂いていく。


「最後だぁぁぁ!!」


最初の時に攻撃した腹部のあたりを再び十字に切り裂く。

敵は大きく傾きバランスを失う。


それを見ていた3人は勝利を確信した。


後方にいた花楓は由菜、綾沙と合流する。


「やったねぇ~」

「イェーイ!」

「ふぅ~。なんとかでしたね。」

3人は勝利の余韻に浸りながら敵を見上げる。


その時だった…


敵が突如、膨張し始めたのだ。

「なんか、デカくなってないか?」

「本当だ~。大きくなってる…」

「……ま、まさか、自爆するつもりなの!?」

「早く逃げるよ~」

3人は急いで後方へ向かったものの、膨張するスピードがあまりにも早すぎる。

(あれが爆発したら、私たちどころか、ここごと吹っ飛んじゃう。そんなことになったら、神奈川自体も消えてなくなっちゃう…)


花楓の弓、湯なの槍、綾沙の短剣。どれも到底、爆発を防ぐことはできない。


(も、もう、無理だ…)


3人とも終わったと思った…。


「ドッカァァーン」


でっかい爆発音が鳴り響く。


恐る恐る花楓は目を開ける。

(どうやらまだ生きているみたいだ)

「そうだ、ほっしーと綾沙は!?」

辺りを見回すと後ろのほうで手を振っている。

「お~い。こっちだよー!」綾沙、由菜、2人とも無事だったらしい。

「爆発はどうなったの?」


さっきまで敵がいたところを見るとすぐに答えがわかった…。


「敵の動きが止まってる…!?」


「な、なんで…!?」


3人は不思議そうに敵を見つめる。


すると、前方から人が来るのがわかった。

「敵かもしれないから、念のために、武器の準備をしておいて。」

花楓がそう言うと、2人とも武器を出す。

前方から来る人が近づくにつれて、次第にどのような感じかわかってきた。


人数は1人。年齢は、背丈的に青年くらい。服装は、深碧色のトレンチコートに、紺色のシャツと黒のズボン。顔はフードをかぶっているため、確認できない。背中には剣と思われるものを、背負っている。


青年は3人の前に到着すると、武器を持っている彼女たちに対して、両手を上げる。

「君たち、大丈夫だった?」青年の第一声は、3人のことを心配する言葉だった。

「特に怪我もなく、無事です。」

綾沙が返す。「そっか。それはよかった。もしかして、あれは君たちが…」

青年は綾沙、由菜と先ほどまでの戦いのこと。そして、あれが爆発した経緯について説明していた。

それを、傍らで見ている花楓は、なぜか青年にアフィニティーをどことなく感じたのだ。


(もしかして、どこか出会ったことが…)


「…そうか。この世界を守ってくれたんだね。ありがとう。僕もなぜかその救世主とか言うやつに選ばれちゃったのかな?」3人は少し楽しそうに話す。

その後、一段楽したところで、青年は帰ろうした。


その刹那。「ちょっと待ってください!」花楓が、青年を呼び止めたのだ。


「不躾な質問で、すみません。あなた、私のお兄様ですよね?」

唐突に繰り出された質問に、青年はおろか、綾沙と由菜も困惑した。

「何を言ってんだい。そうか、戦って、お兄さんのことが心配になってしまったのかい?」

「…そうですか。御失礼な質問な質問をしてしまい誠に申し訳ございません。」

「そうか。君はお兄さんのことが好きなんだね。」

「はい、そうですね。すみませんが、もうひとつだけ質問よろしいでしょうか?」

「あぁ、構わないよ。」

「ありがとうございます。では、そのフードを取っていただけませんか?ぜひお顔を拝見させていただきたいと思いまして…」

「それは、残念だが無理な質問だね。それで、質問は最後かい?それでは僕はここで失礼させてもらうよ。」

青年は先ほど向かった方向に、また歩き始めた。


しかし、先ほどよりも少し足早に…。


「あまり、やりたくないのですがね…。ここは、実力行使でいかせてもらいます。」

花楓は弓を青年めがけて構える。

「おい、花楓。どうしたんだよ急に。花楓らしくないんじゃないか?」

慌てて、留めに入ろうとした綾沙だが、1歩遅かった。


「問答無用!!」


弓から放たれた矢は青年の頭目掛け、一直線に飛ぶ。


矢は青年にみるみるうちに、近づいてゆき、最終的に青年に当たろかというところで、爆発した。

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終焉の地カナーン -濱清花楓編- あぺ~ろん @apeiron0420

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