確認

躯螺都幽冥牢彦(くらつ・ゆめろうひこ)

確認

 これもまた伺った話。

 ある特急に踏切から人が飛び込んだのだという。遺体は損壊も少なかったので野次馬からの現状確保の手間が少ない事に安堵しつつも、ひとつだけ見つからない部分があった。


……頭。

『遺体の肩口に髪の毛がこびり付いているのだから、切断されたのではないか? それならやはり近辺に転がっているはず』

と考えた彼らは、必死になって辺りを捜索した。

 しかしそれはついに見つからず、

「参ったなや」

と呟いていると、遺体の傍にいた職員から、発見したとの連絡が来た。

 少なくとも遺体周辺はくまなく捜したのにそこにいる職員は何処から見つけ出したのだろう?


「何処にあったのえ?」

 みんなの問いかけに、職員は遺体の肩口を指差した。別にそこは先ほどと変わりない状態だ。怪訝な顔をしていると、彼はこう告げた。

「首が垂直に陥没しとるのよ。肩口にあるこの毛はこびり付いたもんじゃねんだ、頭の上の方に生えてる毛だ」


 どうも犠牲者は踏切から飛び込んだ際に、特急車両の鼻先に如何なるタイミングか頭のてっぺんで頭突きをする形でぶつかり、吹き飛ばされたのだろう、と結論が出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

確認 躯螺都幽冥牢彦(くらつ・ゆめろうひこ) @routa6969

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ