閑話 ハロウィン回 ①


 本日はどんな日か。

 そんなものは誰でもわかる行事なのだろう。

 だがこの世界でその常識が通ずるのか。


 「ハロウィン、ここでもしっかりお菓子とりに来るかな?」


 そう、今日はハロウィンなのだ。

 本来は収穫祭の行事なのだが、現在で日本で行われているトリック・オア・トリートだ。


 「そうだ、お菓子作ろう」


 俺は思いついたようにベットから体を起こすと、キッチン担当であるギレーヌの部屋に向うことにした。


 「その前に紳士のたしなみをしてからではないとな」


 体を起こしたときに挨拶をしてきた息子に向ってそっと手をあてがった。






 木造りの廊下を歩き、近くにある俺の部屋と同じドアを前にする。

 ドアには読めはしないが丁寧な字で書かれているプレートが下げられており、一応はこれでギレーヌと書いてあるらしい。

 俺はそのドアを軽くノックをした。


 「……」


 「おう、俺だ」


 ノックから返ってくる声は一切とない。


 「お、おい?」


 未だに寝ているのか、声をかけてかいくらかしても、ドアが開くことおろか、返事が返ってくることもない。

 ここで何事か、とドアを開けてしまうのはどれだけ容易なことなのかは分かるが、その後のことも同じように容易に想像が付いてしまう。


 「音だけ、ここは音だけで満足するんでぇ」


 誰に入れるわけでもない理を言うと、俺はそっとドアに耳をめり込むほどに押し当てた。


 「ん……ぁ、ぁあっ……あっ……んぁっ」


 耳をドアに押し付けて注意して聞かなければ気が付かないほど小さな喘ぎ声と、そして淫らな水音が洩れ聞こえる。

 シーツが擦れる音や気持ちよさのあまり体が跳ねているのか、ベットの角などに当たっているのか、仕切りに強く当たる音が鳴る。


 「これって絶対オナってるだろ」


 「あっ……ああぁ……ああっ!」


 「……そろそろ終わるかな?」


 次第に大きくなっていくあえぎ声に見極めは付く。

 あえぎ声に加わるように大きくなってくる息に、その様子からはいつも見せるような余裕は一切と感じられず、酸素を求めるように間隔が短くなってくる呼吸に、不意にも俺は興奮を覚えてしまう。


 「あぁ……あぁぁ……あぁぁぁ……んっ、あっ……あああぁっ!」


 一段とでかい声が突然と響く。

 これには今まで小さな声で聞きなれていたせいで、この声には驚き、ドアに強く当たってしまった。


 「だ、誰ですかっ!?」


 「俺だよ。今入っても平気?」


 もちろん無理に決まっているのだろうが、とりあえず聞いてみる。


 「今は……すこし、待っていてぇ、ください」


 絶頂をしたばかりだからというせいなのか、短い言葉を発するだけでも何度か息次をしているせいで、変に淫らに聞こえてしまう。


 「うん、知ってた」


 軽い感じでいうと、ギレーヌはすこし怒ったように「もうっ」と言ってくる。

 ドアの前ですこし待っていると、服を着替えているのか、布が擦れる音が聞こえてくる。

 視界は封じられてはいないが、ドア越しで見えないため、妄想が自然と膨らんでしまう。


 「もういいですよ」


 妄想に耽っていたせいか、ギレーヌの着替えは終わったらしく、声が掛かった。


 「それじゃあ遠慮なく、失礼しまーす」


 許可を得た事を確認し、俺はドアを開ける。

 潜った先には、部屋着のような、寝巻きよりもしっかりしている、ホットパンツに、簡単なパーカーという、まるで誘惑をしてきているのではないかと思ってしまうような服でベットに座っていた。

 俺はその横に腰を下ろす。


 「あの、ニーキさん。さっきの、聞こえてしまいました?」


 前かがみで胸元が垂れそうなほどにこちらを覗き込みながら、どこか不安そうに聞いてくる。

 さっきの。なんのこと、と聞き返す事はしなくても、今のよそよそ下を見れば感じ取れるだろう。

 確証はなかったが、自慰行為を行っているのではないかと疑っていたが、先ほどの慌てように、今の不安そうな顔を見ていれば、おのずとそれは確信にはや代わりする。


 「当たり前じゃん。それも、とっても激しい行為」


 「う、うぅー」


 恥ずかしそうに顔を沈める。

 誰かの、女性の自慰行為をこの目で生で見たことはないが、きっとギレーヌの先ほどのは激しい分類に入るのだろう。

 それに気づいているのか、顔を真っ赤にしている。

 そんなギレーヌを見ていれば、なぜか自然と淡い興奮と、もっとこの可愛いギレーヌを見てみたいという欲求が出てくる。


 「ねぇ、今さっきまで何して高さ、自分の口で言ってみてよ」


 「えっ。そ、れは……着替え、そう! 着替えをしてたの!」


 未だに顔は赤いが、どこかドヤっとしている表情に、俺は目を細めて頷きを何度か繰り返す。

 そして。もう一度口を開いた。


 「じゃあその前は? 何してたのさ。俺はギレーヌの口から聞きたいかなー」


 「も、もう、ニーキさん……」


 もじもじと恥ずかしそうに太ももの間に手を入りこませる。

 俺の奴隷の中では皆を纏める約のお姉さん的存在であるが、今ではそんな様子は一切と見られず、今ではただの可愛らしい女の子のようだ。

 これ以上はまずいと、俺はそうそうと切り上げる。


 「もういいよ。意地悪してごめんね?」


 「……はい。本当にニーキさんは意地悪ですね」


 すこし残念そうな声で言ってくる。

 すこし追撃をしてみようかと思うが、今は時間はないと、頭をふり雑念を振り払う。


 「それで。今日はどのような件でいらしたのですか?」


 「ああ。なぁギレーヌ。ハロウィンって知っているか?」


 俺はこの世界に着てからハロウィンという言葉を聞いたこともないし、準備をしているのをみたこともないし、なんなら今日になるまでハロウィンに気づかなかったまである。

 だがそんな一抹な不安は杞憂に終わった。


 「はい。発祥は収穫祭。そして現代ではドリック・オア・トリートの愛称で慕われている行事となっておりますよ」


 「なら、こっちと一緒か」


 「一緒って?」


 「ん? あ、あぁ。いや、こっちの話しだ」


 「そうですか」


 俺がそういうと、どこか残念な顔をしてみせる。

 おいおい、小さなことでも俺をしりたいって……どんだけ俺のこと好きなんだよ。

 え? それは自惚れだって? いやいや、そんなまさかな事が起こるわけ無いでしょ。


 「ま、それんまら話は早いや。俺のお菓子を作らせてくれないか?」


 「お菓子、ですか……はい、材料は全然ありますので平気ですね!」


 すこし残念そうな顔をするが、俺はそれにはただ首を傾げることしかできないが、どうやらお菓子は作れるそうだ。

 やったぜ。






 俺は今、普段することもない料理以上の、お菓子の作成を行っている。

 作るものはありきたりに飴玉にドーナツだ。因みにドーナツは俺が食べたいだけだ。

 だが、なぜこんなことになっているのだろうか。


 「ほらニーキさん! 休んでないでもっとしっかりとこねてください」


 というまえに、なぜギレーヌはここまでの鬼教官なのだろうか。

 普段からこれなら、リーナたちはもちろん、レグリーがしっかりとするのは納得できる。


 ギレーヌは普段から料理などをするせいか、エプロンをいくつか常備をしているらしく、そのうちのあまり派手ではなく、比較的普通なもの一つを俺は拝借したが、ギレーヌはメインがピンクの色で、所々に可愛らしい動物や魔獣の刺繍が施されており、普段からしっかりしている分、ギャップというべきものか、どこか可愛く見えてしまう。


 「ニーキさん! 私に見とれてないで早く手を動かしてください! もう、終わったら好きなだけ私を見ていいです……いいえ、なんでも」


 「あるよねぇ。分かった、直ぐに終わらせるからさ、後でいっぱいギレーヌのこと、見せてね?」


 「は、はぃ……」


 消え入りそうな声で返事を返すギレーヌには、先ほどまでの鬼教官っぷりはなく、執拗に前髪をきにしたりなど、ただの女の子に戻っている。


 「ふふっ」


 俺はそんなギレーヌを端に、お菓子つくりを進めた。

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転生したんで幼女ハーレム目指したい(涙目) 朝田アーサー @shimoda192

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