第59話 完結

 死に掛けの讀賣にレグリーたちよりも出遅れてしまったリーナと、その気迫に気負いしてしまい、乗り込むのをためらってしまった幼女二人。

 讀賣の上に乗っかかっているレグリーたちを惜しそうに見ていた二人だが、一瞬その顔から生気が抜け、今度は、先程リーナがマロー二に向けていた乙女のような売れた顔色に変わった。

 そして、その二人が見つめる先には。苦しがっている讀賣がいた。

 「……なんで俺周りには恋をしてくれる幼女がいないんだよ」

 そんな苦言を吐く讀賣、。

 そっと体をずらしガヤガヤと叫んで自分の上に乗っかっているものとの隙間を作ると、視線をリーナたちのところへと動かす。

 そこには、近づくことも無ければ、ちいざかることもない、いつもどおりのリーナたちがいた。

 唯一違うとするならば、それはきっと顔色の事だけだろ。

 「顔が赤くなってる……マロー二のやつ、幼女を欲情させてどーすんだよ」

 ケルプののろいのようなものに掛けられている讀賣は、まさかその視線が自分に当てられているものではなどの期待などはせずに、自分の上に乗っかっている者のせいではと、悪態をついた。

 「ああ神様。転生だよ? 転生したんだよ?」

 転生しても、幼女が自分のことを好きになってくれるわけないかと呆れ、隙間の開いている場所から手を抜き出し、天井を仰ぐ。

 「まあ、仲良く出来たからそれでいいか」

 そういって力なくその腕を下へと下ろした。

 その時、何故か讀賣の頭の上にあった木の実の袋に手が当たる。

 「ん? なんだこれ?」

 興味深くその袋を持ち上げて中を覗くと、それが自分の身体能力を上げる木の実である事に気付いてはおらず、一つ取り出すと、それの匂いをかぎ始めた。

 「……食えそうだし、食ってみるか」

 そう言うと、その手に摘んだ木の実を口へと頬り投げた。

 もぐもぐと味を確かめるように噛み締めるが、なかなか味が出てこない。

 今現在、讀賣の近くにはいないリーナたちの顔色が、讀賣が木の実を噛むにつれ、もっと赤に染まっていく。

 そして食べ終わる頃には、既にその場から歩き出して、ベッドの足の真横まで足を進めていた。

 「あぁあ。さっかく転生したんだから幼女ハーレム目指したかったな」

 過去の自分との別れ、そして新しい自分を受け入れるために居はなったその一言は、自分の心を寂しがらせ、滲んでくる涙に腕を被せ、それを隠した。

 それを聞いていたリーナたちは、互いに顔を見合いニヤりと微笑むと、讀賣の耳のある部分まで足を進め、その場でしゃがみ、二人で合わせるように行きを吸い込むと、囁くように讀賣へと言った。

 

 「「大好きだよ、おにいちゃん」」


 「ッふぁ!?」

 突然と耳元で幼女に囁かれた讀賣は、顔を真っ赤にさせて二人の方を向いた。

 そこには筈か使用に顔を赤く染めて俯いているリーナと、赤く染めてはいるが、笑顔のルーネがいた。

 一体なんで、と考え出したとき、それを予感していたのか一つの音が鳴った。


 ――ピロリン。


 何度聞いて耳慣れた機械音。

 その音で現実に引き戻された讀賣は、手馴れた速度でメニュー画面を開いた。

 だが、そこにはいつもと変わらず、ステータス表記であり、讀賣が思っていたものもは何もなかった。

 「なんだったんだ?」

 そう小声で呟くと、先程表示したばかりメニュー画面を閉じようとした。

 「ん?」

 セレクト外、視界の端にあった、いつもはないメールの模様のマークに目が行った。

 それが何か、疑問を持った讀賣は、それを指の腹でつつくようにして触れる。

 すると、視界中央にある手紙が映し出された。


 『讀賣さんへ。

 端的に言いますと、私の部下が貴方に興味を持って接触をしたらしく、その際に多少の先頭があったらしいので、そのお詫びにと、私が掛けた幼女に惚れられにくくなるのろいを解ける木の実を送りました。

 その際に動作のチェック、といいますか、それに似たような機能点検をするために、阿多何一つ食べていた出していました。

 なのであと四つが残りになります。

 貴方が私にこれ以上不快なことをしなければ必要とはなりませんので、そのように。

 P.S 木の実を食べれば食べるほど、幼女に惚れられやすくなりますので。

 ケルプより』


 「まじっすか?」

 不意にも声を出してしまう讀賣。

 この世界ではこの画面を使っている人物がいないことから、これだけは絶対に死守しようとしていたもの。

 それを自分から墓穴を掘ってしまったと思ったが、回りの騒音で聞こえなかったらしく、リーナたちは顔をかしげているだけだ。

 可愛く首をかしげている二人の頭を讀賣が撫でようとするが、伸ばせるのは腕だけで、二人の頭に届く事はない。

 いい加減騒がしさや、重たさ、邪魔さなどでイラついて来ている讀賣は、すこし眉間にしわを寄せ、一気に行きを吸い込んだ。

 「お前らうるさいし邪魔だし重いんだよ!」

 彼女たちが放つ騒音よりも大きな声で叫ぶと、途端に彼女たちは暗い表情で項垂れながら讀賣の上を退く。

 可愛くもないおばちゃんがそんな行動をしていることに讀賣が目を背けると、またいっせいに騒音が始まった。

 「ギレーヌが初めに乗っかってたからおこられちゃったじゃん」

 「いいえ。レグリーが勢い欲くニーキ様の上にダイブをしたからです」

 「いんや、ご主人はそんなことじゃ怒らんよ。怒ったのは奴隷でもないマロー二がご主人の上に乗っかったからだよ」

 「え? それだったらおばあちゃんだってそうだし、重い体重で乗っかったからでしょ」

 「それならマロ、あんただって同じでしょ。それにおばちゃんはそこまで重くはないよ」

 騒音は責任転嫁だった。

 いつもの讀賣ならば、きっとこれも先ほどとは比べ物にならないほど険しい顔でいうのだろう。

 だが、今はそれとは真反対。爽快な笑顔を浮かべ、リーナたちの頭を撫でている。

 きっとその理由は、


 「ああ。幼女ハーレム。これが俺の望む異世界だ」


 改めて異世界に歓迎をされたような気がしたからだろう。

 それで浮かれて気付かなかった。いや、気付けなかった。

 ケルプがそんなことで呪いを外すわけがないと。

 その瞬間、この異世界に新たな生命が現れた。

 それと同じくして、讀賣はこういった。


 「転生したんで幼女ハーレム目指しますッ!」


 と。

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