師と弟子
躯螺都幽冥牢彦(くらつ・ゆめろうひこ)
第1話
ある寒村の、夏場の午前中であった。
数年前の大地震の範囲からは逃れているが、自治体そのものの懐具合もどうにかぼちぼち、という土地の、ある山の裾。かろうじて荒れてはいないが、割と吹き抜け具合が凄まじい寺に居を構える天狗がいた。
かつては多くの弟子を持っていたが、やがては彼らも社会に出る年齢になり、全てが自治体やそれに連なる立場に収まり、地元を守っている。天狗のいざという時のスポンサーでもあり、頼み事を持って来る相手でもあるので、共存関係にあった。
趣味はネットサーフィンである。彼も最早新聞やテレビは情報ソースとしか見ていない。ネットで数ヶ月前に話題になったネタを最新ニュースと謳っているのを見てからは目もくれない。深夜ドラマで、とある個人輸入商が出先で見つけた店で空腹を満たすドラマを眺めつつ、つまみをつつくのが秘かな楽しみ。
今の天狗の弟子はたった一人。小柄も小柄、ざんばらボブカットに凛々しくも愛らしい、フクロウのそれを思わせる眼差しがぎらりと光るも、全体的にデフォルメの雰囲気漂う、三頭身ほどの鴉天狗の子供が一人であった。
二人とも具体的な立場を示す装いでは時代的に面倒なので、フォーマルな場所ではスーツにサングラス。それ以外ではよほどの場合でもない限りは作務衣姿である。
本日も師である天狗が、弟子である鴉天狗の子供に、とくとくと講義をしていた。弟子がちみっちゃい手でどうにか持ち応えている、師が渡したなかなかの厚みの教科書には
『あたらしい天狗 ○○年度版』
とある。天狗が物理的、精神的に紡ぐあれこれを、彼自身がそれまでの経験から更に実戦向きにアレンジしたものについての座学と実技講習が主な授業内容であった。
「……という事で、わしには見えるが人には見えぬ者共と、人間の癖に神も仏もおらぬとばかりに不埒な振る舞いをする者共との危険度がそう変わらなくなりつつある。某実話怪談文庫本シリーズにその荒くれぶりが詳しく書いてあるのは、弟子よ、お前も現代に生きる、ナウいボヘミアンティーンエイジャー鴉天狗の端くれなら、心得ておろう」
弟子はこくりと頷いた。ナウいボヘミアンティーンエイジャーであるらしい。
「師よ、存じております。主に美女や日頃の鍛錬を欠かさぬ頑張り屋さん系女子が襲われておりました。実にけしからん話だと、私は思います」
「そこよ。何故そんな下賎の輩に将来有望なナオン達が破壊されねばならぬ。わしとしては怒りも数倍に膨れ上がるというものだ。
弟子よ、お前にこの前、図で説明したあれを食らわしてやるには良い相手だとは思わぬか?」
子供の前での喫煙に注意している天狗は、そう告げると眠気をすっきりさせるお手頃価格の擬似喫煙グッズを口の端にくわえた。
「恐れながら、師よ。確かにあれはかなり良い感じではないかと思いますが、天変地異レベルのそれを上手く駆使出来るとはいえど、人間の拝み屋稼業筋に知られると、ちと面倒ではないかと思われます。
ですので、どうかここはひとつ堪えて頂きたく存じます」
ふむ、と天狗は顎に手をやり、ややあって口を開いた。
「では、ちょっとだけ。プチ天変地異という事でどうかの」
「ちょっとも時間内に全部食べたら数万円もありませぬ。喩え一人に的を絞って的中させたとはいえ、ワクチンのない伝染病並みの破壊力は存分に広範囲を全滅させられるではありませんか。
と言いますか、嗚呼、我が師よ。あなた、明らかに生まれて来る時代を間違えておられますよね?
『どう考えても広範囲殲滅兵器が意思を持ってます。本当にありがとうございました』
というそれとしか思えませんのですが、その辺り、如何お考えですか、我が偉大なる師よ」
「おお、弟子よ、それを言ってくれるな。それを心得ているからこそ、選ばれた者にだけ技を教え、危険さを学ばせ、有事の際のみ、集う様にしておるのだ」
ああ、と思い出した様に鴉天狗の子供が頷く。
「『数年前の地震の時にはなかなか大活躍であった』
と、これも師よ、あなたから拝聴しております」
うむ、とどことなく自慢げな雰囲気を漂わせながら、天狗は頷いた。
「おやつの時間であったからな。それを邪魔する様な天変地異の闖入を、わしは許さぬ。断じて許さぬ」
「で、この地域にはかろうじて、大きくて太くて硬そうな黒光りしたものの闖入を阻んだ、という訳ですか」
「左様。いくらわしのかつての弟子達が日頃この土地のあれこれが大変な事にならぬ様に暗躍しているといえど、人を使うにはまずこれがかかるでな」
天狗は人差し指と親指で輪を作ってみせた。
「なるほど、確かにリアルマネーは必要ですね。それを稼いで来ても職歴に繋がらぬ事が頻発する昨今、せめてリアルマネーで己の糊口は凌がねば」
「そういう事じゃ。人に過剰なストレスを与えてはならぬ。ハードルを上げまくってはならぬのだ。人ではなくなってしまうからな」
「何かに覚醒して我らのライバルになる訳でもないのが嘆かわしい所ですね」
「そうよ。どいつもこいつも鉄砲玉でしかない。余人からすれば迷惑千万じゃ。
後、教育上よろしくない。警察はそういう事件が多過ぎて処理を大雑把極まるものにしているからのう。
『子供が真似をするからきっちり罰するべき』
という事を誰もやらぬ。
『これくらい誰でもやるでしょう』
というハードルが下がりまくりなのも社会不安の一端であるからして、そこまで言えば分かるな、弟子よ」
「恋愛がしにくくなります」
「それよ。一番忌々しく、ほんの数分会話するだけでもリアルマネーが見る間に消えて行く。いかん、実にいかん流れだ」
「師よ、もしや先月
『金が……』
と、絶望的なお顔で生活費に喘いでおられたというのの理由は……」
「いや、わしはやらないから。そういう所には行かないから。あくまで生活に消えただけだから!」
そっぽを向いて露骨に焦る師を眺めると、弟子は半眼になり、軽いため息をついてから告げた。
「……まあ、いいでしょう」
「いつもの事ながら嫌な間よな、弟子よ」
「『公私混同はしない』
という事で如何でしょう、師よ」
「なるほど、その心がけ、天晴れである。
弟子よ、これからも学び、鍛え、食べて寝て大きく羽ばたくが良い」
「ありがたきお言葉。時代に合わせた柔軟な発想も生き延びる知恵という事なのですね。
『部活中に水を飲んでも良い』
と、地元体育会系一同を説き伏せた時の師のお姿を時折思い出しますが、あれはとてもナウいと思います」
「む、そうか。地元のおなごには一定距離を置かれてしまうのがかなりわしとしては寂しい所なのだが」
そこへ声をかけた者がある。ふと声がする方にかけてある柱時計を見れば丁度お昼時であった。
「先生、お弟子さん。こんにちは。夢一杯です。
お昼をご用意させて頂きました」
それは、
『水が良いおかげか発育も素晴らしい』
とネット掲示板の地元美人自慢スレッドに頻繁に地名が挙がる中でも、上位にランキングしているこの土地の娘、当人の自覚はないといえどそこがまた魅力的と天狗も弟子も思っている、夢一杯のものであった。ご覧の通り、当て字も甚だしいのだが、親による命名だ。
「ロマンスか。この暑い中、ご苦労である。
中に入って涼むが良い」
「ロマンス殿、是非是非」
師弟揃って大歓迎の雰囲気に、ロマンスも麗かな微笑を浮かべた。
「恐れ入ります。それでは、お邪魔しますね」
「麦茶が冷えていたはずだ。弟子よ、それを出すが良い」
「心得ました、師よ。
ロマンス殿、お弁当、いつも楽しみにさせて頂いております。ささ、座布団を」
「ありがとうございます、お弟子さん」
三頭身の鴉天狗の正座してのお辞儀は本日も彼女の心を大層癒した様子で、
「しばしお待ち下さいませ」
と告げて立ち上がり、ひょこひょこと歩む背中の翼を時折ばたつかせながら台所へ向かう彼に、優しい視線が向けられる。
「弁当を頂戴する前に済ませたい話題だが、その後、お前の両親はどうかな?」
ロマンスははっとした表情を見せたが、打ち明けたい事もあったのか、少し頬を上気させ、喋り出した。
「先生のおかげで、私、生まれて初めて、両親に興味を持てそうです!」
『興味』。天狗は不穏なものを感じたが、結末を知れば彼女が人として成長した、と見る事も出来る。
天狗はあえて何も問わなかった。
「それは何より。これからも遠慮せず、ちょっとした事でも良いから話に来るが良い。何時だろうと構わぬでな」
「ありがとうございます!」
「麦茶をお持ちしました。話が聞こえましたが、ロマンス殿のおうちに良い流れが来た様子ですね」
「お弟子さん! お弟子さんも聞いて下さいな」
「ええ、是非」
麦茶を横に三人でちゃぶ台を囲みながら、弁当に舌鼓を打ちつつ、ロマンスの話に、時に唸り、時に頷く天狗と鴉天狗の子供であった。
ロマンスはそろそろ高校を卒業する年の頃。この土地の出身だ。
時代に合わせたネーミングセンスの両親を持つが、彼らもまごう事なく地元出身である。ロマンスはその両親が授けた名前のせいで幼少の頃からいじめられる事が多かった。様々な街から人が流れ込んで来る為、因習の影響が軽減される高校へ入学しても、よそ者呼ばわりする者が少なくなく、幾度か派手な自殺未遂をしかけた事がある。
それをネットの地域BBSでたまたま見ていたのが天狗であった。不穏かつ陰湿な沙汰を見咎めた彼は、たちまち学校方面を統括するかつての弟子にアポを取った。慌てた相手によって、田舎道に明らかに見合わない高級車の手配がされかけたが、これも天狗の怒りゲージを上昇させた。
『かえって事故るではないか。えらくなったら自分の地元の道筋も忘れ果てたか、たわけめ。
タクシーで良い』
と一蹴、代金は相手持ちで、弟子と共に問題の学校へ乗り込んだのだ。ダークスーツにサングラスという、宇宙人目撃事件担当のブラックメン風の佇まいの二人。弟子は内心、
『作務衣に羽織りを引っ掛けていけば良かったのではないか』
と思っていたが、あえて師の対処方法を学ぶ事にしたので黙っていた。
話を聞かされていた校長と担任は彼を侮ってしまい、ロマンスの両親、いじめに加担していた者達それぞれまでが校内の別室で待機していたのだが、そこで天狗は堪忍袋の緒が切れた。
十人ほどのその愚か者達だけがそれからありとあらゆる不幸に見舞われた。
朝は姿の見えぬ獣の臭いを発する何かに寝巻きの袖や裾ごと手足を噛まれ、ぎりぎり打撲で済む程度の威力で壁に叩き付けられて起床。
食事は三食、彼らの物だけが砂の味がし、それを告げられた妻や外食先の店員らを不機嫌にさせる。
通勤・通学の際には必ず、地元でも特に有名な曰く付きの場所をストライクで自家用車や自転車で破壊してしまい、結果として、まず元の色を覆い隠す様に真っ赤な手の跡が叩き付けられた。拭き取った傍から復元する。車は雨天にはワイパーで拭き取れるが、これも同じ様に復元する。
次に、不幸な亡くなり方をした故人らが事故や事件当時の姿のままで、自転車は籠やサドルに纏わり付き、車は運転席以外の全ての席を埋め尽くした。引きつった顔で現状を必死に無視しようとする彼らに縋り付き、怨嗟に満ちた呪詛を吐く。
故障も増え、修理に出しても、どこにでも必ず視える者はいるので、最初の店で気付かれ、
『うちではちょっと……』
と、青ざめた顔の担当に言われた。問い詰めると、全ての作業員らが露骨に敬遠しているのだという。
一応の証拠として修理前の破損部分の細部を撮影した物が提示され、店の多くの者達には見えないあれこれが、日頃霊感などには縁がないと自覚している者が多い彼らにも、その時、それぞれの場ではっきりと見えた。
眠たげな瞳をこちらに向けている、半壊し、真っ赤な肉片をこびり付かせた美貌が車輪の内側に挟まっており、ボンネット内は溢れんばかりに押し込められた脈動する臓腑。それと車の各部位が同化していた。潰れた顔、破裂した顔もその中に見える。無念さを示す表情と、人生が終了した事を理解出来ていない素の表情が入り乱れている。撮影の構図が変わる度にそれは侵食を続けているのが分かった。地続きという事なのか、彼らから周辺の人物が聞いたのを、改めて天狗のかつての弟子達がまとめた所では、ほぼ共通していたらしい。
車を見やると、写真を見る前には破損車両だっただけのそれが写真のそれと入れ替わる様にそこにあった。時折、臓腑を押し破って湯気を上げながら、どこか欠損した手足が彼らを求めて手を伸ばして来る。そしてその度に顔達が苦悶に絶叫するのだ。
『ううう……』
『いだいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!』
『何で……放っておいてくれないの……許ざだい……』
その間も作業道具や店内の設備が不意に故障する為、彼らはそれぞれが各店の店員総出で体よく追い出された。
相次ぐ事故に愉快犯の容疑、そしてこの時期、神社仏閣への放火や盗難が相次いでいたので、そちらとの関係性までを警察から疑われ、地元新聞はこれを大きく取り上げた。ネットでは既に彼らの職場や出身のあれこれや住所氏名までが特定されていた。
前以て注意していたにもかかわらず、面子を潰された天狗のかつての弟子は、部下からのメールで状況確認をするのみで、形式上のアドバイスしかしなかった。
栄養分にはなっていたが砂しか食べていない気分の彼らをノイローゼにさせるまで、さほど時間はかからなかった。何しろ、彼らだけがその状態にあり、周りの者には彼らがある日唐突におかしくなった様にしか見えないのだ。
その有り様たるや、地元の病院でも塩を撒いて追い返すレベルである。県立病院ですら経営が危ういご時世なのだ。今の患者を見るだけでも、元から人数不足の医師らの方が先にへたばる。
天狗らの地元の閉鎖性については前述の通りで、かつての弟子達がどうにか態勢を立て直すべく地域に他の土地との交流を呼びかけているが、未だに効果は微妙な所だった。
そして、どこで聞き付けたのか、その十人ほどが天狗達に助けを求めるべくアポを取り、日程が決まり、
『これからお伺いします』
と、朝一番の電話を寄越したきり、彼らは行方不明となってしまった。
ロマンスはこうして、彼女に暗い顔をさせていた全ての連中から、解放されたのである。
幼少期から進行中だった抑圧の反動から発狂する可能性を心配し、様子を見に行っていた天狗と弟子だったが、何度目かにどうやら彼女の信頼を得られた様子で、付き合いが今日に至っている。
行方不明になった連中に関しては、山狩りまでが行われたが、遂に見つからなかった。
「おかしなものよ。山の神の怒りを買ったとしても、普通ならその躯か、使い物にならなくなった姿でくらいは見つかるものじゃ。それもない。
わしのかつての弟子達、そして地域の密接した情報網にも引っかからないとなると、排他性の鉄壁さから、不心得者がその弟子達、もしくはあ奴らの部下にいる可能性がある。そこが気になる所じゃの」
食べ終えた弁当にふたをして、
『ご馳走様』
と合掌すると、天狗はそう告げた。同じ様にして弟子が訊ねる。
「師よ、
『祟りの生贄として程好い状態に熟成された彼らを欲しがる』
という者が村に?」
「うむ、弟子よ、そしてロマンスよ。研究に溺れ過ぎて、禁忌を破る者は何処にでもおる。そして、外面は幾らでも取り繕えるのが、閉鎖的な社会の弱点よ。更に力のある者なら下を黙らせる事が出来る。その効果として、灯台下暗し、自分達の隣で禁忌は破られるものじゃ。
またけしからん事が発生しておらねば良いが」
「ロマンス殿は意中の相手がおられましたね。いざという時にはここへ是非避難して来られるがよろしいかと。師ならば大概の事からはお守り下さるはずです」
「ええ……それで新たにご相談が」
表情を曇らせたロマンスに、天狗と弟子の表情にもただならぬ雰囲気が漂った。
「ふむ、村の衆がわしに伏せておる事がある様子じゃな。ネットの掲示板でもこの辺の事情を囁き合うスレで気になる事があった。何かを告げようとしてた書き込みが削除されておったのよ」
弟子はちみっちゃい拳を顎に当て、得心した様に呟いた。
「書き込みをした相手を特定した者からのもの、でしょうね」
「だろうな。
『人間関係が密接し過ぎている所では、ネットでの発信は逆に自爆行為になってしまうのかも』
と思っていたが、さあ、明かしてみるが良い」
ロマンスが言うには、
『村のあちこちで昼から夕暮れ時に、化物としか呼び様のない、人体の集合体が目撃されているのだ』
との事だった。見かけた者は数日中に、村内で確実に変死している。断片的な記録が村長の元へ集められ、注意が呼びかけられていた。
「私はまだそれを目撃していないんです。だから無事でいられるんですけれど、その事で私と彼が疑いをかけられていて……」
「原因がお主らにあるのでは、という事かな?」
「……みたいです。私はもう一人ですけれど、彼の家が村八分になるかもしれなくて。
それで彼との仲もぎくしゃくしているんです」
天狗は躊躇う事無く、訊ねた。
「状況把握の為に問うが、子作りはしたのか?」
「……はい。
『卒業と同時に結婚しよう』
と言ってくれて、彼のご両親も本当に喜んでくれたんですけれど……おなかに私達の子が」
涙ぐんでいるロマンスの総身から、披露と憔悴が伺えた。
「心得た。
……やれやれ、過疎化するのも当然よな。若い二人を祝ってやれぬ土地など吹き飛んでしまえば良いわ!」
そう言い捨てて、天狗は麦茶を煽った。
「して、師よ、我々はどうしましょう?」
「ロマンスとその彼氏一家をそれから遠ざける事は出来よう。場合によっては生贄が必要になる。野山の生き物を贄とすれば、彼らや山の神から相応の罰があるが、犠牲者が出ているのに沙汰が止まぬとあれば、術者がおるのはまず、間違いなかろうて。
狙いはロマンスと彼氏、お前達であろうな」
「やっかみなら、心当たりはあります。以前のいじめの一件以来、友達も出来て分かりやすいので……」
目を伏せるロマンス。薄情な様だが、どこであっても地域で実権を握っている者の意に沿わなければ、家ごと潰される事も珍しくはない。いじめの首謀者どころかグループを丸ごと消した事で、一息つける人の割合が高かった様子だ。
ひとつ息をついて、天狗は穏やかな眼差しで彼女に問うた。
「名前は分かるかな?」
「はい」
「ならばそ奴らを生贄として術を紡ぎ、術者にぶつけてくれるわ。天の狗に人が挑むとはまことにけしからん。
『我らは祟り神の尖兵も兼ねておるのだ』
という事を、その身を以て思い知らせてくれよう。
弟子よ、お前はわしの術を邪魔する者が割り込んで来ぬ様に結界の外で目くらましをしてくれやい。式神を飛ばして来るやもしれぬが、お主がわしの元に来るまでに体得しているあれこれも、只者ではないと見受ける。
わしから学んだ事やわしが背後にいる事を頼りに、派手にやるが良い」
「師よ、心得ました」
弟子はいつもの様に微笑した。
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