第7話

「聞けっ! 愚民どもよ。我は偉大なる大魔王様にお仕えする者、バフォメットのガッゼルである」

 未だ俺とエヴァがいく宛もなくただ逃げ惑っている最中、突如として黒雲からダンディーな声が聞こえた。

「またこの辺りに勇者候補が湧いたと言うことが分かったのだが知っているものはいないか? いつものことでもう聞きあきただろうが何度でも言う、隠したところで無駄だ、我には人の心を読み取ることができる。正直に言えば我々はこれ以上の危害を加えない」

 暗闇の中に異様な姿をし低く渋い声で話をしていている姿は俺に強烈なインパクトを与えていた。これが厨二心かと厨二の素晴らしさに実感しもっとこの厨二を感じたいと思い、つい立ち止まって聞き惚れてしまっていた。

「かっけぇ……」

 あまりのかっこよさに周りの人に聞こえるか聞こえないかと言うぐらい小さな声で口から発すると――。

「えっ? もしかしてあの悪魔に対して言った? まさかそんなことナオトが言うはずないよね。ね?」

 いつの間にかエヴァが俺に顔エヴァの顔を近づけて妙な声で言ってきた。

「えっ、あっ、うん。そっそんなこと言ったかな? 気のせいじゃない?」

「そうよね! ゴメンね、変なこと聞いて。さあ、ちゃちゃっと残りの小物モンスターを屠っちゃって、あのバフォメットを嬲り殺してやりましょう!」

 ……こっこえぇぇぇぇ!! こいつめっちゃこえぇぇぇぇ。

 することなすことだけが異常であとはただの美少女女神だと思っていたのに、機嫌を損ねるとめっちゃ怖いじゃん!

 あーあの目、マジで夢に出てきそう……。


「またか、また勇者候補を守ろうとするのか。あいつらは凶器を片手に勝手に人に家に堂々と入りこみ金品を盗みとる強盗と同類なんだぞ。いくら伝説で1人の勇者がこの世を平和をもたらすと言っても所詮伝説は伝説。そろそろ現実を見たほうがいいと思うのだが。まあ良い。今日のところは帰らせてもらう。それといつもながらすまなかったな。今回も派手に街を破壊してしまった。もとの状態に戻すからその場から動かないように」

 あれっ? 悪魔なのにめちゃくちゃ優しいじゃん! といっても壊したものをもと通りにすることは当たり前のことか。

「『リワインド』!」

 その言葉をバフォメットが発した瞬間、先程まで俺の周りに転がっていた瓦礫は少し宙に浮き元あった壁や屋根にくっつき、火の粉が舞っていた大通りは

何事もなかったかの様に元の状態に戻っていた。

「これで元通りだ、金はまた後日おくらせてもらう。ではこの辺で失礼することにしよう。常世の闇に祝福を……!」

 ハァー……。しっかりやったことに対して謝り元に戻した上に金まで渡すのか。もしかしたらこの世界の魔族って案外優しかったりしてな! ま、んなことないよな。HAHAHAHA。

 と先程のバフォメットに感心していると――!


「待ちなさい! そこのヤギ骨オバケ! 今からお前をぶっ殺してやるから覚悟しなさい!」

 あーあ、せっかく一件落着って思ったのになぁー。

 どうか死にませんように……!











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3000年の時が経っても君を忘れない 柏木おうが @dunkelheit

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