第11話 ドタバタ研究所
「捜査令状取って正式にIT研究所に入ったはいいものの……」
「どうして閉じ込められなきゃならんのですかねぇ」
呆然とため息を吐く春子と八島。そして捜査員たち。
勇んで捜査に入ったはいいものの、入った途端に入り口の電子ロックが掛かり外に出られなくなった。
外で建物を取り囲んでいるマスコミも、まさか中に捜査員たちが閉じ込められているなんて思ってもいないだろう。
バタバタ駆け回るIT研究所職員も事態の把握ができていないのか、困惑の怒声が上がっている。中もてんやわんやだ。
「管理者権限でIDがロックされています! パソコンが起動しません」
「電子鍵のパスワードが変更されてる?! 部屋から出れないぞ!」
「おいおい、管理者自身がネットワークにログインできないのに、どうしろっていうんだ」
「そもそも管理者が変更されてるみたいですよ!」
「誰に!?」
「アスタ、リスク? ……そんなアカウント名の人いましたっけ?」
コンソールを操作しながら首をかしげる若い研究員。
春子と八島はその言葉を聞き逃さなかった。
「今、アスタリスクって言いました?!」
「うわっ、い、言いましたけど……。あ、ちょ、ハックされた!」
研究員が春子たちの勢いにのまれて、つい画面から目を離したところ恐ろしいことが起こった。ネットワークがハッキングされたのだ。
ネットワークに接続されたパソコンからエラー音が鳴り響く。
「どこからだ!」
「待って解析中! ……ここです! 研究所内からハッキングした模様」
もうカオスだった。どうやら研究所職員のアスタリスクが研究所のネットワークをハックしたらしい。なんでそんなこと……。
「一体誰なんだよアスタリスクって!」
年かさのひげ研究員が吠える。
「それを俺たちが調べに来たんですー」と八島は言ったが、殺気立っている研究所員たちからは黙殺された。
もっとヤバイ事態が起こりつつあったので、それどころではなかったのだ。
「大変です! アスタリスクを名乗るアカウントから、『飛行機を研究所に突っ込ませる』ってメッセが入りました!」
「嘘だろ?! どうやってそんなことができるんだよ!」
「あー、去年納入した航空機のオートパイロットシステム、あれにウィルスでも仕組んだとか……」
気の弱そうな研究員がおとなしそうな口調で恐ろしいことを言う。
ひげの研究員が頭を掻きむしった。
「最悪だ! 俺たちは閉じ込められてるんだぞ。逃げ場がないじゃないか?!」
ただ慌てるだけの研究員に八島が怒鳴った。
「いいから落ち着けぃ! 全研究員をここに並べろ。ここにアスタリスクを見つけられる奴がいるから、アスタリスクを発見次第、墜落命令を解除させればいい!」
そう言って、がっしりと春子の肩を掴み、ずいっと押し出す八島。
「ど、どうもアスタリスク発見機です……」
は、はろー、と片手をちょっとあげてアメリカンに挨拶する春子。勿論渾身のジョークは即座に流された。
やっぱりそれどころじゃなかったからだ!
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