閑話 宝石の城 テイク2 #R

[#Rレオン視点] IFストーリー


 俺は扉を開けた。他の扉の中で一番豪華なやつ。部屋は凄く広くて、これぞ貴族の部屋って感じがする。天蓋付きベッドなんてものもある。お姫様でも暮らしていそうだ。

 ……けど、途中である者に釘付けになった。


 メアリが──、裸──、なんだけど…………。


「あれ? レオン」

「いや、メアリ……」


 メアリは下半身は完全に何も着ていない。けど、ちょっと視線をずらして、俺は上半身から目が離せなくなった。

 上はただの裸よりエロい。

 何がエロいって、鱗がところどころげているせいで、まるで破れたビキニみたいなんだ。なにこれ。これなんてエロゲ? 


 しかもメアリは俺が見てることを全く気にしてない。いやここはなんかあるだろ。テンプレのほら、「なに入ってきてんのよー!」って怒りながらその辺の枕とか投げるやつ!

 けどいくら待ってもメアリは何もしてこない。きょとんとした顔で俺のことを見ている。あの顔かわいいじゃん……ってそうじゃなくて。


 なんかしてくれ。

 早く俺に罵声を浴びせてくれ。

 じゃないと視線が外れない……。いや本気で鼻血でも出てきそう。てか俺のアレがやばい。

 そりゃそうなるよな?! 好きな女の子じゃなくてもかわいい女の子が生で着替えてて、しかも上があんなエロイことになってたらさ、そりゃ、そうだよな?!



「部屋に入らないの?」


 なるほど、そうきたか。


「は、はっ、入る……」


 ちょっとどもったけど即答だな、うん。

 俺は後ろ手でドアを閉める。メアリは何やら服を持っているみたいだ。


 ゴクリと唾を飲んで、メアリに近付いた。


「その……なんで、裸、なんだ……」

「着替えていたからよ」


 ア、ハイ。たしかにそうだよな。おう、なにも間違ってない。


「どうかしたの?」

「ふ、服を……着ろ……」


 よく言った! よく言ったぞ俺! ここで襲ったりしないでちゃんと服を着るように勧めた俺、マジ紳士。

 本当だったら後ろを向いて見ないようにするんだろうけど、さすがにそこまでは無理だった。俺の煩悩がそうさせてくれない。

 メアリが! メアリがちょっと怒ってくれたら、枕を投げつけてくれたら! ちゃんと後ろを向くのに!

 メアリの常識知らずバンザーイ! いや違う。万歳バンザイじゃねえ。万歳じゃないだろ。


 ていうかあの鱗はどうしたんだよ……。なんであんなエロいことになっている? そっか、ボロボロになったんだっけ。ラムズの魔法で倒れたんだったもんな。

 たしかにラムズの言う通り鱗は綺麗だ。うん。でも……さ。ちょっと目のやり場に困るよ?! と言いながら見てるんだけど。

 胸には乳首はないらしい。ありそうな場所の鱗が剥げているけど、見えているのは白い肌だ。肌の色が他よりも白い気がする。元は鱗で隠れていたからかな。

 

「なんでそんなに見ているの? レオンもわたしの鱗が好きなの?」


 やべえバレた。


「はっ、いや、違う。とにかく着ろ!」

「変なの。分かったわよ」


 メアリは

 マジで神様感謝します。こんなかわいい女の子の生着替えを誰にも邪魔されずに見ることができるなんて、こんなの、あるんだ……。

 異世界転移ってやっぱり最高だな? な?


 ラムズにバレたら張り倒されそう。いや、けどどうなんだろ。ラムズもラムズで何も気にしないかもしれないな。別にメアリの鱗を独り占めしてるわけじゃないんだろうし。


 そのあとメアリは靴下を履いた。超エロい。

 ベッドに座って靴下を履いているから、パンツがものすごい見える。いや元々たしかに見えてるんだけどさ、こう、角度っていうの? 皺とか? どこの皺とは言わないけど。

 靴下を履く瞬間ってこんなにエロいんだ?


 メアリが怪訝そうな顔で見ている。その顔も最高だな……。でも罵声を浴びせてこないのが違和感。いやでも「出ていけ!」って言われたら、俺のこの至福の時間が終わっちゃうわけだから、うん。



 だが俺は、メアリに服を着ろと言ったのを後悔し始めていた。

 メアリにこんな服渡したの誰?

 ほんと誰?

 ハイタッチしていい?


 メアリが着ていたのは、恐らくネグリジェってやつだ。ブラジャーはないけど、パンツは真っ白でレースが付いている。上はタンクトップで、胸元に白いリボンと、キラキラした宝石みたいなものがあしらわれている。そして服の生地は透け透けだ。つまりメアリの鱗の剥げている胸が丸見えってこと。

 パンツも丸見え。ついでに履いているのはニーハイ。白ニーハイ。ガーターベルト付き。


 いや、これなに? 俺へのご褒美……?



「この格好、似合ってないかな? スースーするんだけど。着る意味あるのかしら」


 あるある。めっちゃあるよ。──俺にとっては。

 つか誰だよ! こんなの渡したの! マジで! メアリの常識がもっと崩れる。いいぞもっとやれ。いやダメだ。ダメ。さすがに可哀想だ。


「メアリ……、その服誰が持ってきたんだ?」

「ラムズよ」

「はあ?! あの人変態なのか? なんでメアリにこんなの着せてるんだよ……」

「こんなの? これがダメなの?」

「い、いや……」


 真実を言っていいんだろうか。もしここでそれを伝えたら、メアリのこの格好は一生拝めなくなる。


 ただでさえランジェリーなんてかわいいのに、それが白色だし、胸は破れたブラジャーみたいになってるのが透けてるし。ラムズなに考えてんだ? 変態すぎないか? メアリにどんな格好させようとしてんだよ。こんなの見たら襲いたくなるだろ。

 俺が襲ってないのはひとえに童貞だからだ。まだヤったことがない。だから勇気がいるってわけ。


 けどラムズはなんだ? あいつED? あ、それとも付いてない?

 俺は付いてない説に1票。人間じゃないもんな。そうじゃなきゃ普通こんな格好させない。



 そこで、ガチャリとドアが開いた。噂のラムズ様だ。ラムズは俺がいることに首を傾げたあと、メアリの方を見た。


「鱗が見えるな。それにしてよかった」

「たしかにこれだと良く見えるわね」


 会話が違う! こいつらおかしい!

 ラムズはメアリの胸を凝視してるけど、たぶんあれは俺とは違う目だ。だってなんか目が温かいもん。俺みたいに色欲に塗れた目じゃないもん。

 このままじゃまずい。ラムズすら常識がおかしいらしい。なんとかしないと。常識人は俺だけだ。



 俺はラムズの腕を引っ張って、部屋の隅に連れて行く。


「ラムズ、メアリのあの格好はまずくないか?」


 小声でそう聞く。ラムズはかなり不機嫌そうだ。メアリの鱗が見れなくなったからかもしれない。


「何がだよ」

「だってあんなの……おかしいだろ。ちょっとエロすぎ、っていうか……。ラムズはなんとも思わないのか?」

「エロスギ? よく知らんが、別に何も思わねえよ」

「マジで?! かわいいとか、キスしたいとか、抱きしめたいとか!」

「鱗に触りたい」

「頭おかしいな」

「たしかにかわいいかもしれねえが──、ああ、そっか。人間はああいう格好が好きなのか」

「まぁ、そうだな」

「もしかして、俺間違えて頼んだのか?」


 ラムズは首を傾げて顔をしかめた。本気で悩んでいるみたいだ。


「どうかしたのか?」

「貴族が寝る時に着る服と言われて買ったんだが、もしかして夜伽よとぎのための服なのか?」

「それは……有り得る……」

「なるほどな。まあ結果的に鱗がよく見えるからこれでいっか」

「よくねえだろ! メアリが……ちょっとエロ過ぎ……」

「たしかに人間に見られるのはよくねえな。じゃあメアリの代わりに言ってやるよ。──邪魔だから早く出てけ?」


 ラムズがわらいながら冷たい目線で威圧してくる。怖い。ちびりそう。俺は一歩ずつ後ずさって、扉の方まで歩いた。

 

 けどもう1回だけ拝みたい……。ラムズだけ見られるとかズルすぎる──と思ってメアリの方に振り返ろうとしたら、ラムズが勢いよく扉を開き、俺の身体を押した。廊下に出される。

 バタンとドアが閉まる。


 クソー! ラムズ許さねえ!

 

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