閑話 メアリ照れさせ作戦 #R

[#Rレオン視点] IF/日常


 俺はこの船に乗って1週間、メアリのことを観察していた。けど、メアリは全然デレない。照れる素振りも見せてない。彼女がするのは仕事の話か、使族の話。つまんねえだろ!

 ‎女の子なんだからもうちょっと見た目に気を遣うとか(メアリは海賊らしくボロボロの格好、髪の毛も砂塗れ)、恋愛話に花を咲かせるとか(「好きな人なんていないわ」と一蹴された)あるだろ!


 ‎ということで、俺はエディと一緒に『メアリデレさせ作戦』を決行することになった。


「エディも可愛いって言ったことあるんだよな?」

「あるある。めっちゃあるよ。でもその度に腕を叩かれて終わるんだよ」

「それって照れて叩くとかじゃないの?」

「違う違う。『ふざけたこと言ってないで早く仕事しなさいよ』みたいな叩き」

「真面目だなー!」

「真面目ってことなのかな?」


 俺とエディはそんな話をしながらメアリを探した。甲板にはいないみたいだ。地下の船倉かな。

 ‎そう思ったら、ちょうどメアリがハッチから出てきた。埃を被ったせいか、いつもより顔が汚い。本当、ちょっとは気をつけろよな! 人魚の風上にも置けないぞ!



「メアリちゃん!」


 先にエディがメアリに話しかけた。メアリは振り返って顔を歪める。またサボってんの?、とでも言いたげな顔だ。

 ‎メアリの赤髪は煤で汚れてあちこち茶色くなってる。顔も汚い。せっかく可愛い顔なのに……勿体ねえ。


「メアリちゃん今日も可愛いね」


 直球だなオイ。エディはニコニコ笑いながらメアリにそう言った。でもメアリはさらに顔をしかめている。これじゃあダメじゃねえか! 


「何言ってるの?」

「メアリ、そんなにカッカすんなよ。女の子なのに台無しだぞ。髪の毛も汚れてるし」


 俺がメアリの髪の毛を触ろうとしたら、メアリはさっとそれを避けた。俺とエディは顔を見合わせる。目で会話する。きっとこんな感じだったはずだ。


俺:これ、照れてる?

エディ:そんな感じしたよね。触られるのに慣れてないのかな。もう一回やってみようよ。



 俺たち最低だな。

 ‎けど気になるからやるしかないよな。今度はエディが話しかける。


「メアリちゃん、この前の砲撃戦は波で戦ってくれてありがとう」

「え、いいのよ」


 そう言ってエディが手を伸ばして頭を撫でようとしたら、メアリはやっぱりぎょっとして後ずさった。これ照れてんのか? 分からん。


「うわっ」


 メアリが何も見ずに後ろに下がったから、ラムズとぶつかったみたいだ。ラムズが冷たい目線で俺たちを見ている。呆れ顔ってやつだ。


「お前ら何してんだ?」

「いや……ちょっとな」

「ちょっとね」


 ここでエディは俺の方を見た。例の『目で会話モード』だ。


エディ:レオン。この際船長にも協力してもらおうよ。

俺:ラムズに? 協力してくれんのか?

エディ:言う価値あるよ。してくれるって。


 俺たちは身振り手振りと目だけでここまでの会話をやってのけた。メアリに聞かれたら意味無いからな。‎メアリは不思議そうな顔をしてこっちを見ている。



 ‎俺たちのこの『目で会話モード』にラムズが参加できるはずはないから、俺とエディはラムズを引っ張って小声で話した。


「船長、『メアリ照れさせ作戦』協力してくれません?」

「はあ? なんだそれ」

「メアリって全然照れないだろ。だからなんか上手いこと言って照れてもらうんだ」

「それに何の意味がある?」


 俺とエディは顔を見合わせた。意味──なんてない。ないけど、男はやるべきなんだ。可愛い顔の女の子がずっとツンツンしてるなんて楽しくないじゃないか。

 ‎いや、メアリはツンツンはしてないんだけどな。どちらかというと、何に対してもズケズケ言ってくる。あと色恋沙汰に興味がないって感じだ。

 

「メアリちゃんが誰かを好きになったら面白いと思いません?」


 今のはエディだ。ラムズは不敵に笑った。どうやら面白いと思ったらしい。よし、こっちに引きずり込んだぜ。


「面白いな。じゃあやってみよう。何をすればいいんだ?」

「撫でてみてくださいよ。さっき避けられたんですよ」

「撫でる? 頭を?」

「うん。たぶんメアリは触られるのに慣れてないんだ」

「なるほどな。分かった。やってこよう」


 ラムズって意外とノリいいんだな。もっと冷たいと思ってたぜ。



 ラムズを先頭に、俺たちはメアリの方に戻った。3人でやって来たからか、メアリは訝しげに俺たちを見ている。

 ‎ラムズはメアリに話しかけた。


「メアリ」

「何?」

「頭撫でていいか?」

「ハッ?!」


「いやえっ?!」


 最後のは俺だ。普通聞くか?! 直接?! けどメアリは若干照れてるかも。エディも食い入るようにして見ている。


「撫でていいか?」

「ど、どういうこと……」

「そのまま」

「なんで撫でるのよ!」


 あ、照れてる。あれは絶対照れてる。

 ‎メアリは一歩ずつ後ろに下がっている。ラムズが首を傾げながら、きょとんとした顔でメアリに迫る。でもたぶんあの顔は作ってる。絶対わざとだ。


「じゃあこうしよう。俺のことを撫でていいから、メアリのことを撫でさせて」

「い、嫌よ!」

「分かった……」


 ラムズは声を落としてその場を立ち去ろうとする。でもメアリがラムズの袖を掴んだ。ラムズは俺たちに対して笑いかけた。したり顔だ。メアリはその顔は見えてない。

 ‎あの人黒いなー。エディも同じことを思ってそうだ。


 メアリが顔を俯かせながら呟いた。


「分かったわよ……。そんなに言うなら、いいけど……」

「そうか? メアリはいつも頑張ってるからな」


 ラムズは手を出してメアリの頭を撫でた。

 メアリが息を飲んで、くっと頭を下げた。なんていうか、犬みたいだ。いや猫? いやどちらかというと狐? なんかこう、されるがままになってるけど仕方なくそれを受け入れている小動物って感じ。耳まで真っ赤だ。

 ‎メアリは口を噤んで、目を伏せている。どんだけ恥ずかしがってんだあの子?! 


「ハア……尊い……」

「エディ?」

「だってあんなにツンツンしてたのに、今は黙って撫でられてるんだよ? 可愛すぎる」

「エディがやらなくてよかったのか?」

「まぁ俺がやりたかったけど、船長の方が一枚上手だったね」

「たしかに。今度は逆をやるのかな」


 ラムズがメアリの頭から手を離した。ラムズは笑ってない。無表情極めてる。あの人はあの人で、メアリの照れ顔を見て何か思わないのかよ。


「次はメアリがやれ」

「わたしはやらなくていいから……」


 ラムズが俺たちの方を向いた。俺たちは目線で「やらせろ」と伝える。ラムズは理解したらしい。ラムズは海賊帽を取った。銀の髪が風で揺れている。


「そういう条件だっただろ?」

「わ、分かったわよ……」


 メアリの身長は160くらいだ。ラムズは180くらい。だからメアリはつま先立ちでラムズの頭に触れた。めっちゃかわいい。むしろ触る方が照れるみたいだ。

 ‎つま先がピクピクしてる。ちょんっとラムズの頭を触ったあと、メアリはすぐに手を引いた。


「こ、これでいいでしょ!」

「どうも」


 ラムズはわらって返した。メアリは若干怒りながら照れるという新しいデレを俺たちに見せてくれた。というかこれがツンデレってやつなのか? 分からん。けどかわいい。


 ‎ラムズは俺たちの方にやってきた。


「あれでよかったのか?」

「良かっただろ! めっちゃ照れてたじゃん!」

「船長やるっすね!」


 エディの言葉に、ラムズが首をかしげる。


「照れると何がいいんだ?」

「照れるってことは、うーん。こっちに心を許してるって感じじゃないかな」

「そうなのか?」


 俺は頷く。


「たぶんな。つまり、ドキドキするってことだ」

「ドキドキ?」

「ドキドキが積み重なると、恋になる!」

「はあ、なるほどな」


 ラムズはこういうのにうといらしいな。エディはメアリの照れ顔がみれたからか、機嫌が良さそうだ。今度は逆をやってみたいな。ラムズが照れる方。

 ‎いや、ラムズは絶対照れないかな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る