宗教

▶ 宗教 ◀

【これまでのあらすじ】 (ラムズ視点)


 ハローハロー。俺の名前はラムズ・シャーク。まさかこれが初登場とは、俺も思わなかった。


 はてさて、俺に聞きたいことは山ほどあるだろうが、ここでは黙っておく。じゃあなんで今話してるかって? 俺は全てを知っているから。



 メアリを自分の船ガーネット号にのせたあと、俺は彼女を人間から守ることを誓った。なにせメアリの鱗はそこらの宝石、いやそれ以上に美しい。それを汚す者がいるなんて許せないんだ。


 そして守るだけじゃなく、俺はメアリが好きだと告白した。

 ‎本当にメアリが好きかどうか──それは貴方様の目でご判断を。どうせ好きだと言っても信じてくれないだろ?



 メアリのげた鱗を治すため、俺たちはフェアリーに会いに行かなければならない。陸路を通って、ロミュー、メアリ、俺、ヴァニラだけで旅をすることになった。

 ヴァニラは酒に溺れた阿呆あほ幼女。ロミューは髭面ひげづらのルテミス。メアリは呪いにかかった人魚だ。


 俺がルテミスを売ったという嘘を信じたジウたちは去り、転移者のレオンも怒り心頭。いったいどこをほっつき歩いてんだか。



 メアリは妖鬼オニのリューキから様々な使族しぞくの名前、その特徴を教えてもらったらしいが、俺に言わせればそんなもんどうだっていい。もちろん君らにとっても。

 ‎俺の言葉は信用ならない? ならけっこう。暗唱でもしてせいぜい頑張って覚えてくれ。他にもシーフやらシャドウキラー、光神カオス教なんて話もしたが、あのレオンですらもう忘れちまっただろう。


 黒須くろす熾衿しえりという新しい転移者が出てきたが、今のところ俺たちとは関わりそうにない。だからとりあえずこれも放っておく。


 エルフのノアはレオンのせいで消えた。だが、必要とあらばヴァニラが呼び出せる。中庸ちゅうよう云々ってのは、この世界に生きるレオンたちさえ覚えておきゃあいい。またドジを踏んだらかなわんからな。



 今回分かっててほしいのは、俺がメアリに告白したこと。

 レオンがこっぴどくロゼリィに振られたこと(おっと、これもどうでもよかったな)。

 ジウたちルテミスが、化系トランシィ殊人シューマジョーカー(*1)のルドのせいで俺の元を去ったこと(まあ俺は気にしちゃいない)。



 人魚は悲しみに同情してしまう使族だ。

 悲しみといえば、メアリは泣きながら俺に呪いの話をしてくれた。サフィアという男を殺せば、メアリは人魚に戻れる。サフィアは貴族かもしれないとのことで、俺も一緒に探すことにした。


 その次の日の朝方、俺はお気に入りのブラッディ・メアリーというカクテルを飲んだ。俺の嗜好しこう品は宝石、チェス、このブラッディ・メアリーだ。もちろん中でも断トツに好きな物は、もうお分かりだろう。

 ちなみに宝石の中で一番好きなのはサファイア。だが左目のサファイアに関してはノーコメント。


 ‎スワト会やアロスティア家について覚えておかなければいけないのはこの俺だけ。人間様のちっぽけな脳みそで抱えるには、優先度の低い話題だな。




 さあさあ、俺が何をしようとしているか、俺の使族がなんなのか、せいぜい頭をひねって考えてくれ。いや、考えなくてもいい。

 ‎何も知らない方が、案外ずっと面白かったりするんだぜ?


────────────────


*1(ジョーカーというのは、ルテミスなどと同様、同じ神力を持つ化系トランシィ殊人シューマごとの呼称だ。

 ジョーカーの依授いじゅ(≒授与)された神力は、黒い瞳と相手に嘘を信じ込ませる能力。


 殊人シューマは二種類に分かれる。

 化系トランシィに分類される場合、神に依授されたあとで見た目と性格が変わっているという条件が必要だ。逆に能系アビリィは見た目も性格も変わらない。能力を貰うだけだ。

 

 人間も魔物も人間以外の使族も、とにかく依授いじゅされれば全員神力持ちと呼ばれる。


 そのうち、

 依授された人間は殊人シューマ

 依授された魔物は獣人ジューマ

 という特別な名前がある。


 メアリも神力持ちだが、人間でも魔物でもないから特別な呼び名はない)

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