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それから数日、僕はラオスーのところやライブラリに通ったり、『アーム』の人たちの手伝いをして過ごした。
やがて、ヨミが東部地区に向かう日がやってきた。
ポートタウンの港で僕たちは別れを告げた。バーニィをはじめ、『アーム』の人たちが見送りに来ていた。
「じゃあ、元気でな。カカオ」
「ヨミも。無茶しないでよ」
「お前にいわれたくはない」
僕たちは笑い合った。ヨミはくるりと背中を向けると振り返ることなく船に乗り込んだ。
「すぐに戻ってくるから。心配しないで」
サキが僕のそばに立った。
「ヨミのこと、お願いします」
「ええ」
いきなりサキは僕の背中を思い切り叩いた。
「いつまでそんなしけた顔してるのよ。男でしょ、しゃきっとしなさい」
僕は背中をさすりながらいった。
「一度だけ、センターでヨミは僕をファーストネームで呼んでくれたんです。でも結局、それからは一度も呼んでくれなかった」
サキは溜息をつくと、僕の肩に手を置いてささやいた。
「ひとつ、君にいいことを教えてあげる。ヨミの一族が他人をファーストネームで呼ぶということは、その人を生涯の伴侶として認めた、ということなの」
え、と僕が顔を上げると、サキは「じゃあね」といって軽く手を振ると、船のタラップを上り始めた。
去っていく船を見送って、みんながいなくなったあとも、僕とバーニィは桟橋に立って海を見ていた。
「バーニィ、これから僕たちはどうすればいいんだろう」
「さあな。そいつは今からゆっくりと考えるさ」
「ほんとうにこれでよかったのかな」
「それは誰にも分からん。もし、俺がどうしていいか分からなくなってしまったら、次はお前が考えろ」
そういって、バーニィは片頬を歪めて笑った。
僕にはまったく自信がなかった。でも、一歩を踏み出さなければ何も変わらない。ヨミならそういうだろう。
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